コモディティ市場:金と銅に続きエネルギー製品も上昇相場入り

コモディティ市場:金と銅に続きエネルギー製品も上昇相場入り

商品
オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  ブルームバーグ商品指数は工業用金属、原油、エネルギー製品が総じて上昇相場を維持したことが寄与し、前週に続き上昇して取引を終えました。中国経済の先行き見通しの改善が商品価格の上昇を牽引したものの、天然ガスや小麦価格が温暖な気候と十分な収穫量により下押しされたことで、その一部を相殺しました。本稿では、投資家がどのようにエクスポージャーを取るべきかを考えたいと思います。


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ブルームバーグ商品指数は工業用金属、原油、エネルギー製品が総じて上昇相場を維持したことが寄与し、前週に続き上昇して取引を終えました。中国経済の先行き見通しの改善が商品価格の上昇を牽引したものの、天然ガスや小麦価格が温暖な気候と十分な収穫量により下押しされたことで、その一部を相殺しました。本稿では、投資家がどのようにエクスポージャーを取るべきかを考えたいと思います。

商品市場のセンチメントが総じて改善している背景には、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が1.6%下落し、米10年国債利回りが0.4%低下するなど、米国のインフレ率鈍化を受けたドル安進行や米国債利回りの低下があります。足元のインフレ鈍化はFRBが引締めペースをさらに減速し、あともう一仕事、つまり0.25%の利上げを終えてからの利上げ停止を正当化する要因となっているようです。加えて、主権国家としてのウクライナを抑圧し、圧力を強めるプーチンに西側諸国が抵抗を続ける悲惨な状況に改善の兆しは見られず、いまだに主要なコモディティのグローバルサプライチェーンに大きな混乱を引き起こしています。特にエネルギーセクターでは、既に実行されている原油の禁輸措置の範囲がその他のエネルギー製品に拡大し、2月5日まで延長されるため、ロシアの供給にこれまで以上に大きな影響を及ぼす可能性が懸念されます。

しかしながら、中国の経済再開が、資源の最大の買い手となっている国々の需要回復を促すとの期待感の高まりは、商品セクターのセンチメント改善に最も寄与する要因となっています。一方、中国経済の本格的な回復は旧正月以降になる見通しの中、生産活動が目先減速するとの見方が足元の上昇相場に水を差す可能性も考えられます。なかでも年初来で11%の上昇を遂げた銅をはじめとする工業用金属は、第2四半期に向けて一段のモメンタム上昇や底堅さを取り戻すまで、一時的に伸び悩む可能性があります。

エネルギー製品の需要拡大で原油のモメンタムは回復

原油は前週に続いて続伸し、年初の数日間の下落分を完全に取り戻す格好となりました。中国の原油需要の回復期待に加えて、特にエネルギー製品の強い需要が価格を下支えしています。ロシアによる石油製品の禁輸措置の施行が2月5日に迫る中、ガソリンとディーゼルは2カ月ぶりの高値水準で取引されています。また、12月下旬に米国を襲った寒波の影響で、石油精製所の生産活動に引き続き遅れが生じています。

また、中国のコロナ感染者数がピークに達したとの報告を受けて、旧正月の休暇後に需要が持続的に回復するとの楽観的な見方をさらに後押ししています。米新規失業保険申請件数が労働市場は依然タイトであり、世界最大のエネルギー消費国である米国がリセッション入りするリスクは後退したとの見方を支えていることも、世界的な需要拡大に対する期待感を押し上げる要因となりました。一方、米国の原油輸出量が急速に拡大する中で年初の1週間は戦略石油備蓄(SPR)の放出が行われなかったにも関わらず、原油在庫は840バレルに跳ね上がりました。これは、12月下旬の寒波の影響で石油生産施設や製油所の操業停止が相次いだことによるものです。

石油輸出国機構(OPEC)と国際エネルギー機関(IEA)は月例報告でまちまちの見通しを示しましたが、いずれも今年は中国が世界的な原油需要の拡大を牽引すると言及しています。IEAは、2023年の世界の石油需要は前年比約190万バレル増の日量約1億170万バレルに拡大すると予想し、そのうちの半分は経済再開に伴う中国からの需要増によるものとしました。また、米国、カナダ、ブラジルが牽引する非 OPEC 石油生産は、全体で前年比日量190万バレル増を見込む一方、ロシア減産に伴うOPEC加盟国の生産量の減少(日量870万バレル)が、その一部を相殺するとの見通しを示しました。

ブレント原油は、下値支持線として意識される50日移動平均の83.77ドルから反発したことで、87ドルを上回って今週の取引を終えれば、その後一段と上昇する可能性があります。足元81ドルを付けているWTIについても同様の展開が期待できます。

銀が苦戦する中、金は続伸

銀相場の上昇が失速する一方、金は引き続き勢いを保っています。金は3日続落した後1,896を下値支持線として意識しつつ、米国債利回りと米ドルは現サイクルで最も低いレベルで推移する中、1,835ドルと8ヶ月ぶりの高値まで一気に上昇しました。利回り低下とドル安という2つの要因がモメンタムや自動売買の戦略が台頭し軟調な相場展開が続く限り、今後も金を下支えする公算が大きいと考えられます。しかし、ETF投資家の関心は依然低く、保有総額は過去2年 間で最低の水準にとどまっており、過去2ヶ月間の上昇局面で も上昇する気配はない。一方、金ETFの現物保有量が引き続き2年ぶりの低水準にとどまり、過去2か月間にわたる金の上昇局面においても回復の兆しは見られていません。  

今週は、米国のFF金利と金価格の動向が特に目を引きました(下図)。この図は、過去20年間の米国の政策金利がピーク(3回)に達した後、金相場が数ヶ月および数四半期にわたって強く反応したことを示しています。現在、市場では、FRBが5%を下回る水準で利上げを一旦停止する前に、さらに1~2回の利上げに踏み切るものと予想されています。

歴史が繰り返すならば、金には一段の上昇余地があると予想されます。特に、昨年のドル高と利回り上昇という逆風が一転してドル安と利回り低下というサポート要因となっていることを踏まえれば、なおさらその可能性は高いでしょう。さらに、中央銀行からの持続的な購入量の拡大や、機関投資家の参入が見込まることなども、金を強力に下支えする潜在的要因となっています。しかし、短期的には調整リスクも高まりつつあり、現在の下値支持線である1,895ドルを一旦下回れば、足元1,861ドルの21日移動平均を意識しつつ、下値を切り下げる展開が予想されます。

は、中国の経済再開に伴う需要回復を巡る供給懸念に支えられ、5週連続で上昇する見通しです。ペルーでの抗議運動は、世界の銅生産量の約2%を占める2つの鉱山からの供給を脅かしており。市場の在庫水準は低い水準にある一方、中国経済の回復やエネルギー転換の進展に伴う需要拡大が見込まれています。ただし、11%上昇した後、中国が旧正月を迎え、アジアで平和、繁栄、長寿を象徴する卯年の到来を祝って工場を閉鎖する向こう数週間の間に、一時的に調整する場面もあるかもしれません。

コモディティのエクスポージャーを保有する手段とは?

コモディティに投資するためにはいくつかの方法がありますが、最も広く利用されているのは上場投資信託(ETF)です。ETFを通じて、投資家は金などの個別商品、穀物などのセクター、またはエネルギー、金属、農業の3つのセクターに跨る主要な商品に分散化されたエクスポージャーを取り、リターンを追求することが可能です。

S&P GSCI商品指数、ブルームバーグ商品指数、DBIQ Optimum Yield Diversified Commodity Indexの3大商品インデックスは、コモディティ投資家のベンチマークとなっています。

コモディティ指数:構成や戦略の特徴

S&P GSCI商品指数は1991年に設定された、世界のコモディティ生産量の時価総額の加重指数です。この指数は、取引が活発で流動性の高い先物市場の対象である24の商品先物で構成されています。この指数における各商品のウェイトは、平均生産量によって決定され、世界経済における相対的な重要度を反映するように設定されています。
 
こうした構成から、S&P GSCIはエネルギーセクターへのエクスポージャーが非常に高く、現在61.5%が原油や燃料製品、天然ガスなどの商品に投資されています。 

1998年に設立されたブルームバーグ商品指数(BCOM)は、より多様なアプローチを持っています。このインデックスも24の現物商品で構成され、すべてアクティブな先物市場によって表されています。流動性が許容する、単一の商品が指数の15%を超えたり関連する商品グループが指数の33%を超えることはなく、単一の商品が指数の2%を下回ることはありません。

各商品のウエイトは、基礎となる個々の商品の世界的な経済的重要性と市場の流動性を反映した相対的な割合を確保するように設定されたルールに従って計算されています。 

最後に、DBIQ Optimum Yield Diversified Commodity Index Excess Return は、世界で最も取引量が多くかつ重要な14種類の現物商品の先物取引で構成されるインデックスです。

当社はさまざまなセクターで幅広いエクスポージャーを保有しているため、ブルームバーグ商品指数を参考にすることが多い傾向にあります。例えば、貴金属はS&P GSCIでは4.1%のエクスポージャーのみであるのに対し、ブルームバーグ商品指数の配分は19.4%のとなっています。下の例はInvesco BCOM UCITS ETFです。足元で引き続き下降型トライアングルを形成していますが、これまで2020年から2022年の上昇相場で38.2%の調整にとどまったという事実は、強い上昇トレンドにおける限定的な調整いとどまる可能性を示しています。詳細は、テクニカルアナリストのKim Cramerの最新レポートをご参照ください。

Source: Saxo

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