金融セクターの値幅限定を想定したオプション戦略:銀行決算後のXLFのショートストラングル

金融セクターの値幅限定を想定したオプション戦略:銀行決算後のXLFのショートストラングル

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コーエン・ホーレルベケ

オプション戦略責任者

サマリー:  好調な銀行収益と最近のテクニカルのブレイクアウトを受けて、XLF ETF(金融セレクト・セクター SPDR ® ファンド)はオプショントレーダーの注目を集めています。この記事では、時間的価値の減少(タイム・ディケイ)と現在のインプライドボラティリティ(予想変動率)の水準から利益を得ようとするショートストラングル戦略について概説します。


金融セクターの値幅限定を想定したオプション戦略: 
銀行決算後のXLFのショートストラングル

金融株は急反発し、XLF ETF(金融セレクト・セクター SPDR ® ファンド)は2023年11月以来初めて200日移動平均線を上回りました。この上昇は、Goldman Sachs、JPMorgan、Morgan Stanleyなど、いくつかの主要な米国銀行の予想を上回る収益と、中国からのハイテク製品に対する突然の関税免除後の貿易政策をめぐる懸念の緩和を受けた市場の反応です。

XLFの200日移動平均線の折れ線グラフで、長期トレンドラインを上回る2025年4月のクロスオーバー(短期と長期の移動平均線が交差する現象)を示しています。 出典:BarChart

XLFのテクニカルなブレイクアウトは、トレーダーの間で楽観的な見方を引き起こし、多くのトレーダーが現在、フォロースルー(下落局面から反発し、その反発が持続して上昇トレンドに移行する現象)の上昇、または少なくとも決算後の勢いに続く保合(コンソリデーション)の段階(株価が急騰や急落を終え、ある程度安定した状態に落ち着く期間)を注視しています。過去のパターンは、200日平均線を上回る同様の動きが、その後の数週間にわたって継続的な強さにつながったことを示唆しています。しかし、インプライドボラティリティが依然として高く、最近の上昇が織り込まれている可能性があるため、レンジ相場の値動きやボラティリティの減衰を予想してプレミアムを売る機会を探しているトレーダーにとっても、この相場状況は魅力的かもしれません。

欧州連合(EU)加盟国の一部の投資家は、米国に所在するETFに対するMiFID IIの制限によりXLFを取引できないと考えるかもしれませんが、この制限は上場オプションには適用されません。XLFのオプションの取引をするのは、現在の規制の下で完全にアクセスが可能であり、法令にも準拠しています。

この記事では、決算シーズンの取引に対するアクティブでありながらディフェンシブなアプローチに適したリスクパラメータ(価格変動の主要な要因に対する価格の感応度を表す指標)を維持しながら、タイム・ディケイとインプライドボラティリティの正常化から利益を得ようとするXLFの短期のストラングル戦略について概説します。


市場の状況

4月上旬にはマクロ経済に関するニュースの見出しに連動した大きな動きがあったものの、ボラティリティは最近、緩やかになっています。特に金融セクターは、決算発表と大手銀行のより明確なガイダンスを背景に、安定しているとみられます。

  • Goldman Sachsは、第1四半期のEPSが14.12ドル、純利息収入が予想を上回り、利益と売上高の両方で力強い業績を記録しました。
  • JPMorganをはじめとする大手セクターもフォワードガイダンスを維持し、マクロ経済の不確実性が長引く中でも安心感を与えました。

IV(インプライドボラティリティ)は依然として高水準ですが、緩和の兆しを見せており、プレミアムセラー(プレミアムを求めてオプションを売るトレーダー)がよく求める相場の準備段階です。XLFのIVランクは約52%IVパーセンタイルは97%近くにあり、現在のインプライドボラティリティが同銘柄の12か月のレンジと比較して高いことを示しています。


重要な注意点:

この記事で紹介する戦略と例示は、純粋に教育目的で提供しています。これらは、あなたの思考プロセスを形作るのを助けることを目的としており、慎重に検討せずにそのまま複製したり実装したりすべきではありません。すべての投資家またはトレーダーは、決定を下す前に、独自のデューデリジェンスを実施し、独自の財務状況、リスク許容度、および投資目標を考慮に入れる必要があります。株式市場への投資にはリスクが伴い、十分な情報に基づいた意思決定を行うことが重要です。


取引の設定:XLFのショートストラングル

ショートストラングルとは、アウト・オブ・ザ・マネーのコールとアウト・オブ・ザ・マネーのプットを同時に売り、原資産が満期まで2つの行使時間の間に留まると予想する戦略です。

レッグ権利行使価格種類満期プレミアム
コールの売り50コール2025年5月16日$0.48
プットの売り44プット2025年5月16日$0.60
プレミアム合計$1.08
原資産価格が44ドルから50ドルの間にあった場合の利益となる範囲と、42.92ドルと51.08 ドルでの損益分岐点を示すショートストラングルのリスク/リターンに関するチャート 出典:サクソバンクグループ

エントリー時の原資産価格: ~$47.40
最大利益: $108 (債権の受領を含めた金額)
最大損失: 無制限
損益分岐点: $42.92 および $51.08
満期までの日数: 最大32日間
必要証拠金: €392.78 (各トレーダーの証拠金の特性によります)

この戦略は、以下の想定に基づき利益を得られるよう設計されています。

  • タイム・ディケイ (正のシータ)
  • インプライドボラティリティの縮小
  • 短期的なレンジ相場での価格変動

どちらの権利行使価格も25Δ(デルタ)水準付近に配置され、統計的に有利なリスク/リターン特性を維持しながらプレミアムを最大化することを目指しています。


ボラティリティの状況

XLFオプションは、決算後も依然として高値で取引されており、ボラティリティの売り手に優位性を提供しています。

IVが28.82%、IVランクが52%、IVパーセンタイルが97%、過去のボラティリティが約39.53%であることを示す表 出典:Barchart
IVはHV(ヒストリカル・ボラティリティ)をわずかに下回っていますが、決算後の状況では、IVの縮小が続く可能性を示唆しています。
2025年5月限月の建玉とビッド/アスクのスプレッドを示すオプションチェーンのスナップショット:44のプットと50のコール  出典:サクソバンクグループ

建玉はショート(売り)の権利行使価格付近に集中しており、流動性が増し、スプレッドが狭くなっています。

 

 


取引の管理

この取引は、タイム・ディケイと安定した原資産価格から恩恵を受けていますが、定義されていないリスクが伴い、積極的な管理が必要です。

主なガイドライン:

  • 利益目標:リスクエクスポージャーを減らすために、最大利益の50%で取引を終わらせることを検討してください。
  • 調整トリガー:原資産価格がどちらかの売りオプションの権利行使価格に触れた場合、権利行使価格に触れていない方のオプションのレグをより期近の満期日にロールバックして、追加のプレミアムを獲得します。
  • ローリング:満期まで21日の時点でポジションがまだオープンである場合は、γ(ガンマ:原資産の価格が動いた時のΔデルタの変化を表す指標)のリスクと潜在的な割り当て(売ったオプションの相手方の権利行使により原資産の買いや売りを強制されられること)を避けるために、ロールフォワード(ロールオーバー:満期日が近づく前に、次の満期日のオプションに乗り換えること)を検討してください。


リスクに関する注記

ショートストラングル戦略におけるリスクは以下の通りです。

  1. 無制限の損失リスク: 原資産価格が大きく変動した場合、損失が無制限になる可能性があります。特に、価格が権利行使価格を超えて上昇した場合、コールオプションの売りによる損失が無制限になります。また、価格が権利行使価格を下回って大きく下落した場合、プットオプションの売りによる損失も無制限です。
  2. 市場変動リスク: 原資産価格が設定した損益分岐点($42.92 および $51.08)を超えて変動すると、損失が発生します。この戦略は、原資産価格が一定の範囲内に留まることを前提としているため、予期しない市場変動があると損失を被る可能性があります
  3. 時間リスク: タイム・ディケイはこの戦略にとって有利ですが、満期までの時間が短くなるにつれて、価格が設定範囲を維持しない場合、損失が拡大する可能性があります。
  4. 流動性リスク: 特定の市場条件下では、オプションの流動性が低下し、ポジションを閉じる際に不利な価格で取引をせざるを得ない場合があります

これらのリスクを管理するためには、適切なリスク管理戦略を採用することが重要です。特に、損失を限定するためのストップロス注文やヘッジ戦略を検討することが推奨されます。また、証拠金の要件を満たし、ポジションを維持するための資金管理も重要です。

 


代替戦略

ショートストラングルは中立的な見通しを立てるように構成されていますが、強気もしくは弱気のどちらかの相場の方向性を想定するトレーダーは、特定の市場の期待に合わせた明確なリスク戦略を好むかもしれません。

  • 強気の見方:ブルコールスプレッド(株価が上昇すると予想して、違った権利行使価格のコールオプションの買いと売りを組み合わせる取引戦略)は、単なるコールオプションの買いと比較してリスクが抑えられ、コストが削減され、相場の上昇時に潜在的な利益を獲得できるエクスポージャーを提供します。これは、さらなる利益が期待される場合には効果的ですが、無限の上昇余地は期待できません。
  • 弱気の見方:ベアプットスプレッド(株価が下落すると予想して、違った権利行使価格のプットオプションの買いと売りを組み合わせる取引戦略)は、特にボラティリティが再び上昇したりセンチメントが弱まったりした場合に、潜在的な下落余地から利益を得るためのリスクが定義された取引手法を提供します。

これらのバーティカルスプレッド(満期が同じで権利行使価格の異なるコールどうしの売りと買い、あるいは、プットどうしの売りを買いを組み合わせるオプション取引の一手法)により、トレーダーは資金の支出(投資額)と全体のリスクエクスポージャーを管理しながら、相場の方向性を想定した見方を取引により表現できます。


まとめ

金融セクターの株価の急反発と良好な決算発表の勢いを受けて、XLFがコンソリデーション(保合の状態)にとどまると予想するトレーダーは、ショートストラングルを検討するかもしれません。この取引は、インプライドボラティリティの上昇を利用して利益の獲得を狙えるよう構成されており、明確な時間枠と明確なリスク管理のルールが存在します。

この戦略は、特に方向性の確信が低い市場において、忍耐力と積極的な運用に報いるものですが、ボラティリティから得られるプレミアムは依然として魅力的です。


オプションは複雑でリスクの高い商品であり、知識、投資経験、そして多くの実際の投資の場面では、高いリスク許容度が必要です。オプションに投資する前に、運用とリスクについて十分な情報を得ることをお勧めします。

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