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グローバルマクロ戦略責任者
サマリー: 四半期先の展開について議論することはほぼ不可能な課題です。なぜなら、背景には新しい世界秩序が形成される中で、古い世界秩序が一生に一度の大変革を迎えているからです。しかし、見通しがせいぜい曖昧であっても、多くの重要な質問は非常に明確です。
新しい世界秩序が形成されつつあり、一生に一度あるかないかという古い世界秩序の分断という背景の中で、少し先の展開を論じることは不可能に近いことです。
長期的な問題はすべて非常に明確になっています。しかし答えはどうでしょうか?明確からはかけ離れています。長期的な目標である米国の再工業化を成功させながら、米ドルと米国債市場を安定させるというトランプ大統領の取引を通してのアプローチは、米国の古くからの同盟国を相手にした場合でもうまくいくのでしょうか。欧州は、大規模な人口問題を抱え、過剰に規制された、費用のかかる福祉国家であるにもかかわらず、自国の妥当性を維持するためにハードパワーを結集しようと躍起になっています。多国間制度は依然として重要であるという立場をとっていますが、果たして成功する可能性はあるのでしょうか。そしてまた、20年にわたる生産能力と不動産への過剰投資で経済的に大きな打撃を受けている中国が存在します。しかし、中国は現在、軍事的にも、とりわけ産業的にも非常に強力です。重商主義モデルを強化した古い世界秩序が急速に後退している中で、中国はどのように自らを改革した上で再投資し、成長を続けることができるのでしょうか?
ご安心ください。これらの重要な質問に対する答えは、次の四半期や翌年に見つかるものではありませんが、最終的な答えにつながるテーマはすでに明らかになっています。
トランプ政権下の米国の政策:あらゆるものを、あらゆる場所で、すべてを一度に。
米国が古い世界秩序の維持から撤退しており、そのリスクは非常に大きいものです。この古い秩序とは、米ドルが外貨準備と貿易取引のための世界通貨として機能する、多国間制度の名目の下で運営されている事実上の米国の覇権の一つでした。米ドルの世界的な役割はその価値をつり上げ、米国の巨額の貿易赤字と米国経済の空洞化および産業空洞化を引き起こしました。大量の資本流入が米国経済の金融化に追い打ちをかけ、米国内での不平等を倍増し、また米国の中・下層階級の苦痛を増大させました。これはポピュリズムとトランプの台頭を引き起こすきっかけとなりました。
トランプ大統領とそのチームは、就任後最初の数週間で、米ドルと米国債市場の安定を維持できると示唆しながらも、古い秩序のすべてを覆そうと目にも止まらない速さで動いています。トランプ大統領は静かに中国に対して着実に関税を引き上げており、長期的に両国の経済を完全に切り離そうとしているように見えます。また、最も近い隣国であるカナダやメキシコにも関税を課すとトランプ氏は脅しています。これはこれらの大型関税を維持するというよりも、米国への投資を促進し、「さもなければ」という狙いの表れかもしれません。Appleは米国への5000億米ドルの投資を発表し(Appleは米国の対中貿易赤字の最大の要因となっている企業です)、ホンダは当初計画されていたメキシコではなく米国に新工場を建設すると発表したことにも注意が必要です。地政学的な側面もあるでしょう。米国はカナダとメキシコに対し、同様の反中国貿易障壁を導入するよう要求する可能性もありますし、そうでなければ関税をかけることになるかもしれません。EUもまた、欧州で欧州製品を米国製品よりも優遇する付加価値税(VAT)の構造があることから、米国に狙いを定められています。
トランプ大統領が製造品に課している関税を超えて、最も活発に推測されているのは、「マールアラーゴ合意」の可能性についてです。これは、米国と主要貿易相手国との間で、後者が米国のドルシステムにアクセスし、米ドル外貨準備金を蓄積する特権を得るために支払うべき対価について、何らかの合意を結ぶというものです。これは米ドル安を進行させ、米国製品の世界的な競争力を高め、米国のソブリン債務再編を支援することにつながります。ファイナンシャルタイムズ(FT)のジリアン・テット(Gillian Tett)記者は、これを「モノへの関税は貨幣への関税の前触れかもしれない」と表現しています。当社では、多極化しつつある世界において、ブレトン・ウッズ体制に匹敵する規模のものを話題にしています。米国の消費者の消費意欲が本物であり米ドルを利用する機会(つまり、需要)が非常に大きく、米国の消費者がはるかに高い価格を支払う意思があると仮定すると、米国は、米ドル利用に対する関税を成し遂げることができるのでしょうか?それとも、悲惨な失敗をして、市場に大きな混乱をもたらすのでしょうか?すでに、トランプ大統領のやり方は世界における米国のソフトパワーを急速に蝕んでおり、少なくとも北米以外の地域における彼の政策全体にリスクをもたらしています。
すべては信じられないほどリスクの高い、一か八かの賭けです。次の四半期には、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が率いる米国政府効率化省(DOGE)が財政支出を大幅に削減する可能性があるかどうかをより正確に判断できるようになるでしょう。一方で、年末までには成長の減速と景気後退さえも起こりそうではあり、財政の減速と米国の消費者の疲弊により、景気後退が年末を待たずにもっと早く起こる可能性もあります。政府閉鎖を回避するための最初の共和党の歳出つなぎ予算法案が可決しましたが、米政府が厳しい予算削減を喜んで受け入れているわけではないことに注目すべきでしょう。
結論:米国の政治サイクルは重要なレンズとして機能しており、トランプ政権は経済的な痛みと混乱を前倒しで最大限に引き起こし、その責任をバイデン前大統領に押し付けようとしているのかもしれません。期待されているのは、大幅な規制緩和、減税、関税の脅しによるインバウンド投資の促進によって、2026年11月の中間選挙までに経済が上向きになることです。米ドルは、米国経済の実績や財政の足枷があるだけでなく、世界が米国株式への過剰な配分を解消してポートフォリオを再調整する中で、今年、引き続き大きな下降圧力にさらされる可能性があります。歴史上最も集中した市場がみられた後、米国株式市場は今年、引き続きアンダーパフォームする可能性が非常に大きく、指数レベルでは米国株式の弱気相場に陥る可能性さえあります。また、今年、AI関連支出の削減が、想定外の悪影響をもたらすリスク要因となりそうです。
欧州:米軍撤退の影響
トランプ大統領による米国の欧州に対する安全保障上の公約からの撤退は、欧州が(米大統領選のあった)11月5日の時点でその兆候に気づいていたとしても、痛恨の極みとなりました。米国は、ロシアがロシアにとってかなり有利な和平協定に署名する意思がある限り、ロシアとの関係正常化に前向きであるように見えます。多くの専門家は、ロシアを西側諸国と対峙させ、「逆ニクソン(1970年代初頭にニクソン元米大統領が中国と友好関係を築き、中国とソ連との間に楔を打ち込んだ)」と呼ばれるやり方で、米国がロシアの「下位パートナー」にならないようにするべきだと持論を展開しています。トランプ大統領はグリーンランドを併合し、NATO加盟国が軍事費を増やせなければ米国をNATOから脱退させるという考えを示しており、大西洋を越えたNATO同盟の地位さえ危うくなっているようです。
トランプ政権の最初の数週間の不安定な状況を受けて、欧州では迅速な対応が求められています。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は、EUは「自由、民主主義、ルールに基づく秩序の推進者」であり続けるという高い志を維持していると述べました。トランプ政権のロシアおよびウクライナに対する姿勢の変化に直接的に応える形で、3月初旬に英国も参加したEUサミットでは、米国が欧州を守る意思があるとは想定しない新たな安全保障体制を欧州が構築する必要性について議論が行われました。
何よりも印象的なのは、ドイツの次期首相フリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)氏が、数十年にわたってドイツが続けてきた財政緊縮政策を突然覆し、5,000億ユーロ(2024年の名目GDPで11%以上)という巨額のインフラファンドの交渉を行い、国防費として使われるのであれば、赤字歳出に関する憲法上の「債務ブレーキ」規定を回避するという動きを見せていることです。EUが1,500億ユーロの再軍備計画を提案した後、メルツ氏はEUに対し、防衛イニシアチブの野心を拡大するよう呼びかけました。欧州の国債利回りは、ドイツのこうした姿勢の変化の大きさが認識されたこと、また、今後予定されている投資の絶対的な規模が意識されたことから、急上昇しました。
新たな投資優先事項への資金調達を支援するため、EU諸国は最終的に、その膨大な年金基金が保有する債券および株式の両方について、欧州の金融商品への投資を増やすよう奨励し、場合によっては義務付ける可能性があります。これにより、ユーロの強さが強化され、長期金利は依然としてやや高いものの、秩序ある状態が維持されるでしょう。これには大きな意味があります。
欧州とユーロについての結論:来るべき大規模な財政拡大と米ドル安の要因が相まって、今年のユーロ/米ドル(EUR/USD)は1.1500、さらには1.2000まで上昇すると見られています。また、ユーロ/英ポンド(EUR/GBP)は今年も0.8600から0.8800のレンジに戻る可能性があり、ユーロ/スイスフラン(EUR/CHF)は1ユーロ=1スイスフランを上回る可能性もあります。欧州の長期金利は上昇する見通しですが、一方で、過熱リスクは限定的である可能性があるため、ECBは比較的緩和的な政策を維持することになるでしょう。また、金利に敏感なセクターは金利上昇の影響を受け、投資の優先順位は国家安全保障の優先事項へとシフトすると見られています。欧州株はアウトパフォームし、すべての防衛関連と多くのインフラ関連は、長期的には当然としても、短期的にもある程度高く評価される可能性があります。
グラフ:ユーロ/米ドル(EUR/USD)とドイツ対米国の10年債利回りスプレッド
単一の変数要因でユーロ/米ドル(EUR /USD)の適切な為替レートを決定することはできません。しかし、ドイツと米国の10年債利回り格差は、両国の財政見通しに大きな開きがあることを示しています。トランプ氏が大統領に就任して以来、市場は米国の大幅な財政緊縮が成長と利回りにマイナスの影響を与えるとの見方を示し始めました。一方、ドイツは大規模な財政拡大を目指しており、今後数年間の成長見通しを押し上げることになります。米国10年債とドイツ10年債の利回り格差は、2024年後半の最低水準から100ベーシスポイント(bp)近く縮小しました。
中国:新たな刺激策
中国は3月初旬、国内消費を刺激することを目的とする新たな優先政策を発表し、毎年恒例の政治劇「両会」(全人代)を終えました。民間消費の拡大を通じた成長が政策の優先課題として言及されたのは、2012年に習近平国家主席が就任して以来初めてです。中国は、すでに過去最高を記録している対外貿易黒字を拡大しても、大幅な成長を達成することはできないことを認識する必要性を新たに重視しなければなりません。米国が再工業化を進め、対内投資を奨励して、1994年の人民元通貨切り下げと2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟以来、中国が追い越した工業能力の一部を取り戻そうとしている場合は特にそうでしょう。
結論:米国の「非生産的な政策の混乱」というリスクに対する中国の対応は、安定性と一貫性を保ちながら好機が来るのを待ち、米国がその危険な政策的策略に成功するか失敗するかを見極めてから、世界的な舞台でより強力な政策イニシアチブを打ち出すというものでしょう。重要な問題は、中国が消費を刺激するにあたり、購買力を高めるために、米ドルに対して自国通貨をより強制的に強化することを認めるかどうかです。その点で考えると、米ドル/中国元(USD/CNH)は今年7.00以下に戻る方向にあるのではないでしょうか?