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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 今回のアップデートは24日に、ロシアによるウクライナへの夜間攻撃により、金・銀価格が更に上昇する前に書かれたものです。本題に戻ると、この質問に対する答えは「イエス」です。2022年の見通しで予想した通り、金価格は2,000ドル突破を目指す可能性があります。リスクプレミアムは変動していますが、最近の動向を見ると、インフレ率の上昇に伴い経済成長率が鈍化すること、また中央銀行は既に織り込み済みの将来の利上げ予想に沿って進めることから、金・銀の価格は上昇する見通しが高まっていると思われます。
今回のアップデートは24日に、ロシアによるウクライナへの夜間攻撃により、金・銀価格が更に上昇する前に書かれたものです。
本文はそのままに、下のチャートとコメントを更新しました。投資家が株式市場の混乱から逃れてきたことで、米国債利回りが低下したことも、この上昇の支えとなりました。一方、ユーロ建ての金は2020年の高値付近で推移しています。これは、セーフヘブンへの需要が大きく、ドル高によるマイナスが相殺されているためです。債券がなかなか通常のセーフヘブンにならない状況の中で、今回の紛争によりインフレ率はさらに上昇するため、金・銀の需要は今後も続きそうです。加えて、各国の中央銀行は加速する景気減速と利上げとのバランスをとる必要があり、現在予想されている7回の利上げ回数が少なくなれば、金属価格はさらに支えられることになります。
言い換えれば、ロシア・ウクライナ危機により、貴金属価格が上昇するとの確信はさらに強まっています。なぜなら、貴金属が短期的なセーフヘブンになり得るというだけでなく、さらに重要なこととして、現在の緊迫した情勢がインフレ率(上昇)、成長率(低下)、中央銀行の利上げ回数の予想(減少)に影響を及ぼすことになるからです。
3週連続で上昇してきた金価格は、主要な抵抗線に達した後、地政学的な緊張がやや和らいだことを受けて一服しました。さらに、1月の安値からの130ドル上昇したことや、他の資産クラスのパフォーマンスを大幅に上回っていることからも、次の値動きを見据えた調整局面が必要でした。
最近は、ウクライナを巡る地政学的な緊張と、テクニカル面のブレイクアウトに注目するトレーダーのモメンタム投資の買いを原動力として金価格が上昇していますが、これより前は、米国の実質利回りが上昇する中で、金は数週間にわたりかろうじて下落圧力に抗っている状況でした。金価格は何度か1,800ドル割れを試す展開となりましたが、すぐにアジアの買い手や中央銀行から現物需要を伴う買いが入りました。これは、実質利回りの急上昇に注目するトレーダーやアルゴリズム取引システムによる売りを相殺するのに十分な強い買い意欲でした。
金のトレーダーは、経済成長が鈍化するリスクと株価下落リスク、さらに債券市場で高まる混乱に対してヘッジすることにますます注力しています。より積極的な利上げが実施されれば、FRBの政策失敗のリスクがさらに高まるため、金にとってはプラスとなる可能性があります。
資産運用会社とヘッジファンドは、このような金を支える動向に新たな関心を示しています。現物の裏付けのあるETFの総保有量は、昨年は920万オンス減少しましたが、今年に入ってから増加に転じ、年初来で220万オンス増加しています。レバレッジド・マネージャーやヘッジファンドはファンダメンタルズよりもモメンタムを重視することが多いため、最近の1,800ドル割れ回避や、その後の1,855ドル突破のテクニカル的なブレイクアウトを受けて関心を強めています。こうした中で、COMEX金先物の買い越しは1,260万オンスと3カ月ぶりの高水準に達しました。とはいえ、過去最高を記録した2019年の2,920万オンスはもちろん、11月のピークの1,640万オンスさえもまだ大きく下回っています。
地政学的なリスクプレミアムが20ドル程度になる可能性があることに加え、金利上昇により低下することのない数少ない要素である投入コスト、賃金、賃貸料が上昇するのに伴い、インフレ率は高止まりすると考え、我々は強気の見通しを維持しています。また、成長率の鈍化により利上げペースとその後のターミナルレートの見直しを余儀なくされる前に、中央銀行はインフレ抑制に成功するだろうという現在の市場の楽観的な見方に対するヘッジとしても、ますます金が注目されると考えられます。
金価格は、抵抗線が支持線に転換する1,923ドルの水準(2020年8月から2021年3月までの下落局面の61.8%戻し)を突破した後、1,965ドル超で一部の利益確定の売りに押され、上昇は一服しました。現時点では、RSIが80に近いことから、心理的に重要な2,000ドルの節目の突破を目指す前に、相場の調整が必要であることが示されています。
一方、銀価格は最近の上昇をさらに拡大し、23日には200日間移動平均を上回った後、24.20ドルを支持線として、11月の高値の24.70ドルを上回りました。次は、2021年の高値から安値までの50%戻しの水準である25.75ドルが多少の抵抗線になりそうです。金銀比価は1ヶ月ぶりの低水準となる77.5まで低下しており、昨年末にかけての下落分を取り戻すべく、再びアウトパフォームを目指すシグナルを示しています。