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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: コモディティセクターは依然として不安定であり、様々な要因が相まって、相場変動を切り抜けることがますます難しくなっています。3週間以上前にロシアがウクライナに侵攻してから、主要コモディティで驚異的な急騰が起こりましたが、ここ1週間でその勢いは後退しました。現在、市場の関心の的となっているのは、まだ成果はないながらも継続中のロシアとウクライナの停戦交渉や、数回にわたる米国の金利引き上げの1回目の実施、そして中国政府による景気支援策の確約です。
コモディティセクターは依然として不安定であり、様々な要因が相まって、相場変動を切り抜けることがますます難しくなっています。3週間以上前にロシアがウクライナに侵攻してから、主要コモディティで驚異的な急騰が起こりましたが、ここ1週間でその勢いは後退しました。最も顕著だったのは原油です。原油価格は、85ドル分を行き来して一時、1バレル100ドルを割り込み、その中で戦争によるプレミアムの大部分が解消しました。成果はないながらも継続中のロシアとウクライナの停戦交渉や、数回にわたる米国の金利引き上げの1回目の実施、そして中国政府による景気支援策の確約を背景に、コモディティセクター全体でボラティリティは引き続き上昇しました。
プーチン大統領がウクライナ攻撃を命じて以来、わずかな例外を除き、コモディティは大幅に上昇してきました。この攻撃をきっかけに、供給不足を懸念する状況から、実際に供給がなくなる状況へと市場が変化したためです。ロシアは世界経済に原材料を供給する第2位の生産国であるため、ロシアの孤立化と、国際社会による自主制裁が進み、エネルギー、金属、農産物の主要な供給ラインが遮断される中で、いくつかの前例のない動きが起こっています。コモディティセクターでは、週間の下落に転じる前には、こうした動向をきっかけとして、到達した価格水準および価格変動のレンジという点で前例のない動きが起こっていました。
注:ロンドン金属取引所(LLME)のニッケルのパフォーマンスは、約20%低い現在の価値を反映していません。ニッケル市場は、1週間以上にわたり強制的に停止された後、14日からの週に取引が再開されました。しかし、1日の値幅制限があるため、ニッケル相場は、現在唯一の価格開示元である上海の先物市場で反映されている水準まで下落することが阻止されています。
侵攻直後には歴史的な変動や到達水準が見られましたが、その後は、当初のポジション調整の動きとパニック的な反応が薄れる中、Bloomberg Commodity Index(エネルギー、金属、農産物に均等に配分した24種の主要コモディティ先物を追跡)はここ1週間はやや低調に推移しました。しかし、一部のコモディティが反落しているにもかかわらず、同指数は年初来で25%以上の上昇となっており、2000年以来最も好調だった昨年の上昇率を既に上回っています。
ブレント原油価格は約97ドルから139ドルまで上昇した後、下落に転じて開戦前の水準まで戻り、3週間で85ドル分も行き来するという前例のない値動きとなりました。ほぼ14年ぶりの高値からの調整の原動力となった要因は、ロシアとウクライナの停戦交渉と、新型コロナに関連する一時的な中国需要の減少であり、極度のボラティリティによりトレーダーはポジションを縮小しました。今後数週間でロシアからの供給減がますます感じられるようになり、新型コロナに関連する一時的な中国の需要減速を相殺する以上に大幅に供給が落ち込めば、現在の価格下落は時期尚早だったということになる可能性があると考えます。しかし、米国の利上げサイクルが始まったのに伴い、今後は世界的な経済成長を巡る懸念が高まります。このため、石油価格は、数ヶ月にわたる供給不足にもかかわらず、直近の高値に向けて再び急騰することにはならない可能性があります。しかし、リスクプレミアムはほぼ解消されていることから、石油市場は、ロシアとウクライナの状況の悪化から影響を受けやすい状況が続くことになるでしょう。
国際エネルギー機関(IEA)は、最新の月次石油市場報告の中で、石油価格には双方向のリスクがあり、コモディティ価格の高騰やロシアに対する国際的な制裁が世界の経済成長率を鈍化させる可能性が高いことを強調しました。これに基づいて、IEAは今年の世界の石油消費量予想を1日あたり130万バレル引き下げました。その大部分は、ロシア経済がソ連時代の水準まで崩壊したことに伴うロシアの需要減少によるものですが、現在の中国のロックダウンでも需要が抑えられる見通しです。しかし、一方で、ロシアでの大規模な石油生産の中断の見通しは依然として脅威であり、IEAによれば、世界的な石油供給ショックが起こる可能性があるということです。
欧州ガス市場は、他のコモディティと並んで下落しました。ロシアからのガス供給量に大幅な減少がなかったことや、春になり暖房需要が減少していることが下落の一因となりました。スポット価格は下落に転じ、1MWhあたり100ユーロ近辺で推移しています。3月7日には一時、1MWhあたり345ユーロと、原油換算で1バレル630ドルに相当する記録的な水準に達しましたが、現在はこのパニック的な高値から70%も急落したことになります。米国の液化天然ガス(LNG)出荷の急増で供給が増加したことと、今冬が暖冬だったことで、懸念材料だったガス貯蔵の枯渇が回避されたため、欧州ガス市場は全般的に、年初に懸念されていたよりも良い状態にあります。しかし、次の冬の見通しは依然として厳しい状況にあり、10月から冬季にかけての先物は1MWhあたり95ユーロ弱の水準で推移しています。この水準は、エネルギーを大量に消費する業種にとって、持続的かつ長期的に厳しい状況となることを示します。
金も、他の大半のコモディティと同様、2020年の最高値2,074ドルまであと数ドルに迫るパニック的な高値を付けた後、下落に転じました。現在の地政学的リスクを測る最適な指標である石油価格が下落したことに加え、16日のFOMC会合を前に不安感が高まったことを一因として、金価格は175ドルもの調整となり、1オンス1,900ドル弱で主要な支持線とぶつかりました。その後、FOMCが満を持してようやく利上げサイクルを開始したことを受けて、金相場は反発しました。FRBのPowell議長が経済成長に関して楽観的な見方を示したことに反応して株式市場が上昇した一方、FRBが景気減速のリスクを冒さずにインフレを抑制することは難しいとの懸念から、金現物が買い戻されました。
ここ数週間に金先物を大量に積み増していたレバレッジドファンドによるロングの売却は一巡した可能性がある一方、長期目的の投資家は開戦以来、継続的に金ETFを買っています。この間に、総保有量は122トン増加し、3,236トンと1年ぶりの高水準となりましたが、増加分の半分が上記の調整局面で生じたものだということは注目に値します。
インフレ率が高止まりする一方、景気減速のリスクの中で中央銀行が十分にインフレを抑制することが難しい可能性があると考え、我々は強気の見通しを維持しています。ロシア・ウクライナ危機は引き続き貴金属価格の上昇見通しの支えになると考えられます。なぜなら、一進一退するセーフヘブンとしての買いで短期的な値上がりの余地があるというだけでなく、さらに重要なこととして、現在の緊迫した情勢がインフレに大きな影響を及ぼすことになるからです。世界の経済成長率が鈍化する中でインフレ率は今後も持続的に高止まりする見込みであり、その結果、最終的には、米国のFRBをはじめとする中央銀行は更なる利上げを断念し、代わりに景気刺激策を再開することを余儀なくされる可能性があります。
このようなシナリオでは、銅をはじめとする工業用金属が値上がりするという我々の考えに基づくと、金と銀(特に銀)にはさらに上昇余地があると見られます。S&P 500とMSCI World Indexが7.5%下落したのに対し、金は既に米ドル建てで6%、ユーロ建てで9.5%上昇しており、実質利回りの上昇による逆風の中でも、分散投資の有効性を実証しています。金価格は1オンス1,890ドルの水準が主要な支持線となっています。新たな上昇余地を示すには1,957ドルを突破することが必要になります。