COT概況:ファンドはエクスポージャーを穀物から金属にシフト

COT概況:ファンドはエクスポージャーを穀物から金属にシフト

商品
オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  当社は毎週コミットメント・オブ・トレーダーズ(COT)概況を発行し、商品や通貨先物市場におけるヘッジファンドや投機筋のポジション動向をお伝えしています。本稿では、1月10日(火)までの1週間の動きを考察しますが、主に中国の経済再開、米ドル安の進行、および米国債利回りの低下を受けたリスク選好姿勢の高まりを背景に、商品先物市場では穀物セクターに幅広い売りが広がる一方、金や銅への持続的かつ力強い資金流入がその一部を相殺する流れとなりました。


サクソバンクは、コモディティ、債券、株価指数先物のレバレッジドファンドのポジションを対象とする建玉明細(COT:Commitment of Traders)の概況を毎週発行しています。通貨先物については、「非商業目的(non-commercial)」と呼ばれる総合的な指標を用います。
コミットメント・オブ・トレーダーズ(COT)レポートとは?

COTレポートは、米商品先物取引委員会(CFTC)によって公表される大口投機家の建玉明細のレポートで、ブレントの原油とガスオイルのデータはロンドン国際石油取引所が公表しています。これらのレポートは、毎週金曜日に火曜日の取引終了後に上場先物契約の建玉を集計し、各資産クラスのポジション動向をトレーダーの分類別に示したセンチメント指標として報告するものです。

商品:生産者/流通業者/加工業者/利用者、スワップディーラー、ヘッジファンドおよびその他
金融:ディーラー/仲介業; 資産運用会社/機関投資家; レバレッジ型ファンドおよびその他
為替:商業トレーダーと非商業トレーダー(投機筋)を大別

これらのトレーダーのポジション動向に注目する主な理由は、以下の通りです:

  • これらのトレーダーは厳格なストップロス・ルールを定める傾向にあり、エクスポージャーに対するヘッジを行わない
  • そのため、ファンダメンタルズ要因、またはテクニカル要因による価格変動に最も敏感に反応する
  • COTは主なポジション動向の概況を提供するだけでなく、相場が反転する兆しを捉える上で有益である

 

Financial Markets Daily Quick Take
Saxo Market Call Daily Podcast


本稿では、先週1月10日(火)までの1週間の商品および通貨先物市場におけるヘッジファンドのポジション動向を要約しました。年初の一週間は、米CPIが一段と鈍化するとの見方が広がったことで米ドル安と米国債利回りの低下が進行し、FRBによる利上げペース減速のシナリオが現実味を増す中、株式市場が総じて上昇する展開となりました。こうした市場の流れは、中国のゼロコロナ政策の撤廃に伴う経済回復や追加の景気刺激策に対する期待感と相まって、金や銅を筆頭に貴金属および工業用金属の持続的かつ力強い上昇を下支えることとなりました。

コモディティ

2023年に入り、ヘッジファンドは農業セクター全体のエクスポージャーを大きくに削減する一方、金や銅を中心に、いくつかの金属取引に資金を振り向けました。主要商品先物24種全体の買い越しは15%減の119万4千枚となり、週次ベースでは過去6カ月で最大の落ち込みとなりました。この中、商品先物全体の建玉は1,349万枚と、8週間ぶりの高水準を付け、そのうち3つのセクターでロング・ショートのいずれでもポジションが増加しました。

ブルームバーグ商品セクター指数の動きを見ると、貴金属(0.6%)と工業用金属(1.7%)の上昇分が、エネルギー(3.9%)、穀物(2.7%)、ソフトコモディティ(3%)、畜産物(1.5%)の下落によって相殺される格好となり、セクター間の全体的な値動きと一致しています。穀物セクターの建玉が8万7000枚減少した背景には、木曜の農産物需給予測月報(WASDE)を前に商品市場でトウモロコシ先物に対する買い越しが24%減の15万枚に減少したことがあります。また、ソフトコモディティセクターも軒並み売られ、買い越しが27%減の17万5000枚となった砂糖に下押しされ、建玉は全体で8万7,000枚に減少しました。

  

エネルギー:

原油先物価格は、年初の数日間で10%近く下落した後、2週連続で売り越しとなり、市場の動揺を誘いました。これを受け、WTIの買い越しの清算(1万800枚減)やブレントに空売りが入る(1万枚増)など原油先物が売られ、買い越しは全体で1万3,600枚減少しました。天然ガス先物価格も9%安と引き続き下落し、2021年9月以来の安値を付けました。これを受けて、ヘンリーハブ天然ガス先物の受渡決済型の先物・スワップ4種の売り越しは35%増の976万枚と、2020年3月以来の高水準に積み上がりました。

金属:

前週に続いて投機筋は2週連続で金と銅に資金を振り向ける動きを継続し、いずれも昨年11月初旬からの堅調なモメンタムを背景にロングポジションが順調に積み上がりました。こうした中、金の買い越しは8万2,600枚と8ヶ月ぶりの高水準に達し、6週連続の買い越しで買い建玉は約3倍に拡大しました。

一方、銅が複数の上値抵抗線をクリアし上昇を続ける中、過去数ヶ月間にわたって金属のショートポジションを積み上げていたファンドがポジションの巻き戻しを余儀なくされたことによる反動で、銅の買いが加速しました。ロングを積み増す一方、ショートを削減する動きが強まり、買い越しは2万500枚から一気に2万8,800枚に拡大し、9カ月ぶりの高水準を付けました。

穀物:

木曜の農産物需給予測月報(WASDE)が強気な見通しを示す前に、投機筋は相場が2.3%下落したことで方向性を見誤った結果、穀物の買い越しは24%減の14万9,600枚に減少しました。主要穀物のトウモロコシ、大豆、小麦はいずれも買い越しとなり、特に小麦は黒海小麦の業者による競争の煽りを受けて売り越しが増加し、6%下落しました。これを受け、CBOT(シカゴ商品取引所)の小麦先物は買い越しが増加し、KCBT(カンザスシティー商品取引所)の小麦先物も2020年8月以来で初めて売り越しに転じました。ソフトコモディティでは、砂糖のロングポジションが27%減少する中でコーヒーは一段と下落し、週次ベースで9.3%安と17カ月ぶりの安値を付けました。この結果、売り越し幅は3万枚に拡大(154%増)し、2019年11月以来の最大の売り優勢の展開となりました。

通貨:

過去1週間にわたり、米ドルは日本円を除く大半の主要通貨に対して弱含みましたが、投機筋は9つのシカゴIMM通貨先物ポジションとドル指数に対するドルのショートポジションの積み増しを47億ドル(9%)にとどめました。通貨先物市場では、日本円をはじめユーロ、豪ドルの買い越しが、スイスフラン、英ポンド、カナダドルの売り越しによって相殺される格好となり、資金の流れは極めて入り混じった展開となりました。

今週に入り、日本円は日銀の金融政策決定会合を前に3%以上上昇し、ここ数週間で急減したものの、足元の日本円のショートポジションは34億ドル相当に達しており、ドルを除き日本円は主要通貨の中で最も大きくショートされている通貨となっています。一方、カナダドルはドルとの相関性が高いこともあり苦戦しており、対ドルで1.8%上昇したにもかかわらず、買い越し額は29ヶ月ぶりの高水準に達しています。一方、ドル指数の買い越し額は17ヶ月ぶりの低水準に落ち込みました。

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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
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