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シニア債券ストラテジスト
サマリー: 米長期国債の利回りは重要な節目となる抵抗線を上抜けしましたが、米製薬大手Pfizer-Seagenによる米抗がん剤メーカーSeagenの買収に伴う大型起債は、こうした急速な利回りの上昇を促した可能性があります。米30年国債の利回りは足元4%に向けて上昇しており、過去数か月間に形成されてきたシンメトリカル・トライアングル型のパターンを抜けて上昇トレンドに乗っています。本日は米20年物国債の入札、明日(18日)は新規失業保険申請件数とフィラデルフィア地区連銀製造業業況指数の公表が控えており、これらの内容次第では、米長期国債の利回りが一段の上昇に向かう可能性があります。しかしながら、米経済が減速するにつれて足元の利回り上昇の流れはいずれ反転するものと予想され、長期的にはアップサイドの余地は限定的であると考えられます。
米2年、5年、10年国債の利回りはいずれもレンジ相場が続いていますが、米30年国債の利回りは足元で抵抗線となる4%に向けて上昇しており、過去数か月間に形成されたシンメトリカル・トライングル型のパターンを抜けて上昇トレンドに乗っています。目先で今年3月に付けた4.025%のピークを上回れば、その後は昨年10月に付けた4.40%付近まで切り上がる可能性があります。一方、当グループのテクニカルアナリストであるKim Cramer Larssonが指摘している通り、米30年国債の利回りが3.67%を下回った場合、こうした強気シナリオは覆され、上昇トレンドは反転するものと予想されます。
米長期国債利回りの上昇が、PfizerによるSeagen買収の観測が広がった月曜に始まったことは、注目すべき点でしょう。Pfizerは、買収資金を調達するために米国の社債市場で過去4番目の規模となる総額310憶ドルの社債を発行しました。同社の起債は投資家にとって、ディフェンシブ銘柄であり、A1/A+の信用格付けを持つ優良企業が米長期国債に代わる選択肢を提供したことを意味します。これは、特に景気後退懸念が高まる中で利回りが縮小しているイールドカーブの長期ゾーンに当てはまることです。今回Pfizerが起債する社債のうち40年のトランシェは投資家の旺盛な需要を獲得し、発行スプレッドはIPTの米国債+180bpsからタイト化して+160bpsでプライシングされ、特に注目を集めました。多くの投資家が米長期国債のポジションを売却し、代わりにPfizerの社債を選択したとみられます。
Kimが指摘しているように、米30年国債利回りは足元で4%に向けて上昇しています。また、米30年国債は投資家の需要が最も集まりにくい年限であることもあり、本日の米20年物国債の入札の結果次第では、4%近辺まで一段と切り上がる可能性があります。さらに、明日に公表を控えた新規失業保険申請件数とフィラデルフィア地区連銀製造業業況指数の動向も米長期国債の利回りに影響を及ぼすかもしれません。
しかしそれでもなお、米長期国債の利回りは経済が減速するにつれて消費者心理が悪化し、また、信用収縮がリセッションをもたらす可能性が高まる中、いずれ反転に向かう公算が大きいとみられるため、アップサイドは限定的であると考えます。