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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: コモディティ市場では、供給途絶の背景にあるものと、長期化する中国のロックダウンが成長を阻害していることによる需要低下のリスクが、1980年代以来のインフレ水準に立ち向かう中央銀行の取り組みと並び、入れ替わり立ち代わり焦点となっています。後者だけが唯一の焦点であれば、コモディティのピークは近いと思われますが、同じように逼迫する供給サイドが、コモディティセクターを長期に渡って下支えすると見ています。
成長率と雇用統計は最近非常に好調ですが、今後数ヶ月の間に、高止まりするインフレと金利上昇によって間違いなくマイナスの影響を受け始めるでしょう。もし、それだけがコモディティの焦点であれば、今頃はピークを迎えており、今後数ヶ月の間に価格の下落が予想されるかもしれません。しかし、供給は需要と同等かそれ以上に逼迫すると思われるため、コモディティは引き続き下支えされると考えています。ウクライナに平和が戻ったとしても、今や国際的にほぼ孤立状態であるロシアに対する制裁がなくなることはないでしょう。
同国はエネルギーから金属、農業に至るまで世界第二位の輸出大国であるため、世界中の消費者や産業界は、必要な原材料の調達に引き続き苦労するでしょう。さらに、BHP、Vale、Rio Tinto、Anglo American などの大手鉱山会社が最近発表した第1四半期の低調な取引は、鉄鋼、ディーゼル、労働などあらゆるコストの上昇、社会不安、天候不順といった課題に直面していることを浮き彫りにしています。いずれも生産が期待に応えられない要因となっています。
例えば、銅はレンジ相場が続いており、短期的な需要見通しは悪化し、指定倉庫の在庫は過去四週間で増加していますが、見通しでは価格支持の姿勢を維持すると考えています。石油やガスの依存度を減らし、ロシアを孤立させようとする動きは、大量の銅を必要とする世界の電化を加速させるでしょう。
戦争が長引き、戦闘が一時的に沈静化する中で、市場の関心は需要減少というテーマに移っています。現在、このテーマの原動力となっているのは、いくつかの短期的な動向と、それより多くの長期的な動向です。これに関して最も顕著なのは原油であり、原油価格はウクライナ侵攻後の上昇分の大半を解消しました。中国での新型コロナの感染拡大、戦略石油備蓄の放出、米国FRBによるタカ派的な方針転換により、経済成長と需要に関する懸念が高まっていることに焦点が移りつつあります。
高水準かつ上昇傾向にあるインフレ率を抑制しようと、FRBが利上げペースを速める見通しを示したことを受けて、来年、米国が景気後退に陥る可能性が最近一部のアナリストから示されました。市場では、今後10ヶ月間に25ベーシスポイントの利上げを10回近く実施することが既に織り込まれていますが、セントルイス地区連銀のブラード総裁はさらに速いペースでの利上げを求めています。それに加え、FRBは5月から積極的なバランスシート縮小を開始する予定であり、流動性の低下によって、さらに3~4回の25ベーシスポイントの利上げと同じ効果がある見込みです。世界の銅の25%を供給するチリはここ数ヶ月、生産が低迷しており、新たに選出された政府内で「反鉱業」感情が芽生えていることから、生産の維持や増加の見通しは不透明な状況にあるようです。また、チリでは干ばつが十三年続いており、水不足は水を大量消費する銅の生産工程に大きな影響を与えています。さらに、人による水の消費を優先する政府の法案が提出されており、これが可決されれば、投資判断が遅れるだけでなく、鉱山会社が海水淡水化設備への投資を迫られ、生産コストがさらに上昇する可能性があります。
原油は、ブレントで107ドル、WTIで102.5ドル前後の狭いレンジでの取引が続いています。しかし、リビア供給障害やロシア警告は、戦略的備蓄の放出と、主要都市で発生した新型コロナウィルスの感染対策を強化する中国における需要減で相殺されており、市場は決して平穏ではありません。また、米国FRBがインフレ抑制のために積極的な引き締め姿勢を示していることから、市場は成長への警戒感を強めており、その過程で成長率、ひいては原油需要も減少する可能性が高いでしょう。米国の精油マージンは今週初めに過去最高を更新しましたが、その後10%以上も下落しまました。これは、ロシアからの供給が減少し、ディーゼルやガソリンなどの主要燃料の供給が逼迫しているため、世界の消費者が高い価格を支払わざるを得ない状況を反映しています。
来週は、エクソンモービル、トータルエナジーズ、シェブロンといった石油スーパーメジャーの決算が注目されます。市場は、目を見張るような利益を上げることとは別に、増産見通しやウクライナ戦争の影響、物価上昇による需要破壊、金融引き締めなどをどう見るかが注目されます。
戦争は続いており、追加的な制裁やロシアによる行動のリスクがあることから、原油価格の下落リスクは依然として限定的だと思われます。最近発表した当社の「 Quarterly Outlook(四半期見通し)」では、今四半期は原油価格が90ドル~120ドルのレンジ内で推移する可能性がある理由と、今後数年間にわたり構造的な問題(最も重要なのは投資不足の水準が続いていること)が価格の下支えとなる理由について取り上げました。
先週、金と銀の価格は、金が比較的堅調に推移する一方で、銀には新たな売り圧力がかかり、市場に影響を及ぼしている現在の要因をよく表していました。 最近の金価格の低迷にもかかわらず、金は、インフレ率の上昇、成長率の低下、地政学的な不確実性、株式や特に債券のボラティリティの高止まりに対するヘッジを求めるアセットマネージャーからの需要を引き続き引き寄せています。
先週、市場は再び米国の利上げ期待高め、FRBは三回連続で0.5ポイントとなるとの見通しを示しました。1980年代初頭以来の急速な引き締めペースで、12月までに金利が2.5%上昇する可能性があります。
こうした圧力に耐えられる金の能力は、市場が世界最大の経済大国を景気低迷に陥れる政策ミスに対するヘッジを見出そうとするためと見られています。しかし、これまでのところ、現在の米国の決算は、企業がコスト上昇を転嫁し、利益率を維持できることを示しています。
戦争と制裁、そして全般的供給不足のために投入価格が高騰し続けるなか、需要減速だけがインフレを抑制できます。金銀比率が二ヶ月ぶりに80を超え、準工業用である銀のパフォーマンスは振るいませんでした。一方、資産運用会社が現在の弱気な状況下でも保有資産の蓄積を続けているため、資産担保ETFの総保有量は十四ヶ月ぶりの高水準となりました。さらに、金と米国の10年物実質利回りの相関関係が最近崩れてきているにもかかわらず、小売と中央銀行の強い需要の兆しが金価格を下支えする可能性が高く、この指数だけで見ると金は割高であることを示しています。
最近発表した当社の「Quarterly Outlook(四半期見通し)」で、金が上昇し、最終的には今年後半に過去最高値を更新する見通しである理由を取り上げています。
欧州のガス価格は、春と温暖な気候で需要が減少したため、今月に入って勢いを失い、スポットガス価格がウクライナにおける戦争が始まって以来の最低水準になりました。ロシアからの供給減、そして季節メンテナンスによるノルウェーからの流入減少は、底堅いLNG出荷と春先の暖かさによって相殺されました。その結果、大陸全体の貯蔵量は昨年よりほぼ一ヶ月早く積み上がり始めました。欧州がロシア産ガスへの依存度を下げる取り組みを強化するなか、こうした動きに安堵の声が上がっていますが、この計画が成功するまでには、長く、非常にコストのかかる道のりが待ち受けています。短期的には、今月末が支払期限であるロシアのルーブル決済のガス発注に対する欧州の買い手の反発が市場にとって引き続き懸念材料です。
オランダのTTF基準の前月ガス価格は100ユーロ/MWh程度にまで下落しましたが、依然として長期平均の6倍であり、10月から来年3月までの冬のガス確保コストはほぼ同じ水準で高止まりしています。つまり、夏の安い時期にガスを買って貯蔵し、冬の需要ピーク時に高値で売るという、通常の採算の取れる取引は、現在機能していないのです。ストック構築のスピードにどのような影響を与えるかは、依然として不透明です。
一方、前月の米国ヘンリーハブの天然ガス契約は、イースター前後に十三年ぶりの高値となる8ドル/MMBtu (欧州通貨建て25ユーロ/MWh) を上回りましたが、その後、テクニカルな売りに押されて現在の7ドル/MMBtuにまで下落しました。米国政府が欧州への輸出増を公約していることを考慮すると、旺盛な国内および輸出需要と石炭不足が試されています。これまでのところ、大幅な生産増が見られず、在庫は季節平均を約17%下回っています。