Equities

売り(ショート)ポジションをとるー下落市場の乗り切り方

ピーター・シクス

(Saxo Group)

サマリー:  ほとんどの投資家は、価値が上がることを期待して株式を購入する、シンプルな「バイ・アンド・ホールド戦略」をとっています。株式市場の長期チャートを見ればこれは正しい戦略です。結局、長期的には株式市場は上昇します。金融用語ではこの投資戦略を、ロング(買い)ポジションをとると言います。これとは逆に、ショート(売り)ポジションをとることもできます。


 

ショート(売り)ポジションをとるとは?

簡単に言うと、ショート(売り)ポジションをとるとは、次のようなものです。自分が保有していない金融資産を売り、後で安く買い戻すことを期待することです。これが成功すれば、利益を得ることができます。

この概念は理解するのが難しいかもしれません。保有していないものをどうやって売るのでしょう?日常生活では、空売りをする例はあまりありません。しかし株式市場では、価格の下落から利益を得るための方法として用いられます。

どのようにして「市場を空売り」するのですか?

ショート(売り)ポジションをとるのは複雑な金融手法であり、自分が何をしようとしているのかを理解しておく必要があります。しかし、時が経つにつれて、ショート(売り)ポジションはますます一般的になり、より簡単にできるようになりました。ショート(売り)ポジションは、デリバティブを使うことで最も簡単に構築することができます。これは、原資産から派生した商品で、原資産の値動きによってデリバティブの価格が決まります。市場に対してショート(売り)ポジションをとるために利用できる商品には、先物、インバース型ETF、CFD、オプションがあります。これらの商品が利用できるかどうかは地域によって異なる場合があります。

デリバティブは複雑な商品であり、投資経験の豊富な方にのみ適した商品であることにご留意ください。投資にあたっては、その仕組みやリスクについて十分にご理解いただく必要があります。

1. 先物を使ったショート(売り)

前述の通り、ショート(売り)にはいくつかの方法があります。よく使われるのは、S&P500のような重要な指数の先物を使ってショート(売り)ポジションを構築する方法です。先物とは、将来の満期日に起こりうる受け渡し(または決済)の価格について合意する契約です。先物を買うことによってロング(買い)ポジションを構築する一方、先物を売ることによってショート(売り)ポジションを構築します。先物は日単位で取引でき、満期までポートフォリオ上に保有し続ける必要はありません。

例として、S&P 500ミニ先物を見てみましょう。この先物の取引単位は指数自体の50倍となっています。S&P500の標準的な先物契約の取引単位は指数の250倍であるため、ミニ先物と呼ばれています。

この指数が4,100前後で取引されており、あなたはおよそ3,800まで下落すると考えているとします。その見方から利益を得るために、S&P500ミニ先物を5枚、4,100で売ります。あなたの見方が正しく、市場での価格が3,800となった場合、あなたはこの指数で300を獲得したことになります。ドル換算で利益を得たことになります。それはいくらでしょうか?利益は、300 X 50 (取引単位) X 5 (契約枚数) = $75,000です。一方、このポジションを取ることによって、あなたは50 X 4,100 X 5 = $1,025,000 のショート(売り)エクスポージャーを構築することになります。つまり、市場が1%上昇するごとに、$10,250の損失が発生することになるのです!

エクスポージャーの計算には、取引単位と現在の指数のレベルを掛け合わせれば、先物取引のエクスポージャーを知ることができます。

また、ショート(売り)ポジションをとると、証拠金(担保の一種)が発生するので注意が必要です。これは、先物を売る(または買う)場合、最初に金銭の授受が発生しないからです。契約があるだけで、金銭的な決済は将来に行われることになります。つまり、取引の前提条件として、取引口座に、対象銘柄を売る(契約を結ぶ)ことができる十分な資金が必要なのです。

2. インバース型ETF

市場に対してショート(売り)ポジションをとるもう一つの方法は、インバース型ETFを利用することです。通常のETFは原資産(ほとんどの場合、指数)に連動します。原資産が上昇すればETFも上昇し、その逆も起こります。インバース型ETFは、その逆の動きをします。ETFは、日々、原資産である指数と反対の方向に動きます。つまり、原指標が下落すれば、インバース型ETFは値上がりします(逆も同様です)。これは、市場を空売りする方法でもあります。インバースETFを買えば、市場に対してショート(売り)ポジションをとることになります。

これと密接に関係しているのが、レバレッジド・インバースETFです。インバースETFにレバレッジが加わっているため、原指標の変化率にレバレッジ係数が掛けられることになります。通常、そのレバレッジ係数は、原指数の日々の変化率の2倍から3倍です。

3. プット・オプションの購入

市場に対するショート(売り)ポジションを持つ3つ目の方法は、オプションを利用することです。プット・オプションの買い手は、原資産を所定の期間(満期まで)、所定の価格(権利行使価格)で売却する権利を有します。プット・オプションの購入は、既存のロング(買い)ポジションに対する保険とみなすことができます。

しかし、投資家が原資産を保有していない場合、ロング・プットは、市場が下落すると価格が上昇するため、市場に対するショート(売り)ポジションを持つ方法とみなすことができます。

個別銘柄だけでなく、ほとんどの指数で、利用できるプット・オプションがあります。これにより、投資家は、プット・オプションに対して支払うプレミアムが最大損失となるようなショート(売り)ポジションを構築することができます。

例を見てみましょう。S&P500が4,100で取引されており、約3か月先の4,000米ドルのプットオプションが約131ドルで取引されているとします。 このオプションの取引単位は100なので、初期投資額は13,100ドルとなります。そして、その月にS&P500指数が3,800まで下落したとすると、そのプットの価値は200ドル(行使価格4,000からその時の実際の指数の水準、つまり3,800を引いたもの)となります。つまり、実際の価格が3,800であるのに対して、4,000で売る権利があるのです。これは、その権利が価値を少なくとも200だということです。これに取引単位100を掛けると、プットオプション1枚あたりの価値は2万ドルとなります。

要約

あなたが長期的なバイ・アンド・ホールド投資家であれば、空売りはおそらく投資戦略の一部ではないでしょう。チャンスがあることは知っていても、その知識を実践することはないのです。しかし、よりアクティブなトレーダーであれば話は別です。ショート(売り)ポジションを持つことで、あなたの戦略に付加価値を与えることができます。ショート(売り)ポジションにより、下落相場でも利益を得ることができるのです。しかし、特にレバレッジの効いた商品では、ショート(売り)ポジションに伴うリスクに注意してください。万が一、相場が上昇した場合(そして損をした場合)には、厳格なリスク管理方針を維持することが重要です。

要するに、ショート(売り)ポジションを持つということは、「予想される株式市場の動き」に対応するための追加的な手段なのです。そして、アクティブなトレーダーにとっては、その動きが上か下かは問題ではありません。特に、脆弱で不確実な市場環境では、検討する手段のひとつとなります。

投資にはリスクが伴います。投資金額が目減りする可能性もあります。 

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。