コモディティ投資家はトータルリターンを理解する必要がある

コモディティ投資家はトータルリターンを理解する必要がある

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オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  コモディティは2000年以来最高の1年を足がかりとして上昇を続けています。ここ1ヶ月間は、債券市場や株式市場が混乱する中でコモディティが好調なパフォーマンスをあげたことで、長年にわたり低調に推移していたこの資産クラスに対する投資家の関心はさらに高まっています。需給ひっ迫とインフレ圧力が引き続きコモディティセクターを支えるという見通しを踏まえると、投資家にとって、大きな逆風にも、最近のような大きな追い風にもなり得る基本的な仕組みを理解することがますます重要になっています。


コモディティセクターは、2000年以来最高の1年となった2021年の大幅な上昇を足がかりとして引き続き好調に推移しています。我々が最近発表した「Quarterly Outlook」では、2022年には物価がさらに上昇し、引き続き供給不足とインフレ圧力がコモディティのリターンを支える要因になるとの見通しを示しています。世界で脱炭素化が進むにつれ、いわゆるグリーンフレーションがますます進みます。その中で、このプロセスを支えるのに必要なコモディティの需要と価格は上昇し、非弾力的な供給により満たされるようになります。この供給の一部は、一部の投資家や銀行が採掘・掘削活動を支援することを禁じるESGなどの規制に左右されます。

このことを念頭に置いて、先物カーブがどのような兆候を示しているか、その形状がリターンや投資家の行動にどのような影響を与えるのかを詳しく見ていきます。我々は、トレーダー、投資家、アナリストとして、主に最初に取引される限月に注目し、チャートを作成する傾向があります。投資の観点から見ると、期近物の動きは先行きの一部を示すにすぎず、実現リターンはフォワードカーブの形状に非常に大きく左右されます。

上のグラフは、 期近物のパフォーマンスを追跡するBloomberg Spot Indexと、先物契約の乗り換えに伴う影響を考慮に入れたTotal Return Indexのパフォーマンスを示しています。2016年から2020年までの5年間にBloomberg Spot Index47%上昇しましたが、投資家が実現したであろう実際のリターンはわずか6%でした。代わりに過去12ヶ月間に着目すると、Bloomberg Spot Index31%の上昇、Total Return Index32.2%の上昇となっています。これら2つの指数の間の大幅なシフトを理解するためには、Bloomberg Commodity Indexが追跡しているコモディティの先物カーブに注目する必要があります。

バックワーデーション逆ざやとは

バックワーデーションとは、ある資産の直近の先物価格が先の限月の価格より高い状態のことです。即時受渡しの需要が高いために、満期が数ヶ月先の先物と比べて直近の価格が上昇し、その結果、バックワーデーションの状態になることがあります。このような動向は、市場がひっ迫し、供給見通しに関する懸念が高まっていることを示します。

ブレント原油先物の期近物は1バレル89ドル前後で取引されており、満期が先の先物ほど安くなっています。投資期間が12ヶ月あるならば、期近物を買って月単位で乗り換える方法、あるいは1年先に満期となる先物を買う方法があります。12か月間のうちに期近物の価格が変わらなければ、乗り換えのたびに小幅なディスカウントを手に入れる(満期の到来する先物を次よりも高い価格で売る)か、1年前に買った先物が値上がりするかのいずれかにより、ロングポジションのリターンは約11%のプラスになり、どちらも同じ結果になります。

2021年より前は、コモディティセクターは5年間近くにわたり十分な供給量があり、そのため、大半の先物がコンタンゴ(順ざや)の状態にありました。これはバックワーデーションとは反対に、期近物が最も安くなっている状態です。この期間中、ロングポジションではなくショートポジションを保有する投資家に有利なコンタンゴ構造により、投資家はしばしば損失を被っていました。

このような状況は20203月に一変しました。パンデミックがロックダウンと経済活動の低下を引き起こし、世界的な需要が急減したことから、原油を筆頭に多くの主要コモディティの価格が暴落しました。しかし、その後、中央銀行や政府が世界経済に対して過剰な刺激策をとることになり、それとともに世界的な景気回復が加速しました。その結果、必要とされる原材料の生産者と、その供給能力に大きな負担がかかりました。

以下に示す通り、過去1年間にファンダメンタルズが好転するとともに、エネルギー、農業、一部の工業用金属を筆頭に大半のセクターでバックワーデーションが増加してきました。エネルギーセクターでは、WTI、ブレント、ガソリン、ディーゼルで1年間の平均キャリーが12%に上昇しました。また、大豆油やパーム油など植物由来燃料の需要が高まる一方、南米の干ばつの影響で大豆の収穫量が減少していることから、最近は大豆製品も需給がひっ迫しています。最も厳しい状況にあるのは綿です。供給不足というよりもサプライチェーンの問題により、世界中の工場で綿が不足し、綿価格が高騰しています。

Bloomberg Commodity Indexに戻ると、上記の状況全てが相まって、12ヶ月加重平均ロールイールドは5.6%と過去最高水準に達しました。この利回りは基本的に、DJP:arcxCMOD:xlonDBZN:xetrAIGC:xlonなど、BCOM TR Indexと連動するETFのパッシブなロングポジションにおいて、スポット価格が変動しなければ投資家が12ヶ月間で達成できると期待できる利回り(コスト差し引き後)を反映しています。

数十億ドル規模で追跡されている最もよく知られているコモディティ指数は、Bloomberg Commodity IndexS&P GSCI、およびDBIQ Optimum Yield Diversified Commodity Index3つです。InvescoiSharesiPathWisdomTreeなどの上場投資信託運用会社は、さまざまなコモディティ指数を提供しています。

我々は、Bloomberg Commodity Indexを好んで利用し、追跡しています。同指数では、各セクターの組み入れ比率の上限を33%、単一のコモディティの組み入れ比率の上限を15%と規定されているからです。これとは対照的に、S&P GSCIでは、組み入れ比率の配分は、エネルギーが53.5%、農業が27.8%、金属がわずか18.7%となっています。

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