エネルギーコストの高騰が食糧価格上昇に追い打ち

エネルギーコストの高騰が食糧価格上昇に追い打ち

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オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  世界の食糧価格は1月に反発し、広く注目されている国連食糧農業機関(FAO)の食糧価格指数は11年ぶりの高値に達しました。前年同月比の上昇率は19.5%に鈍化したものの、農業セクターを支える基調は依然として堅調です。パンデミック後の成長の加速、作物の生育困難な天候、サプライチェーンの混乱、労働力不足といった原因に加えて、原油とガスの値上がりによりコストと供給量が打撃を受けるなど、エネルギー価格の高騰による影響もますます大きくなっています。


国連食糧農業機関(FAO)の食糧価格指数によると、世界の食糧価格は12月に小幅に下落した後、1月には反発しました。同指数は、世界で取引されている、5つのカテゴリーに分類される食糧コモディティ95種から成るバスケットを追跡するものです。同指数は11年ぶりの高値を付けました。これは、「アラブの春」の引き金となった穀物価格の高騰が起こった20112月の水準に迫っています。

過去1年間の食糧価格の上昇の背景には、パンデミック後の景気回復による需要増加、天候不順、ラニーニョ現象による翌シーズンの生産中断の見通し、新型コロナの流行によるサプライチェーンの問題、人手不足、そして最近では肥料価格の高騰やディーゼルなどの燃料コストの上昇による生産コストの上昇といった複合的な要因があります。

しかし、世界的なインフレ率の点から見ると、ベース効果により、前年同月比の上昇率は20215月の40%から19.5%に低下しました。

上のFAOのグラフおよび下の主要先物の年初来のパフォーマンスから分かる通り、最近の価格上昇の原動力となっているのは植物油と乳製品であり、砂糖は一定期間の売りを経て同指数に及ぼす影響が低下しています。一方、穀物の価格は安定的に推移しました。ロシアによるウクライナ国境への攻撃が紛争にまで悪化した場合、黒海周辺地域からの供給への影響に関する懸念が高まるにも関わらず、1月には世界の小麦価格は反落しました。世界的に高品質の小麦の供給が不足する中で旺盛な需要が続き、価格は引き続き下支えされていますが、季節的要因によりオーストラリアとアルゼンチンの収穫量が大幅に増加したことで相殺されました。

Source: Saxo Group

ここ数ヶ月間、大きな注目を集めている食糧コモディティは植物油です。シカゴの大豆油先物とマレーシアのパーム油先物はともに大幅に上昇し、パフォーマンスのトップに躍り出ました。

大豆油先物(ZLH 2)とCFDSOYBEANOILMAR 22)の主導で大豆製品が値上がりしています。悪天候によりブラジルの収穫高予想の引き下げが続いていることから、全般的な価格が下支えされている状況です。当初の予想では2021年~2022年のシーズン中の生産量は約14,500万トンとされていましたが、現在のアナリスト予想では、最終的な生産量は12,500万トン近くになると見られています。また、世界最大の大豆製品輸出国であるアルゼンチンの政情が不安定なことや、原油高が続く中で植物由来燃料の需要が増加していることも背景にあります。

しかし、原油とパーム油の価格が出荷が鈍化し始める水準に達し、(一時的な)調整局面に入るリスクが高まる中、シカゴで大豆先物の直近限月(先物ティッカー:ZSH 2)の価格が7ヶ月ぶりの高値を付けたことを受けて、トレーダーがある程度の利益を確定するため、大豆価格は短期的には下落に向かう可能性があります。

過去1年間に2倍に値上がりしたアラビカコーヒーなど、その他の市場は、ここ2ヶ月間横ばいで推移してきた後、大きくブレイクする態勢が整っています。しかし、チャート上の三角持ち合いからははっきり分かりませんが、基礎的なファンダメンタルズや、ICE取引所が監視する倉庫在庫の持続的な減少を踏まえると、現在は上方へのブレイクのリスクが最も大きくなっています。

次の大きな課題:肥料コストの高騰

高水準にある原油価格が今後数四半期にわたりさらに上昇するという見通しは、植物由来燃料の需要を支えると見られます。一方、欧州におけるガス価格の上昇が肥料の供給量と価格に及ぼす影響は、農家にとって次の大きな課題となり、最終的には2022年中に消費者が直面する可能性があります。

天然ガスが高騰する中で、硝酸アンモニウムの価格は過去1年で4倍に上昇しました。天然ガスは、アンモニアと尿素という2種類の窒素ベースの肥料の生産原料として一般的に使われています。実際、このような肥料の生産コストのうち75%90%は天然ガスに由来します。EUTTF基準のガス価格が急騰したことを受けて、欧州の複数の肥料会社が減産を発表しました。

さらに、予想された通り、ロシアは今週、国内の播種シーズン中に供給が十分に行き渡るように、硝酸アンモニウムの輸出を2ヶ月間禁止することを発表しました。ロシアは年間生産量約1,100万トンのうち約40%を占める世界最大の輸出国の1つであることから、その影響は大きいと見られます。欧州だけでなく、高品質の小麦、トウモロコシ、食用油の主要生産国であるウクライナも影響を受けるはずです。

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