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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
米国のアウトパフォーマンスに賭けるという安易な取引は、はるかに複雑になり、投資家は、今年初めに楽観論を煽った高成長や減税、規制緩和、AIを活用した事業拡大に対する期待を見直し始めました。このような市場の不安定性に加えて、トランプ大統領の政策や中国のDeepSeekのような破壊的なイノベーションの展開をめぐる不確実性も存在します。
最大の懸念は何でしょうか?それはアメリカの景気後退の可能性です。リアルデータでは景気の減速はまだ確認されていませんが、最近の企業・消費者調査では景気の弱さが指摘されています。さらに、世界的に異なる方向へ離れている財政状況が株式市場に変化をもたらしています。米国は財政引き締めに向かっている一方で、欧州と中国は景気刺激策を支持しています。歴史的に見ると、政府支出の削減が企業の収益を圧迫してきました。その間、関税が再度、市場のボラティリティを高め、事業計画を複雑にしています。
景気の軟化と財政引き締めにもかかわらず、「マグニフィセント7」以外の米国株は底堅く、ヘルスケア、生活必需品、エネルギーなどのディフェンシブセクターが年初来で上昇しています。しかし、AIの収益化、設備投資の不確実性、関税リスク、(国内生産を支援する)半導体法(Chips Act)による資金調達が逆風となり、巨大テック企業株はさらなる下落に直面する可能性があります。幅広く米国株式やMSCIワールド指数に連動するETFや投資信託等を幅広く保有している投資家は、長年の非対称的な利得に起因する米国のハイテク株への過剰な配分と、それがポートフォリオのリスクを高めていることを認識するかもしれません。
AIに関するテーマは拡大しており、次の波は、先行企業だけでなく、AIの早期イネーブラー(重要なインフラやソフトウェアを提供する企業)にも恩恵をもたらす可能性があります。テック企業以外では、成長が悪化し、もしくは関税を巡る懸念が高まった場合、工業製品や一般消費財、金融セクターが圧迫されるかもしれません。
こうした背景を踏まえ、投資家は、第2四半期に向けて、ボラティリティをヘッジして米国のディフェンシブ銘柄に投資を振り向けるか、国際的に分散投資して現れ始めている新しい投資機会を獲得するかの2つの戦略を考えています。
貿易上の混乱がテクノロジー、通信、素材関連企業にリスクをもたらしており、資本財・サービスセクターの企業は再工業化の追い風と関税の可能性による向かい風との綱引きの中にいます。一方で、一般消費財や金融などのセクターは、消費者需要の低迷や信用リスクに起因する景気後退の影響を受けやすいです。AIや自動化といった長期的なテーマは変わっていませんが、短期的な逆風があるため、戦術的なヘッジは不可欠です。
米国市場にとどまる投資家にとって、ディフェンシブセクターは比較的安全でしょう。政策リスクはありますが、ヘルスケア・セクターには高齢化による構造的な追い風があります。伝統的に安全資産とされてきた生活必需品セクターは、第1四半期の利益見通しの悪化や予想PERの上昇などの逆風に直面しています。公益事業は通常、債券利回りの低下で好調に推移しますが、上昇を維持するためにはFRBの追加利下げが必要になるかもしれません。したがって、ディフェンシブなセクターへの配分調整について明確な事例を作ることは依然として難しいものであり、投資先を選ぶ際に品質の重要性は高まっています。強固なバランスシート、安定したキャッシュフロー、価格決定力を持つ企業は、経済の逆風を乗り切るには有利です。低ボラティリティや高配当戦略も、不確実な環境下では魅力的でしょう。収益が安定しており、配当性向が高く、かつ市場の変動との相関性が低い企業は、ダウンサイドプロテクション(下振れリスクからの保護)と利回りを提供することができます。
成長促進に向けたトランプ政権の政策を見据える投資家にとっては、内需が堅調な小型株が、特にインフラや自動化関連の産業において上昇の可能性を与えてくれるでしょう。金融株は現在、1年後の予想利益の平均を下回る株価収益率で取引されていますが、金融およびエネルギーも同様に、規制緩和の恩恵を受ける可能性があります。しかし、政策の実施は依然として不確実であり、ヘッジ戦略の必要性は高まっています。
米国が財政引き締めに直面する中、世界の株式は魅力的な選択肢を提示しています。
欧州:欧州株は何年も低迷していましたが、支援的な経済環境をもたらす財政拡大と金融緩和の恩恵を受けて力強さを見せ始めています。ドイツのDAX指数は年初来で13%、EUのSTOXX 50指数は9%それぞれ上昇し、米国株の上昇率を上回っています。EUとNATOが防衛への取り組みを強化していることから、総支出は今後数年でGDPの約2%から3.5%に増加する可能性があり、航空宇宙・防衛産業にも恩恵をもたらす可能性があります。実際、ドイツの緊縮財政からの転換は、防衛以上にインフラとエネルギーを強化するものであり、国内エクスポージャーが高く、公共投資の増加から利益を得る立場にある中型株(MDAX)にとって有利になるかもしれません。
バリュエーションは依然として魅力的で、欧州株は米国株に比べて大幅に割安な価格で取引されています。ウクライナ戦争の解決への期待は、戦争終結でより安価なエネルギーが再び戻ってくる可能性があることから、市場の地合いを押し上げるかもしれません。ウクライナでの大規模な復興活動も長期的な成長を促進する可能性があり、世界銀行は今後十年間で最大4860億米ドルのエンジニアリング・建設プロジェクトへの投資があると見込んでいます。実際の支出がこの予測を下回ったとしても、インフラや資本財・サービスのセクターには大きな押し上げ効果をもたらすでしょう。
しかし、リスクは残っています。特にドイツの国債利回り上昇は借り入れコストを圧迫し、市場心理を圧迫する可能性があります。ウクライナの問題が解決されたとしても、その後も地政学的な不確実性が残り、投資家の信頼を失う可能性もあります。財政刺激策において実行が遅れるリスクの兆候があれば、現在の上昇相場を難しくすることがあるかもしれません。さらに、米国が欧州製品に関税を課す可能性があることから、自動車や工業製品をはじめとする輸出主導型産業にリスクをもたらす貿易上の脅威も無視できません。
懐疑派は、最近のアウトパフォーマンスは構造的な強気相場の始まりというよりも、短期的なバリューローテーションに近いものかもしれないと主張しています。しかし、強力なファンダメンタルズ要因が作用していることから、欧州の復活は注目すべき事柄でしょう。
中国:長期に渡る低迷の後、中国株(特にテック株と消費財株)は、割安な評価額、政府の景気刺激策、AIイノベーションへの期待感に後押しされ、再び関心を集め始めています。中国政府の財政赤字比率は30年以上ぶりの高水準にあり、4兆4000億人民元の地方債発行に中国政府の経済回復へのコミットメントが強く表れています。
中国のテクノロジー株は、かつては規制当局の取り締まりによって打撃を受けていましたが、現在はより安定した政策環境と、特にDeepSeekを中心としたAI開発の急増による恩恵を受けています。AIや半導体、Eコマースの大手企業には、より強い成長が見込まれており、米国の競合企業に比べて低い株価の評価額が魅力的な参入ポイントを提供していまうs。一方で、個人消費は政府の支援策に支えられ、底堅さを示しています。
しかし欧州と同様、リスクは依然として残っています。投資家の熱意が薄れ、中国の政策執行と規制環境に構造的な課題が残る場合、AIの上昇は一過性のものになる可能性があります。不動産市場は依然として脆弱であり、地政学的な緊張が外国人の投資意欲を削ぐ可能性もあります。不確実性は残るものの、中国政府が経済安定化と技術革新を引き続き重視していることから、中国のテクノロジーと消費関連セクターにおける厳選された一部の投資機会は、興味深いリスクとリターンの特性を提供するでしょう。
日本と新興国市場:日本のコーポレートガバナンス改革や収益モメンタムも引き続き重要なテーマではありますが、市場全体が円高リスクに直面しており、銘柄選定が鍵となると思われます。継続的な利上げと安定した経済の勢いは、日本の銀行セクターには有利に働きます。一方、米ドル安は、米国の景気後退の脅威が抑えられれば、新興国市場を押し上げるかもしれません。
この景気とセクターのローテーショントレードにおける最大のリスクは、米国株式市場と(米国株以外の)国際株式市場における乖離の持続です。取引を維持するためには、防衛以外の欧州市場やテクノロジー以外の中国市場でも、より広範な回復が必要になります。
S&P 500は依然として世界の指数の中で最も質が高く、利益成長の可能性も高くなっています。米国株式のバリュエーションが緩やかになっても収益の底堅さが持続すれば、世界的な多角化は逆風に直面する可能性があります。また関税が積極的に実施されれば、国際市場を混乱させ、米国以外の資産へのローテーションが予想以上に不安定になる可能性もあります。
最後になりますが、減税と規制緩和が米国の政策の焦点になれば、資本フローは米国株に戻り、市場の視点は関税から国内景気刺激策へとシフトする可能性も考えられるでしょう。