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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 米上院で債務上限法案がようやく可決され、市場のセンチメントが総じて回復する中、為替市場では4週間ぶりにドル安の流れが強まっています。波乱含みの展開となった5月を終えて、コモディティ市場には再び底堅さが垣間見られます。ブルームバーグ商品トータルリターン指数は5月に5.6%の下落に見舞われた後、ほぼ横這いで今週(5月29日週)の取引を終えました。貴金属や工業用金属の上昇が、主に天然ガスの下げ(-9%程度)が重しとなったエネルギーの下落によって相殺されました。
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コモディティ市場は景気後退懸念の高まりやドル高、米国の債務上限問題の行き詰まり、目先の米金融政策の不透明感、中国経済鈍化の兆しを背景に工業用金属やエネルギーを中心に軒並み下落し波乱含みの展開となった5月を終えて、月初は底堅いスタートを切りました。
また、月末に米上院で債務上限法案がようやく可決され、市場のセンチメントが総じて回復する中、為替市場では4週間ぶりにドル安の流れが強まっています。米議会の法案可決によって、債務上限問題は少なくとも2025年1月まで先送りされることになります。しかし法案に盛り込まれた新たな歳出削減策によって向こう1年間の米GDP成長率が0.2%低下するとの予想も示されており、FRBが一段の利上げに急ぐリスクは後退する可能性があります。
ブルームバーグ商品トータルリターン指数は5月に5.6%の下落に見舞われた後、ほぼ横這いで今週の取引を終えました。貴金属や工業用金属の上昇が、主に天然ガスの下げ(-9%程度)が重しとなったエネルギーの下落によって相殺されました。一方、ドル安がセンチメントを下支えする中、金や銅は下値支持線から軒並み反転したことから、金属セクターは反発しました。
銅は、中国の経済指標が引き続き鈍化傾向にあるにもかかわらず、週初に買われた後、政府が新たな不動産市場の支援策に取り組んでいるとの報道を受けて一段の上昇に向かい、週次ベースでは7週間ぶりの上昇となりました。また、この報道を受けて人民元は1週間ぶりの高値に達し、足元で銅との相関性が高まっていることから更なるセンチメントの改善に寄与しました。一方、金は1950ドル手前でサポートを見つけた後、新たな需要を集めました。米議会で債務上限法案が可決し、市場がFRBの年内利下げを再び織り込む中、米国債利回り低下とドル安の流れがその後も金の回復を下支えする展開となりました。
農業セクターは強弱入り混じった展開も、降水量の少なさが支援材料になる可能性が
農業セクターの動きはまちまちの動きとなり、穀物はサイクル最安値を更新した後は今季の作況について北半球全体で十分な供給が見込めるとの直近までの見通しを支えにかろうじて買われる展開となりました。しかし、過去1ヶ月にわたって欧州や米国の一部の地域に見られる極端に降水量の少ない天候が6月も続けば、こうした見通しは覆される可能性があります。今シーズンも小麦の豊作を見込むロシアに注目が集まっています。小麦価格は土壌の乾燥や戦闘が激化するウクライナの輸出に対する懸念が再燃しているとの報道を受けて持ち直したものの、週明けには約2年ぶりの安値を付け、一時は10年ぶりにトウモロコシ価格を下回りました。
米上院の環境・公共事業委員会が、先進的な原子炉の新艦隊の配備を迅速に進める法案を提出したことで、ウラン関連銘柄は木曜に世界の株式市場で急騰しました。この法案は、原子力規制委員会が原子力発電所の認可プロセスを調査し、先進的な原子炉を迅速に認可することを目的としたガイドラインの修正を検討する際の指針を定めています。
この法案は、旧工業・商業施設に建設される次世代原子炉の承認を急ぐよう求めるほか、原子力規制委員会に対し、米国と原子力開発を目指す他の国との間の取り組みを調整し、海外の原子力安全規制当局の訓練を支援するよう指示しています。これを受けてGlobal X Uranium ETFは火曜日から10%上昇し、世界有数のウラン供給業者であるカナダのCameco Corpの株価は12.4%高と、12年ぶりの高値を更新しました。同セクターで事業を展開する主要企業の詳細については、当グループの原子力のテーマバスケットをご参照ください。
原油価格は、ブレントが過去1ヶ月間にわたって1バレル75ドル前後で推移しており、引き続きサイクル安値付近にとどまっています。その主な要因は、世界最大の輸入国である中国に限らず米国やその他の主な原油消費国でも、世界経済の成長性や需要見通しに対する懸念が高まっていることです。このため、原油市場では世界的な需要減速に備えたヘッジとしてマクロ系ファンドから売りが出ています。
市場では、サウジアラビアを筆頭に4月2日の減産による価格支持効果をまだ実感していない一部の主要生産国による追加減産という予想外の展開に直面しています。また、6月4日のOPEC+会合を前にサウジアラビアのエネルギー大臣が投機筋に対する警告を強めたことを受け、原油価格は急伸しています。
OPEC+としては結束を示したいところですが、ロシアがサウジアラビアの主な買い手である中国とインドに割安な価格で原油を販売し続けていることもあり、週末の会合でいくつかのサプライズが生じる可能性もあります。原油価格を支えるため、追加的な取り組みが発表される可能性はありますが、追加減産を決定する可能性は低いものとみられます。その理由はいくつかありますが、最も重要なポイントは、追加減産によって1)サウジアラビアやUAE、クウェートなど湾岸諸国の産油国のシェアがOPEC内外の他の産油国に移ること、2)先月発効したばかりの4月の減産発表から間もないため、まだ十分にな効果が得られていないこと、3)OPECの予測では、下半期は供給がタイト化し、価格を下支えする見通しであることです。
さらに、最新の情報によると原油や燃料先物取引の最大の「買い手(上位5)」の関心度は、過去10年以上にわたって最も低い水準に低下していることが明らかになっています。5月23日までの直近の報告週には、ブレントの買い越しと軽油のショートカバーが増加したことで12%増の38万4000枚となったものの、合計建玉は前年同期に比べて43%も低い水準にとどまっています。しかし、テクニカル面やファンダメンタルズの見通しが改善に向かえば、ロングポジションが再び積み上がり、追い風となる可能性があります。
また、ブルームバーグが生産量について行った調査によると、OPECの原油生産量は先月、平均で日量50万バレルの減少となりました。予想通り、クォータを持つ中東の主要生産国は、4月上旬の発表時に公約した減産を予想通りすべて実行しましたが、その一方で割当量を下回る、あるいはクオータを持たない産油国は増産したため、その影響は限定的となっています。全体として、総生産量は日量2,826万バレルに減少し、15ヶ月ぶりの低水準を付けています。
ブレント原油はレンジ相場が当面続いており、70ドル台に留まっています。相場の底値が形成されたとのシグナルを送り、反転に向かうためには、まず心理的な節目となる80ドルを試した後に上抜けする必要があります。
金相場は、強い米雇用統計を受けて週末に利益確定売りに押される前に再び1980ドルの上値抵抗線を試す展開となり、4月以来の水準を更新する勢いで上昇しました。また、米上院で債務上限停止法案が可決されたことも5月の大半にわたって続いた逆風を和らげる一因となりました。5月は債務上限問題によってドルや利回りが上昇したことが逆風となり、投機筋は先物市場でポジションを縮小せざるを得ませんでした。しかし回可決された法案が米経済の先行きに打撃を与える可能性があることや、木曜に公表された米経済指標でインフレ抑制に一定の進展が見られたことが相まって、年内利下げ観測が再び強まる要因となりました。足元では1950ドル付近を主なサポートに、21日移動平均の2000ドルに向けて引き続き1984ドルが上値抵抗線となっています。
銅価格は、ニューヨークおよびロンドン市場で週次ベースで7週間ぶりに上昇しました。足元の上昇は、前週のテクニカルな買いが継続したことによるもので、サポートが再び出現していることを示唆しています。中国の経済指標が再び期待外れに終わったにもかかわらず、銅価格がかろうじて持ち直したことで市場に安心感が広がりました。また、世界最大の銅消費国である中国が不動産市場を支援するために新たな取り組みを進めているとの報道も、週明けの市場で銅価格を下支えしました。また、人民元は2ヶ月ぶりの高値を付けており、銅との相関性(下図参照)が足元で強まっていることを踏まえると、一段の追い風となったようです。