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サマリー: 今週はISMサービス業景況感や失業保険申請件数など米経済指標の公表が控えています。これらを受けて、6月会合でFRB当局者の見解がどの程度分かれるかが注目されますが、市場は今のところ利上げ停止を織り込んでいます。一方、ドイツの経済指標が期待外れとなれば欧州のリセッション懸念は一段と高まるものとみられ、ユーロ安が進行する可能性があります。また今週は中国も貿易収支やインフレ、新規融資など多くの経済指標を公表する予定ですが、5月の財新サービス購買担当者景気指数(PMI)が予想以上に好調となったこともあり、中国経済に対するセンチメントは底入れした可能性もあります。豪州とカナダの中央銀行は今週の会合で利上げ停止に踏み切る可能性もありますが、タカ派的姿勢を維持する余地も残されています。個別企業の動向に関しては、AIブームが広がる中でフランスの半導体企業やMRヘッドセットを発売するAppleの動向が注目されます。
先週金曜に発表された米5月非農業部門雇用者数は、引き続き労働市場のタイト化を示す一方で失業率は上昇に転じるという、市場にとってゴルディロックス(適温)な内容となりました。これは、FRBが6月の利上げを一旦見送り、景気動向をさらに見極める可能性を示唆するものですが、物価上昇圧力が依然として強いことから市場は7月利上げの可能性も依然織り込んでいます。こうしたシナリオの蓋然性は、今週月曜(5日)のISMサービス業景況感や木曜(8日)の新規失業保険申請件数によって再び試されることになります。ブルームバーグのコンセンサス予想では、5月調査分のISM非製造業景況指数は前回の51.9から52.4に上昇する見通しです。支払い価格指数は4月に59.6と高水準に達し、FRBの利上げ継続を示唆したこともあり、重要なデータとなります。失業保険申請件数は25万件を下回って推移する可能性が高いと予想されますが、先行き不透明感が高まる中で人員削減を発表する企業も増えており、申請件数は今後増加に転じる見通しとなっています。
最近の経済指標では、世界的な需要の減少が産業経済の下押し圧力となり、ドイツ経済が今年第1四半期に景気後退に陥ったことが明らかになりました。ドイツは月曜に4月貿易収支、火曜に4月製造業受注、水曜に鉱工業生産の発表を控えており、今後1週間は同国のの経済指標が重要な焦点となります。ドイツの3月製造業受注は前月比10%を上回る減少と大きく落ち込んだほか、鉱工業生産も前月比3.4%減となりました。また、ドイツの自動車メーカーが公表した景気先行指標は4月に下押し圧力が一段と高まった可能性を示唆しており、第2四半期の経済成長にも一段の下振れリスクが生じています。なお、ドイツの第1四半期GDP成長率が期待外れだったことから、木曜公表予定のユーロのGDP成長率の確定値も下方修正される可能性があります。昨年第4四半期のGDPが前期比-0.1%となった後、第1四半期のGDPがマイナス成長となれば、ユーロ圏もテクニカルリセッションに突入することになります。ユーロ圏の景気後退リスクが高まった場合、今週はEUR/USDとEUR/GBPのいずれも下押し圧力に晒される可能性があります。
ブルームバーグの調査に参加したエコノミストの予想によると、中国の5月消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%(4月:同0.1%)と、緩やかに上昇する見通しです。この伸びは、昨年の水準が低かったことによる反動に加えて、食品価格の上昇が需要鈍化に伴うエネルギー価格およびその他の項目(食品を除く)の下落によって相殺されたことによるものとみられます。一方、5月生産者物価指数(PPI)のコンセンサス予想は商品価格の下落によるデフレ加速を織り込むなど、よりネガティブな見通しを示しています。エコノミスト予想では、5月のPPIは4月の前年同期比-3.6%から同-4.2%に下落する見通しです。
ブルームバーグの最新の調査によると、エコノミスト予想では5月の人民元建ての新規融資は季節的な要因から4月の7,190億元を大きく上回り、1兆6,880億元と大幅に増加する見通しです。ただし、前年同期の1兆8,900億元にはとどかず、減少に転じている点には注意が必要です。さらに、今回の調査では、5月の総融資額が季節的な要因から拡大し、4月の1兆2,170億元から1兆7,570億元に達するとの見通しが示されました。しかしながら、この予想は2022年5月に記録した2兆8,420億元を大幅に下回っています。中国の総融資の伸びが鈍化している主な要因として、社債の発行が低調であることがあげられます。
ブルームバーグのコンセンサス予想によると、中国の5月輸出(米ドルベース)の伸びは前年同期比-2%と、4月の同8.5%増から大きく減少する見通しです。また、エコノミスト予想中央値(米ドルベース)によると、輸入も前年同月比-8%と、4月の同-7.9%から減少幅は若干拡大するとの見通しとなっています。
火曜(6日)は日本の4月実質賃金が公表されますが、春闘で合意された賃上げによって加速する公算が大きいと考えられます。名目賃金の上昇率は3月改定値の前年同期比1.3%から1.8%に、実質賃金は3月の同-2.3%から-2%となる見通しです。賃金上昇率は2%のインフレ期待を下回っており、今後持続的な物価上昇を維持するには十分ではないため、賃金上昇率は5月にさらに上昇すると予想されますが、それでも日銀の政策修正に対する期待を駆り立てほど加速する可能性は低いとみられます。日本円は当面にわたって米国債の利回りと、景気減速懸念の高まりを巡るセンチメントに左右されることになりそうです。
オーストラリア準備銀行(RBA)は今週火曜日に困難な会合に臨みます。RBAは先月、インフレ率が軟化しているにもかかわらずサプライズで利上げを再開し、その決定によって市場を大きく混乱させました。また今月に入ってインフレ率が再び上昇し、再び物価上昇圧力の高まりが確認されています。豪州の4月消費者物価指数(CPI)は前年同期比6.8%と前回の6.3%から加速し、予想の6.4%を上回りました。しかし、四半期のCPIは月次のCPIよりも重要との見方もあり、7月末に公表される次の四半期データが待たれます。このため、RBAが政策金利を再び据え置く余地もありますが、今後数ヶ月の間に追加利上げに踏み切る選択肢も依然残されています。また、RBAにとってのもう一つの選択肢は、利上げ幅を縮小し、月次のインフレ指標に対応することです。例えば、オフィシャル・キャッシュレート(OCR)を現行の3.85%から4%に引き上げることも選択肢となるでしょう。
水曜に政策金利の発表を控えたカナダ銀行もRBAと似た状況に直面しています。利上げは予想されていないものの、予想を上回るGDPとCPI、そして住宅市場の底堅さを踏まえると25bpsの利上げに動く可能性があり、市場が織り込む7月利上げ確率は90%に達しています。タカ派的なコメントによってその確率がさらに高まる可能性もあり、その場合、原油価格の高騰に下支えされたカナダドルは一段の上昇に向かうものと予想されます。
AI業界を席巻する巨大テック企業に注目が集まる中、その水面下に隠れた仏中堅半導体メーカーSoitecが今週、決算を発表します。同社はフランスに本社を置く半導体企業で、時価総額は46億ユーロ、過年度の売上高は前年同期比48%増の8億6300万ユーロに上ります。同社は2,000人の従業員を擁し、そのうち20%が研究開発部門に配属されています。Soitecは、半導体製造に使用されるウエハーの高精度な積層を可能にする基板製造技術で特許を取得しています。
アナリスト予想によると2026年3月期の売上高は19億ユーロ、EBITDAは営業利益率の拡大を支えに現在の2億7600万ユーロから7億3100万ユーロに増加する見通しであり、同社に対して極めてポジティブな見方を示しています。なお、目標株価は現在の130ユーロに対して189ユーロ(45%の上昇余地)に設定されていますが、Soitecの株価は年初から15%下落しており、米国の半導体企業とは全く異なるトレンドを示しています。
当社グループの株式戦略責任者であるピーター・ガンリューはSoitecは高い成長可能性を秘めており、水曜に公表される同社の決算やこれまでの実績は市場の注目に値すると述べています。
Appleは本日から(6月5―9日)Worldwide Developers Conferenceを開催します。アナリストは、AppleがMRヘッドセットやMacBook AirおよびMac Studioワークステーションのアップデートを発表する見通しであるとしています。
7日(水):Campbell Soup, Brown-Forman, Smartsheet, GameStop, Voestalpine, Inditex, LXI REIT, Soitec
今週:中国総融資・5月人民元建て新規銀行融資、M2(5月)