タカ派のパウエル議長による金と銀への打撃

タカ派のパウエル議長による金と銀への打撃

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オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  パウエルFRB議長が昨日(11月2日)、FRBは近いうちに利上げペースを緩やかにする方向に政策転換する可能性はあるが、利上げの一時停止は「時期尚早」であるとの考えを示し、市場全体のセンチメントに打撃を与えたことから、金と銀は急落しました。ドルと米国債利回りが急上昇しているため、金と銀は再び下落トレンドに向かうリスクがあり、特に金のトレーダーは1615ドル付近を注視しています。


サクソのデイリーのFinancial Markets Quick Takeはこちら:Quick Take
Podcast:「The FOM pulls off a hawkish pivot(FOMCはタカ派的な方向性を示す)」も併せてご覧ください。


 
パウエルFRB議長が昨日(11月2日)、FRBは近いうちに利上げペースを緩やかにする方向に政策転換する可能性はあるが、利上げの一時停止は「時期尚早」であるとの考えを示し、市場全体のセンチメントに打撃を与えたことから、金と銀は急落しました。この発言は、このサイクルで4回連続となる75ベーシスポイントの利上げを決定した際、FOMCが「金融引き締めの累積的」効果を考慮するために利上げを一旦停止する見通しに関する誤解に対してなされたものでした。

当社のデイリーのFinancial Markets Quick Takeで、FX戦略責任者のジョン・ハーディは、パウエルFRB議長は記者会見で利上げはまだ「道半ば」で、今後のデータに基づきFRBが到達する「最終的な水準」は9月の会合で考えられていたより高い水準になる可能性が高いと明言し、はるかにタカ派的な姿勢を示した、と解説しています。このため、FRBが予想する来年春の金利は、サイクルの最高水準である5.00%に近づきつつあり、さらに10ベーシスポイント高い5.10%近辺でこの日の取引が終了しました。

パウエル議長は、早ければ12月の会合で利上げ幅を縮小する可能性があると述べましたが、FOMCでは利上げのスピードは「あまり重要ではなくなってきている」と感じているとしています(市場では、データの裏付けがあればFRBは会合のたびに利上げを続けると推測されています)。また、FRBが量的引き締めのペースを上げていることも考慮する必要があります。これは市場に引き締め圧力を与え、1年間で数百ベーシスポイントの利上げに相当します。

貴金属相場を左右する最も重要な材料のひとつであるドルは、昨日は弱含みで推移しており、会議を控えたセンチメントを支えていましたが、パウエル議長の記者会見で再び急上昇し、ほぼ全面的にドル高の力強い反転パターンを示しました。特にユーロは重要な0.9876-0.9850エリアに下落し、ドル円は145.00円の支持線をクリアした後、147.00円台までドル高が進みました。
短期的には、米国債利回りとドルが上昇するとの見方から、投機筋が再びショートポジションをとり、金は難しい展開となる可能性があります。もっとも、幾つかの支持材料もあります。利上げと経済への影響との間にタイムラグがあるため経済データが軟化し始めるリスクや、2-10年スプレッドが-50bpを下回る、サイクルにおいて最も大きな逆イールドに向かっていること、それが、中央銀行がインフレ抑制に成功しないまま成長率の低下を招く政策の失敗を示唆しているとの見方などです。

サクソでは、今後10年間のインフレ率が4%から5%の範囲にあることは、決して異常なことではないという長期的な見方をしています。世界が2つに分かれ、自立と再軍備の必要性から、脱グローバリズムを中心に全てが進展するという新たな地政学的状況の下、またエネルギー転換が進む中、私たちは商品・資本集約的な10年を迎えようとしています。そうした中、原材料と労働力の不足により、インフレが長期化し、現在のスワップ市場を通じて示されている3%のレベルよりも高い水準で推移することになるでしょう。

金の短期的なテクニカル予想

現在、2020年と2022年のピークに基づくダブルトップのパターンとなっており、日足が1614ドルを下回ると、2018年から2022年の上昇のリトレースメント0.618の1510ドルに向けてさらに売りが加速する可能性があります。このような下降懸念を払拭するには、現段階で1735ドルを上抜けする必要があります。
Source: Saxo Group

銀の短期的なテクニカル予想

銀は、週明けに再び20ドルの抵抗線に阻まれ、再び下降トレンドに向かっている可能性があります。現在は上昇トレンドラインを支持線とする18.33ドルの水準にありますが、この水準を下抜けして大きく売られると、次は16.95ドルが目安となる可能性があります。このような短期的なリスクを排除するためには、再び20ドルを上回り、終値を更新する必要があるでしょう。
 
Source: Saxo Group

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