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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 原油は、全般的なリスク選好度の改善と、今後数か月間の燃料製品の供給力と価格に対する市場の懸念に支えられて3日続伸しました。OPECプラスの減産により留出油収率の高い原油が減少していること、EUのロシア産原油の禁輸措置、および世界の製油所の生産能力が旺盛な需要に対応できていないことが、製油所マージンおよびプロンプト・スプレッド(当限月と来限月の価格差)を急拡大させ、軽油および灯油の冬の高騰を示唆する要因となっています。
原油は3日続伸しました。FOMCが来週にも75ベーシス利上げを実施した後、その経済への効果を見極めるために積極的な利上げペースを緩めるのではないかとの観測が強まり、ドルや米国債利回りが軟調に推移、リスク選好度が全般的に改善したことが支えとなりました。また、OPECプラスによる減産やEUによるロシア産原油・燃料の輸入禁止が始まる今後数か月間の燃料製品の入手可能性と価格について、市場は引き続き懸念しています。
原油は7月以降ほぼレンジ内で推移していますが、燃料油の市況は、欧米での供給不足が深刻化し、ガソリン、特に軽油、暖房油、ジェット燃料などの留出油の精製マージンが上昇し、タイトな状態が続いています。しかし、中国が最近、新型コロナウイルスに対するロックダウンと不動産市況の悪化で打撃を受けた経済復興のため、石油精製製品の輸出割当枠を増やし今年最大としたことで、若干緩和しました。この動きは、中国の需要の減速を浮き彫りにしただけでなく、精製活動がいかに驚くべき収益性を持つようになったかを示しています。しかし、これまでのところ、欧米の先物市場は、中国からの追加供給による緩和の兆しを反映しておらず、アジアの消費者が最も恩恵を受ける可能性があります。
逼迫感という点での焦点は、軽油や灯油の在庫の少なさが引き続き懸念される北半球の市場です。ウクライナ戦争と、特に欧州向け精製品の主要供給国であるロシアに対する制裁措置により、市場は根底から覆されました。さらに、ガス料金の高騰は、ガスから他の燃料、特に軽油や灯油への切り替えの活発化を促しています。このような逼迫した市況は、OPECプラスが来月からの減産を決定したことにより、さらに悪化しました。米国産(ライトスイート)原油が引き続き戦略備蓄から放出され、ガソリンの生産を支えることになりますが、OPECプラスの減産は主に、留出油の生産量が最も多い中・重質原油を生産するサウジアラビア、クウェートおよびUAEによって提供される予定です。
現在の需給逼迫は、製油所のクラック・スプレッド(原油価格と石油製品価格の差)の拡大とプロンプト・スプレッド(当限月と来限月の価格差)の急拡大に反映されており、後者は北半球の冬に状況が悪化する可能性があることを示しています。例えば、Nymex ULSD(灯油)契約では、11月がバレル当たり410ドルと高いものの、翌月12月を45ドル(11%)ほど下回る価格で取引されています。
製品市場がこのように逼迫している限り、原油価格が下落する可能性は低いと思われます。特に米国では、いくつかの製油所が現在メンテナンス中であり、輸出が記録的なペースで推移している中で、在庫がさらに枯渇しています。昨日、EIAは米国の原油輸出量が日量510万バレルと、週間ベースで過去最高を記録し、石油および燃料製品全体の出荷量を日量1,140万バレルまで増加させることに寄与したと発表しました。米国政府は戦略的備蓄から原油を市場に供給し続けていますが、新たな事態が起きています。来月の中間選挙を前に、米国政府は政治的な動機に基づく戦略を取っており、これは将来の危機対応能力を低下させるだけでなく、米国の消費者が確保するガソリンや軽油の価格を抑制することが出来ないという点で、短期的にも重要な課題となります。