VIX指数が(まだ)パニックに陥っていない理由:トレーダーが知っておくべきこと

VIX指数が(まだ)パニックに陥っていない理由:トレーダーが知っておくべきこと

概況 10 minutes to read
コーエン・ホーレルベケ

オプション戦略責任者

サマリー:  S&P 500指数が9%近く下落したにもかかわらず、VIX指数は比較的低調に推移しており、トレーダーが積極的なヘッジではなくポジション削減を通じてリスクを管理していることを示しています。この慎重な対応は、ボラティリティが依然として懸念事項である一方で、市場参加者はまだパニックモードにはなっておらず、流動性の状況と不確実性の原因が政策にあるということが恐怖心の広がりを抑制していることを示唆しています。


VIX指数が(まだ)パニックに陥っていない理由:トレーダーが知っておくべきこと

最近の米国株式の下落は多くの投資家を不意打ちし、S&P5002月の高値から9%近く下落しました。しかし、急激な調整にもかかわらず、ボラティリティ市場は不思議なことに抑制されたままです。ウォール街の「恐怖指数」であるVIX指数がパニックに陥って上昇すると予想していたトレーダーは、なぜ恐怖が通常の形で現れないのか、と疑問に思っています。

2024年半ばから2025年3月までのボラティリティの傾向を示すVIX指数の日足チャートで、2024年8月と12月に急上昇し、最近では2025 年初頭に上昇しています。 出所:サクソバンクグループ

310日、S&Pが日中約2%下落したため、VIX指数は12月中旬以来の高水準に達しました。しかし、その急上昇は、12月や8月などにみられた過去の市場の急落と比べると比較的小さく控えめでした。通常、市場が2%下落すると、ボラティリティの急激な反応に繋がりますが、今回はその反応が慎重なように見えます。

なぜボラティリティが急上昇しないのか?

VIX指数の急上昇を妨げている主な要因はいくつかあります。

ヘッジではなくデグロス化多くの投資家は、積極的にプロテクションを購入する代わりに、ポジションを巻き戻すことでリスクを管理しています。この「デグロッシング」のトレンド、つまり高価なプットでヘッジするのではなく、取引から撤退することで、ボラティリティに連動する商品の需要が制限されています。トレーダーが押さえておきたいポイント:ファンドがリスクをヘッジするのではなく、リスクから撤退している場合、市場は深刻なパニックよりも安定化に近づいている可能性があります。

政策主導で生じている(現在の)不確実性は可逆的であるように感じられます最近の市場の緊張状態(ストレス)の多くは、トランプ大統領による関税の脅威や貿易政策の転換など、人為的なリスクに起因しています。構造的な金融危機とは異なり、これらのリスクは一時的で可逆的なものと見られています。強硬的な関税引き上げの発表によって引き起こされた最近のボラティリティの急上昇でさえ、地政学的な緊張が緩和されると(ウクライナのロシアとの暫定的な停戦など)、急速に後退しました。
トレーダーが押さえておきたい点:ボラティリティが依然として政策主導の場合、トレーダーは持続的に恐怖に左右される動きではなく、反転に注意すべきです。

VIXのコールオプションよりも(相場に直接連動する)指数のプットオプションを選ぶ – S&P 500プットオプションを選択する方がVIXコールオプションを選ぶよりも効果的なヘッジとなっており、これはトレーダーがボラティリティへの投機よりも直接的なダウンサイド・プロテクション(下振れリスク回避)を好むことを示しています。これは、特に多くの投機的なVIXトレーダーを市場から退場させた2018年の「ボルマゲドン」に続く、持続的なトレンドとなる可能性があります。
トレーダーが押さえておきたい点:リスクヘッジの取引が依然として活発で、それが相場に直接連動する商品のプットオプションを利用したものである場合、VIX指数の動きはそれほど大げさなものとはなりませんが、プットオプションの買い圧力が持続する可能性があると考えてください。

ボラティリティ市場の流動性は引き続き健全個別株式の流動性は弱まっていますが、VIX先物の流動性は依然として堅調です。ソシエテ・ジェネラル(Societe General)のストラテジストが指摘するように、VIXオプションのビッド/アスク・スプレッドがタイトであることは、パニックによる取引ではなく秩序ある取引が行われていることを表しています。
トレーダーが押さえておきたい点:真の恐怖の急増には、 株式市場とボラティリティ市場の両方で流動性の悪化が必要になる可能性があります。

このダイナミクス(動態)を変える可能性のあるリスク要因

VIX指数は今のところ抑制されていますが、トレーダーはシフト(移り変わり)を引き起こす可能性のある兆候に注意する必要があります。

  • ネガティブ・ガンマ・エクスポージャー(原資産価値に対するオプション価格の感応度(デルタ)が原資産価値の動きに対して小さくなる、ガンマがマイナスの状態のポジション):マーケットメーカーが抱えるオプションの売り建てについては、マーケットメーカーがオプションを高く買って安く売ることでヘッジする必要があるかもしれません。この状況下では、流動性が枯渇した場合にボラティリティが増幅する可能性があります。
  • 流動性の枯渇:VIX先物の流動性が衰え始めた場合、より顕著な変動が予想されます。
  • 予想外のマクロ経済に関する衝撃:サプライズ(驚き)となるインフレ率に関するデータ、FRBの積極的な動き、または地政学的な出来事により、ボラティリティの状況が急激に変化する可能性があります。

トレーダーのための戦略的な動き

現在の市場環境を考えると、トレーダーは各々の取り組み方によって異なる戦略を検討することができます。

  • ボラティリティ市場で取引するトレーダー向け:投機的なVIXのコールオプションの取引をするのではなく、VIX先物のターム・ストラクチャー(期間構造)を利用した指数先物のスプレッド取引や、リスク・プレミアムが膨らんだIV(インプライド・ボラティリティ)の高い株式のプットオプションの売りを検討してみてください。
  • 株式の押し目買いを好むトレーダー向け:プットコールレシオ(PCRの低下やSPYなどのETFへの資金流入は、リスク選好が戻っていることを示唆しており、逆張りの買いシグナルとなる可能性があります。
  • リスク管理を重視するトレーダー向け:流動性指標とガンマ・エクスポージャーを注意深く監視してください。流動性が枯渇すれば、市場の変動が加速する可能性があります。カレンダー・スプレッドによるヘッジを検討し、エクスポージャーを維持しながら短期的なリスクを軽減します。

まとめ

最近の市場の混乱の中でボラティリティが小幅に上昇していることは、トレーダーが慎重ながらも、現在の不確実性、特に政策をめぐる不確実性が制御不能に陥ることはないと確信していることを示唆しています。

最終的に覚えておきたいこと:トレーダーは機敏さを保つ必要があります。ボラティリティ市場において反応が鈍いことは、市場参加者の自信を表していますが、流動性のシフト、ガンマ・エクスポージャー、ポジショニングについてのトレンドなど、主要なリスク指標は注意深く監視する必要があります。戦術的に、賢くヘッジし、ボラティリティの急上昇を盲目的に追いかけることは避けてください。

 


オプションは複雑でリスクの高い商品であり、知識、投資経験、そして多くの実際の投資の場面では、高いリスク許容度が必要です。オプションに投資する前に、運用とリスクについて十分な情報を得ることをお勧めします。

サクソバンクの「外国株式・指数オプション取引の契約締結前交付書面」において、これらの注意事項に関する詳細をご覧いただけます。

また、サクソバンクのウェブサイトで投資したいオプションの必須情報に関する書面を参照することができます。

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

コンテンツ免責事項

本ウェブサイトで提供される情報は、金融商品の売買を勧誘、推奨、または承認するものではなく、金融、投資、または取引に関するアドバイスを目的としたものではありません。当社およびサクソバンクグループの各法人は、執行専用のサービスを提供しており、すべての取引および投資はご自身の判断に基づいて行われます。分析、調査、および教育コンテンツは情報提供のみを目的としており、アドバイスや推奨として解釈されるべきではありません。

当社のコンテンツは、著者の個人的な見解を反映している場合があり、予告なく変更されることがあります。特定の金融商品の言及は、例示目的であり、金融リテラシーの向上を目的としています。投資調査として分類されるコンテンツはマーケティング資料であり、独立した調査の法的要件を満たすものではありません。

投資判断を行う際には、ご自身の財務状況、ニーズ、目標を十分に考慮し、必要に応じて独立した専門家のアドバイスを受けるかどうかの判断も含め、自己責任であることをご理解ください。当社は、提供される情報の正確性または完全性を保証するものではなく、この情報の利用により生じた誤り、脱漏、損失または損害について一切の責任を負いません。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。