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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 原油は6か月ぶりの安値から反発し、今のところブレント原油は1バレル100ドルを超える水準まで戻り、WTI原油は80ドル台半ばまで一時的に下落した後、上昇に転じて95ドル前後で取引されています。原油相場は、ファンダメンタルズの観点からは依然として非常に強いとみられますが、市場はエネルギー市場が景気減速に対する最善のヘッジ手段を提供するわけではないと認識しているようであり、最近、原油の強気ポジションを2020年4月の安値水準まで減らした投機筋が反応するリスクが高まったと言えます。
原油は6カ月ぶりの安値から反発し、ブレント原油は100ドルを超える水準まで回復、WTI原油は80ドル台半ばまで下落した後、95ドル近辺まで上昇しました。当社の最近のレポートでは、6月以降下落傾向にあった原油価格が、テクニカルな見通しが価格を支える方向に転じ、ファンダメンタルズに関する新たな展開も支えとなり、売り疲れの兆しを見せ始めていることをお伝えしました。
ブレント原油は、12月から3月にかけての急騰の61.8%リトレースメントである1バレル94ドルのサポートラインを確認後、現在は200日単純移動平均線上で取引されており、次の重要な上昇ハードルは1バレル102.50ドルを下回るエリアとなっています。
マクロ経済の見通しは、成長見通しの低下とドル高の再燃により依然として厳しいものの、最近の原油市場の動き、すなわちミクロ動向から、反発のリスクが高まっています。欧州ではエネルギー危機が深刻化しており、ガス価格は原油換算で1バレル470ドル、電力価格は1バレル1,050ドルにまで急騰しています。最近の高騰は、ライン川の水位低下による障害や、ガスプロムが8月31日から3日間、パイプライン「ノルドストリーム1」をメンテナンスのため閉鎖すると発表したことが要因となっています。
ガスプロム(プーチン)が地政学的な理由でメンテナンス終了後もパイプラインを停止すると決定した場合、さらなる高騰のリスクが残り、それによって、既に拡大しているガスと原油の間の価格差がさらに大きくなります。このような事態は、ガスの代替となりうる燃料製品、特に軽油の需要がすでに非常に高まっている状況をさらに支えるものとなるでしょう。IEA(国際エネルギー機関)は8月の報告書で、2022年の世界の石油需要の増加幅予想を前回予想から日量38万バレル増の210万バレルに上方修正しましたが、その理由として、天然ガスから石油への切り替えを挙げています。同報告書が発表されて以来、燃料転換のインセンティブはさらに高まり、その結果、世界中で軽油の精製マージンが急上昇しており、特に欧州では今月に入ってからブレント原油と軽油(ディーゼル)のクラックス・プレッド(原油価格と石油製品価格の差)が55%も拡大しています。
原油市場では、先物市場が下落する一方で、現物市場が依然として底堅さを維持しているなか、今週、価格が上昇しました。きっかけは、サウジのエネルギー相が減産の可能性を示唆する発言をしたことでした。その発言により価格が上昇に転じた後、昨日(8月23日)のAPI(米国石油協会)の発表によりさらに上昇し、1バレル100ドルを超える上昇となりました。
このまま回復すれば、資金運用担当者は、ブレント原油とWTI原油のエクスポージャーを見直さざるをえなくなり、ショートスクイーズが発生する可能性があります。8月16日までの3週間で、これらの投機筋はブレント原油とWTI原油のグロスショートを4.3万枚増の12.5万枚とする一方でグロスロングを6.1万枚減の40.3万枚とし、ネットロングは27.8万枚と、2020年4月以降最低水準となりました。
APIが発表した週間石油在庫が560万バレル減、ガソリンと軽油の在庫が若干増加したことから、EIA(米エネルギー省エネルギー情報局)が本日発表する週刊石油・燃料在庫統計では、原油在庫が予想以上に減少するとの見方が強まっています。また、前週に過去最高を記録したガソリン需要の動向も注目されるでしょう。世界の石油精製企業がロシア産原油の購入を控えていることから、米国の輸出量は日量500万バレルにのぼっており、市場はこのペースと、前週に日量10万バレル減少した生産に回復の兆しがみられるかどうかに注目するでしょう。
EIAが発表する統計の結果については、私のツイッター(@ole_s_hansen)でご報告します。