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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー:
今回の記事では、米国CFTCとICE Exchange Europeによる最新の建玉明細(COT)報告(3月15日までの1週間が対象)の中から、コモディティ市場、外為市場、金融先物市場でヘッジファンドが実行した先物のポジションと変化に注目します。この1週間は、ウクライナからの悪材料が相次ぐ中にもかかわらず、リスク選好がやや回復しました。米国債利回りがFOMC会合を前に急上昇した一方、コモディティでは、大半のセクターが売られ、Bloomberg Spot Indexは前週からの11%の上昇分がほぼ解消しました。
本サマリーでは、3月15日火曜日までにヘッジファンドが実行したコモディティ、為替、金融商品の先物のポジションと変化について取り上げます。この1週間はリスク選好がやや回復しました。ウクライナからの悪材料が相次ぐ中でも、株式市場は上昇しました。また、間近に迫りながらも長らく待たれていた米国の利上げが織り込まれるのに伴い、米国債は急反転して10年物国債利回りは30ベーシスポイント上昇しました。コモディティでは、ほとんどのセクターが売られ、Bloomberg Spot Indexは前週からの11%の上昇分の大半が解消しました。
コモディティ
Bloomberg Commodity Spot Indexは8.3%急落し、ロシアによる侵攻後の1週間に見られた上昇分の大部分が解消しました。原油、パラジウム、小麦などのロシア主体のコモディティが、下落率では最も大幅な下げとなりました。24種の主要コモディティ先物でマネージドマネー口座が保有するネットロングの総額は、5%減少して206万ロットと8週間ぶりの低水準になりました。最も大幅に減少したのは、原油、天然ガス、金、銀、銅、コーヒーのポジションでした。
2021年中は、BCOM Spot Indexの30日間のボラティリティは9%~19.5%の範囲内で推移していましたが、2月24日の開戦以降、このボラティリティはさらに上昇し、3月14日からの週には31%に達しました。このため、一定水準のボラティリティを目標とする多くのヘッジファンドは、エクスポージャーを縮小することを余儀なくされました。この急上昇を主導したのは、エネルギー、工業用金属、穀物の急騰であり、いずれもボラティリティが2倍以上になりました。ボラティリティが安定しているならば、トレンドやモメンタムに追随するヘッジファンドは通常は、上昇局面で買い、下落局面で売ります。ポジションが開戦前の水準まで縮小されてきた現在の動きの一因は、前述したボラティリティの急上昇です。
エネルギー
原油価格はさらに1週間、極度のボラティリティが続きましたが、今回は下落方向に22%変動しました。それに伴い、WTI原油とブレント原油のネットロングは合わせて2万3,000ロット減と再び週間で減少し、41万1,000ロットと4ヶ月ぶりの低水準になりました。これは、12月初旬に新型コロナの変異種「オミクロン」に反応して原油価格が一時1バレル70ドルを下回った時の40万ロットをわずかに上回る水準です。世界的なベンチマークであるブレント原油は、ネットロングが15万3,000ロットと16ヶ月ぶりの低水準となりました。
上記のようにボラティリティが急上昇し、トレーダーが先物建玉に対する追い証の増加に直面している時、最初にとるべき対応は、全体的なポジションを縮小することです。このような動きは現在、5種の石油・燃料先物で特に顕著であり、建玉残高は3月12日の710万ロットから現在は7年ぶりの低水準となる470万ロットに減少しています。
21日午前のマーケット・コメント:原油(OILUKMAY 22&OILUSAPR 22)は、ウクライナでの戦争により世界的に供給が非常に逼迫していることから、アジアで1週間ぶりの高値に上昇しました。トレーダーは、主に自主制裁により、ロシア産の原油を避けており、ロシア産の原油は現在、ブレント原油を30ドル近く下回る水準となっています。安価なカーゴを確保しようと、限られた買い手が順番を待っている状況です。さらに、週末に反政府のフーシ派がサウジアラビア各地を攻撃したことを受けて中東の緊張も高まりました。石油市場では、供給が逼迫する中で、主にディーゼル油やガソリンのコスト増や、中国での新型コロナ関連の一時的なロックダウンの影響により、需要破壊の兆候が現れるのではないかと期待されます。
金属
金価格は最近、2020年の記録的な高値を目指して急上昇したものの、その後、突然はね返され、5.5%の調整となりました。それとともに、ネットロングは、比較的小幅な16%減となり、14万7,500ロットになりました。これは週次で、6週間ぶりの減少でした。小幅というのは、金価格が侵攻後の上昇分をほぼ全て戻したという点を踏まえてです。この減少の大半は、ロングの売却と、非常に少ない新規のショートによるものだったことから、レバレッジドトレーダーが強気のポジションを縮小することを余儀なくされたことが、変動の主因であったことが浮き彫りになっています。その他の大きな変化として、プラチナのロングが41%減少したほか、銅のロングが31%減少して2万9,000ロットになり、昨年中にレバレッジドファンドが保有していた平均ポジションサイズをわずかに下回りました。
21日午前のマーケット・コメント:投資家がロシア・ウクライナ戦争のインフレへの影響と、米国の金融引き締め政策の影響を天秤にかける中で、金(XAUUSD)と銀(XAGUSD)は堅調に推移しています。ここ数週間に金先物を大量に積み増していたレバレッジドファンドによるロングの売却は一巡した可能性がある一方、長期目的の投資家は開戦以来、継続的に金ETFを買っています。この間に、総保有量は134トン増加し、3,246トンと1年ぶりの高水準となりましたが、増加分の半分以上が最近の175ドルの調整局面で生じたものです。金は、インフレ率の上昇と中央銀行の政策の失敗に対するヘッジとして買われました。経済成長率の鈍化により、FOMCは予定している利上げ回数を実行することができずに、再び景気刺激策に戻ることを余儀なくされる可能性があるということです。金価格は1オンス1,890ドルの水準が主要な支持線となっています。新たな上昇余地を示すには1,957ドルを突破することが必要になります。
農産物
コーヒーのロングの売却が加速し、4週連続となりました。ネットロングは26%減の2万9,000ロットと8ヶ月ぶりの低水準に減少しました。砂糖では、ポジションが前週に7万9,500ロット増と急増した後、4,800ロット減と小幅に減少しました。穀物は唯一、買い越しとなったセクターであり、4週間にわたり買いが続いた結果、ここで追跡している6種の先物のロングの合計は80万3,000ロットと10年ぶりの高水準に達しました。ポジションの大半は大豆製品(36万3,000ロット)とトウモロコシ(37万3,000ロット)です。小麦は最近、記録的な高値に急騰したことから、カンザスとシカゴの小麦先物市場で集まったポジションは6万7,000ロットだけでした。
外国為替
市場の混乱が続き、米国FRBの利上げが間近に迫っているとの見方から、1月上旬以降初めて、強気のドル買いが増加しました。IMM通貨先物10種に対するドルのロングとドルインデックスの合計は53%増の107億ドルに急増しました。
個別では、大きな変化がいくつかありますが、最も大幅な変化は、ユーロのロングが68%減少してわずか1万8,800ロットになったことです。1週間で4万ロット減少したのは、2018年6月以来最も大幅な売り越しでした。また、投機筋は日本円(6,500ロット)と英ポンド(1万6,500ロット)を売りました。さらにメキシコ・ペソを63,600ロット売り、1週間の減少幅が過去2年間で最も大幅となり、売り越しに転じました。このような変化に対抗する動きとして、加ドル(1万ロット)および南半球通貨のニュージーランド・ドル(1万6,000ロット)と豪ドルが買われました。豪ドルでは、7年間で最も大幅な3万3,300ロットの買いがあり、ネットショートが43%減少して4万4,900ロットになりました。
建玉明細(COT)報告は、米国のCommodity Futures Trading Commission(CFTC)により発行され、ブレント原油・軽油についてはICE Exchange Europeにより発行されます。この報告書は、毎週金曜日の米国取引時間終了後に、その前の火曜日までの1週間のデータとともに公表されます。先物市場の建玉残高の内訳が、資産クラスに応じた様々なユーザーグループごとに示されます。
コモディティ:生産者/マーチャント/加工者/利用者、スワップディーラー、マネージドマネー、その他
金融商品:ディーラー/仲介業者、資産運用会社/機関投資家、レバレッジドファンド、その他
外国為替:商業目的、非商業目的(投機筋)の大まかな内訳
我々が太字で示されたグループの動きを主に重視する理由は、以下の通りです。
・タイトストップが設定されている可能性が高く、ヘッジの対象となっている原資産のエクスポージャーがない。
・このため、ファンダメンタルズやテクニカルな価格動向の変化に最も反応しやすい。
・主要なトレンドに関する見解を得られるほか、反転のタイミングを読み解くのにも役立つ。