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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 金は、ここ最近のドル高と長期金利の上昇を受けて過度に調整されていることもあり引き続きディフェンシブな投資機会を提供しています。足元で再加速の兆しも見受けられるとはいえ、インフレ率を含め強い経済指標が続く中、FRBはタカ派姿勢を堅持せざるを得ない状況に置かれています。こうした中で、今後米ドルが一段の上昇に向かえば、金は次の下値支持線となる$1,788付近まで下落する展開も視野に入ってきました。再びポジティブなセンチメントを取り戻すには、少なくとも終値ベースで足元$1,883の21日移動平均線を上回る必要があります。
Today's Saxo Market Call podcast
Today's Market Quick Take from the Saxo Strategy Team
金は昨年11月初旬から340ドル上昇した後に足元で125ドル程度調整されており、引き続きディフェンシブな投資機会を提供しています。$1,950を下抜けした後の一段の調整は、一連の経済指標が予想を上振れる中でFRBの「インフレを長期的な物価目標とする2%に戻す」という難しい課題が浮き彫りとなったことをきっかけとするものでした。過去数か月間に及ぶドル安進行は、米長期金利の上昇に伴う新たなドル買いへとシフトしており、米ドルの関係が逆相関にある金価格への下押し圧力が強まっています。
米CPIやPPIの堅調さを鑑みてFRBのクリーブランド地区連銀のメスター総裁とセントルイス地区連銀のブラード総裁(いずれも投票権なし)が0.5%ポイントの利上げを支持したことを受けて、先週金曜日に地金が$1,819を付け直近安値を更新するなど、金相場の低迷が続いています。こうした中で、FF金利先物市場が織り込むターミナルレートは切り上がっており、FRBが最終的に利下げに転じる時期も後ろ倒しされています。今後も長期的なインフレ率の動向は、金をはじめとする金融市場およびFRBが長期的な物価目標を達成できるか否かを左右する重要なポイントとなるでしょう。景気減速の見通しが強まれば、目先で物価上昇圧力が緩和される可能性もありますが、足元の世界経済の動向を踏まえると中長期的なインフレ見通しは依然厳しい状況にあります。
以前にもお伝えした通り、2023年は景気後退懸念や株式市場のバリュエーション調整リスクが下支えとなる中、各国中銀の金融政策のピークに伴うドル安進行や公的機関の旺盛な買い需要も期待できるなど、貴金属市場にとって有利な相場展開が期待できます。また、中期的な見通しとして、期待インフレ率が2.5%を下回るとの予想に変わりはありません。ただ当グループの予想である4%程度に照らすと、これはやや楽観的な見通しであると考えます。しかし、賃金上昇圧力や中国経済回復に伴う資源価格の高騰の影響が顕在化するまでは、インフレは向こう数か月間にわたって一旦、鈍化基調に転じるものと予想します。
資金フローの動向については、ETF経由の需要が回復する兆しはまだ見られず、保有残高は合計で9,400万オンスと約2年ぶりの低水準を付け、前述の320ドルの上昇局面でも低迷し続けました。一方、11月初旬以来ヘッジファンドからの安定的な買いが入っており、この期間に買いポジションは390万オンスの売り越しから930オンスの買い越しに転じ、9ヶ月ぶりの高水準に達しました。