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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 米国実質利回りが上昇する中、金価格は重力に抗し続け、これまでのところ1,800ドルを下回る局面では必ず新たな買いが即座に入っています。ヘッドラインが示唆する通り、金に対する新たな需要の一部はインフレへのヘッジを求める投資家によるものであり、中央銀行がインフレ抑え込みに成功するとの現在の楽観的な見方によるものではないと考えています。これに加えて、このところの債券・株式相場の混乱およびコモディティ全般への強い投資需要があります。
米国実質利回りが上昇する中、金価格は重力に抗し続け、これまでのところ1,800ドルを下回る局面では必ず新たな買いが即座に入っています。直近かつ最大の試練は1月のFOMCミーティング後に起こり、驚くほどタカ派的なトーンにより金価格は急落しましたが、その後着実に値を戻し、年初来で変わりがない水準まで戻しました。金価格は過去2年間に平均21.7%上昇した後、2021年には小幅な下落となりました。金が下落した原因は、株式相場の上昇と低ボラティリティを背景に、資産運用会社による手じまい売りが生じたこと、また、インフレ率の上昇は一過性にすぎず、経済成長や価格の安定性を長期的に脅かすことはないと信じられていたことでした。
2021年末にかけてFRBで大きな変化が起こりました。もしPowell氏のチームがFRBトップの座を望むならば、数百万人の失業者の就職を支援する便宜を最大化することに焦点を当てるのではなく、FRBによるインフレ放置により実質的に毎月給与が下がっている1億5,000万人の就業中のアメリカ人に焦点を当てるべきだということを、Biden大統領チームがおそらく明らかにしたことがきっかけでした。Powell議長とBrainard氏(次期副議長)はともにこれに強く応じ、発言がタカ派へとシフトしたのに伴い、市場は2022年中に5回以上となる、矢継ぎ早の利上げを織り込み、米国10年債利回りは急上昇しました。
その後、金利および米ドルの水準に最も敏感なコモディティである金は、米国実質利回りの0.6%上昇に持ちこたえています。多少の買い支えとなっている現在の地政学的な懸念を別にして、他にいくつかの要因が浮上しつつあります。そのうちいくつかを以下に示します。
ここ数か月間、金は実質利回りの上昇から影響を受けにくくなっており、代わりに投資家は経済成長が鈍化するリスクと株価下落リスク、さらに債券市場で高まる混乱に対してヘッジすることに注力しています。より積極的な利上げが実施されれば、景気後退リスクが高まり、FRBの政策失敗のリスクがさらに高まるため、金にとってはプラスとなる可能性があります。
金利上昇の影響で株式・債券相場が乱高下する中で、「インフレヘッジ」や「ディフェンシブ資産」としての金の性質が改めて注目されています。同時に、投入コストの上昇と賃金・賃料上昇という要素は金利上昇により低下しない可能性があり、インフレ率の上昇は続くと考えています。これを念頭に、金は、中央銀行はインフレをうまく抑え込めるとの市場の現在の楽観的な見方に対するヘッジとして見なされるようになっています。
コモディティセクターは昨年新たな力強さを見せました。多くの個々のコモディティを支える強固なファンダメンタルズに加えて、コモディティの中には、需要増加と非弾力的供給との不釣り合いが長引くものもあるはずです。世界で最もモニターされているコモディティインデックスの中には、金がエクスポージャーの5~15%を占めるものもあるため、コモディティセクター全般へのエクスポージャーに対する需要が高まれば、自動的に金の需要も高まることになります。
下のETFのチャートが示すように、資産運用会社の投資意欲が上向く兆候が見られますが、ファンダメンタルズよりもモメンタムに重点を置くことが多いレバレッジをかけたマネーマネジャーの関心が高まるような値動きにはまだなっていません。2月1日までの1週間では、COMEX金先物のネット・ロングはわずか62,500ロット、つまり650万オンスで、過去最高となった2019年の水準を約78%下回っています。モメンタムに注目するマネーマネジャーは値上がり局面では買い、値下げ局面では売りを入れる傾向があります。また、レバレッジをかけたアカウントから一段の需要を惹きつけるためには、金価格は最低でも2020年から2021年にかけての修正局面の50%の綾戻しであり、2021年の高値でもある1,876ドルを超えて上昇する必要があります。反対に、1,750ドル以上を維持できない場合は一段の修正局面に入る可能性があります。