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マーケット・ストラテジスト(Saxo Group)
サマリー: 代替エネルギーとして原子力が大きな注目を集めています。2022年後半から2023年にかけて予想される一部の国でのエネルギーが不足をきっかけに、世界でエネルギーの供給確保が喫緊の課題となっているためです。原子力発電は水力発電に次ぐゼロカーボン電源であるという理由からも、需要が急増しています。またクリーンエネルギー関連企業は、2022年のグローバル市場において最高の株主利益を生み出しています。そこで本稿では、このセクターを詳細に検討し、次に何が起こるのか、どの国が原子力の推進をリードできるのか、そしてどのような企業が関わっているのかを明らかにしたいと思います。このセクターを投資や取引の対象として検討するにはファンダメンタルズを確認することが重要です。では検討を開始しましょう。
現在、世界のエネルギー需要の10%を供給する原子力発電は、将来の電力・エネルギー供給において重要な役割を果たすと期待されています。原子力は温室効果ガス排出量がゼロで、製造コストが低く、限られた資源しか必要としないためです。世界は、価格が異常に高騰しているガス、石油、石炭や、高コストの再生可能エネルギーに代わるものを必死で探しています。世界原子力協会によれば、どのようなシナリオであれ、急増する需要に対応するには、2040年末までにウランの供給量を2倍に増やす必要があるということです。このことは、ウラン価格とウラン企業にとってはポジティブな材料です。
第一に、米国、カナダ、日本が中心となって、原子力をクリーンエネルギーの第一供給源として活用することを世界的に推進しています。これらの国々が参画するクリーンエネルギー大臣会合という大規模なプロジェクトが、本格的に原子力を電源とすることを目指して取り組んでいます。原子力を利用するための提案は、米国の冬までにクリーンエネルギー大臣会合に提出されることになっています。今後さらに多くの原子力関連のニュースが入り、この分野について多くの報道がなされるでしょう。
クリーンエネルギー大臣会合には、英国、ルーマニア、ポーランド、アルゼンチン、UAE、ロシアなどの国も参加しています。期限を前に、多くの国が既に原子力の利用や拡大の方法について大きな一歩を踏み出しています。ポーランドはエネルギ価格の高騰に直面し、ウクライナから「非常に」大量の原子力発電を購入することを検討しています。一方、米国エネルギー省は、稼働中および廃止された石炭火力発電所の80%を原子炉に切り替えることを提案しており、これにより新たな原子炉を建設するよりも35%の資本を節約できるとしています。
第二に、米国が独自の原子力発電の開発を急いでいます。8月16日にバイデン大統領によって署名されたインフレ抑制法の一環として進められています。原子力発電所が水素製造会社に電力を供給することで、税額控除を含む一連の税制上の優遇措置を受けることができるため、原子力発電所にとってはチャンス、水素に関わる企業にとってはリターンを得るものとなります。さらに、原子力発電所も発電に対して税額控除を受けることができます。
そうした中で、コンステレーション・エナジー(CEG)は注目すべき企業かもしれません。コンステレーションは今年、ニューヨークにあるコンステレーションの原子力発電所を動力源とする水素製造を開始する予定です。以前、米国エネルギー省(DOE)から助成金を獲得しています。原子力発電所を使ってクリーンな水素を製造することで、コンステレーション・エナジーの収益を向上させることができると考えられています。モルガン・スタンレーによると、コンステレーション・エナジーの収益は10%増加する可能性があるということです。収益向上と助成金のニュースを見越して、コンステレーション・エナジーの株価は、本稿執筆時点の9月15日現在、年初来で100%以上上昇し、S&P500の年初来パフォーマンスで第2位となっています。
第三に、原子力を積極的に推進することとは別に、ボラティリティを生じさせるリスクにも注意する必要があります。オーストラリア政府の低排出ガス技術に関するアドバイザーであり、オーストラリアの元チーフサイエンティストは、オーストラリアは将来のエネルギーミックスに原子力を含める必要はないと述べています。一方、欧州連合(EU)は、再生可能エネルギーと原子力の電気事業者の利益に上限を設け(石油・ガス会社の余剰利益にも課税)、それによって1400億ドル余りの資金を確保し、エネルギー料金の上昇に苦しむ消費者の支援に充当しようとしています。
世界最大のウラン資源を持つのはオーストラリアです。しかし、世界のウラン生産量はカザフスタンが最も多く、次いでナミビア、カナダ、ウズベキスタンと続き、このトップ5で世界のウラン生産量の大半を占めています(世界原子力機関)。では、オーストラリアが世界一のウラン生産国になることを阻んでいるものは何なのでしょうか。西オーストラリア州政府が、新たなウラン採掘プロジェクトの承認にブレーキをかけているのです。オーストラリアは原子力を一切使わず、エネルギー需要の60%を石炭に頼っています。そのため、オーストラリアのウラン生産量の100%は輸出されています(エネルギー輸出の4分の1を占めています)。
オーストラリアにあるウランのほとんどは、世界最大のウラン鉱床であるオリンピック・ダムから産出されたもので、このダムは世界最大の鉱山会社BHPが所有しています。
BHPは、オーストラリアにある5つのウラン鉱山のうちの1つを運営しています。国内の多くの鉱山は環境上の理由で操業が停止されました。リオ・ティントが一部所有している鉱山は、昨年1月に操業を停止し、元の状態に戻されました。一方、ボス・エナジーは、2015年にオーストラリアの遊休ウラン鉱山を買収し、2022年に鉱山の開発認可を獲得したばかりです。ボス・エナジーは2022年9月、南オーストラリア州のハネムーン・ウラン鉱山プロジェクトで、計画されている86本の井戸のうち最初の穴を掘削しました。
これらの問題から、原子力発電の供給不足を補うためのウラン鉱山の稼働がいかに困難であるかがわかります。
ウランの採掘、精錬、原子力発電所、送電、原子力部品や燃料の供給など、原子力やウランに関連が事業の大部分を占める原子力関連企業をリストアップしました。リストはこちら、または下記よりご覧いただけます。**
また、Uranium ETF (URA)などのウランETFを検討することも可能です。
しかし、もしあなたが独自の調査や当社のインスピレーション・リストから銘柄を選ぶのであれば、企業の株価パフォーマンスは一般的に、利益成長、将来の利益とキャッシュフローの成長への期待に基づくことを念頭に置いてください。例えば、2022年のニューヨーク証券取引所とオーストラリア証券取引所のベストパフォーマーを見てみると、化石燃料やその他のエネルギー関連企業が最も上昇していることが分かります。また、インフレ率と金利が上昇する環境下で、どのセクター、企業(銘柄)がそうしたパフォーマンスを再現し、最も収益と収入の伸びを実現することが可能なのか、考えてみてください。私たちは、エネルギーセクターが引き続きアウトパフォームすると考えています。従って、今期のポートフォリオを見直す際には、エネルギー・セクターへのエクスポージャーに検討の価値があるかもしれません。
また、サクソのプラットフォームを利用して、掲載企業の詳細を調べることもご検討ください。企業を検索した後、製品概要画面では、その企業の最新ニュース、決算発表の時期など注目すべき主要な企業イベントを見ることができます。ファンダメンタルズをクリックすると、前年の収益、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)、当期純利益、およびリサーチ会社FactSetによる今期の予想が表示されます。
社名 | コード |
デューク・エナジー | DUK |
ドミニオン・エナジー | D |
フランス電力 | EDF |
エクセロン | EXC |
RWE | RWE |
中国広核電力 | 1816 |
エンデサ | ELE |
カメコ | CCO |
関西電力 | KEP |
フォータム | FORTUM |
カザトムプロム | KAP |
東京電力ホールディングス | 9501 |
BWXテクノロジーズ | BWXT |
ネクスジェン・エナジー | NXE |
パラディン・エナジー | PDN |
ウラニウム・エナジー | UEC |
デ二ソン・マインズ | DNN |
中広核工業(CGNマイニング) | 1164 |
エナジー・フューエルズ/カナダ | UUUU |
Yellow Cake PLC | YCA |