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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻を受けて、米規制当局は連鎖破綻を回避すべく流動性供給措置や新たな融資制度の設定を発表しました。市場ではFRBが3月の利上げを見送るとの予想が高まっていますが、金融システミックリスクの抑制に動く規制当局の対応は、FRBがインフレ対策で引き続き難しい舵取りを迫られていることを示唆しています。また、利上げ停止などの流動性供給措置は、一段のインフレ高進を招くリスクを孕んでおり、投資家は米国のテクノロジー産業のイノベーションに与える長期的なインパクトを引き続き注視する必要があります。
米シリコンバレー銀行(SVB)破綻の波及リスクの高まりを受けて、米規制当局は連鎖破綻や金融セクター全体への影響を防ぐための措置を打ち出しました。FRBは新たな流動性供給措置に加えて、SVBとシグニチャー銀行のすべての預金の全額保証を発表し、金融システム全体への影響を食い止める構えです。
バイデン米大統領は13日、SVBについて演説を行い、米議会に対し状況報告を行いました。今後の焦点は、引き続きインフレ抑制への取り組みを進めるむ中で、FRBが銀行セクターのストレス軽減に向けて新たな監督・規制強化に乗り出すかどうかです。
FRBは金融リスクに対して強力な措置を打ち出しましたが、これは、引き続きインフレ抑制に向けた金融引締めを継続する余地が残されていることを意味しています。また、金融リスクを緩和するための流動性供給は、更なるインフレ高進を招く恐れがあります。加えて、緊急融資プログラムによって銀行は資金の引き出しが必要となった場合にも融資の担保価値が額面で評価されるため、FRBは満期保有目的の債券価値を毀損することなく金融引締めを継続できることを指摘する向きもあるかもしれません。この結果、FRBは「より高く、より長い」利上げを実現できることになります。では、もしSVB破綻を巡る波及リスクが後退した場合、14日公表の米CPIで再びインフレが予想以上に加速していることが確認されれば、市場は利上げペースの加速を再び織り込むようになるのでしょうか?
SVB危機は流動性が悪化する中でスタートアップ企業の預金の引き出しが急増したことが発端となり、米国のハイテクセクターが直面する課題を浮き彫りにしました。FRBは金融安定化に向けて機動的に対応しているものの、SVB破綻の影響はハイテクセクターを中心に米国のスタートアップ全体に波及しており、長期的にはテック企業の生産性にネガティブな影響を及ぼす可能性が懸念されます。また、金利が高止まりする中でベンチャーキャピタルからの資金調達コストは引き続き上昇しており、ハイテクセクターのイノベーションを阻むリスクが生じています。
米株価指数先物市場やアジアの株式市場では、米金融当局の融資プログラムの報道が好感されて買いが先行しましたが、FRBの利上げペース減速の見通しが広がる中で米国債の利回りの低下とドル安進行は一段と加速しました。先週の急落からの反動もあり、リスク選好の流れは米国の立会時間に引き継がれる可能性もあります。
ただし、FRBが来週の会合で0.25%の利上げに踏み切ったとしても、市場がFRBは利上げを加速せず、長期にわたり高水準にとどめると考え続ける限り、先行き不透明感の高まりが払拭されることはないでしょう。FRBがこうした市場の懸念にどのように対処するかが、今後の重要なポイントとなります。