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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: サマリー: コモディティセクターは景気後退の影に脅かされ、ここ一週間でエネルギー、金属、農産物の三部門が揃って急落しました。現時点では、需要崩壊がどの程度になるかは分かっていませんが、最終的には、コモディティが循環的な強気の上昇局面にあるという長期的な根拠を揺るがすほどの影響が出るとは思えません。今回のアップデートでは、原油、銅、金、小麦について詳しく見ていきます。
コモディティセクターは、ますます景気後退の影に脅かされています。ここ一週間の売りで、エネルギー、金属、農産物の三部門が揃って急落しました。現時点では、需要崩壊がどの程度になるかは分かっていません。しかし、最近のバブルの一部が現在、市場から取り除かれつつあることは間違いありません。景気後退リスクがますます大きくなる中、上昇局面を見込んで買ったマクロ志向のファンドが考え直していることがその一因です。
しかし、現在の懸念は今後数ヶ月、数四半期にわたって表面化するはずです。現時点では、最終的には、コモディティが循環的な強気の上昇局面にあるという長期的な根拠を揺るがすほどの影響が出るとは思えません。エネルギー探査・採掘分野の新規プロジェクトへの長期的な投資意欲に関する懸念といった構造的な問題が引き続き主因となり、今後数年間は供給不足により価格が下支えされる見通しです。その一部はグリーントランスメーションによるものであり、そのため、化石燃料ベースのエネルギー需要の見通しはさらに予測困難になっています。
6月10日以降の主要コモディティのパフォーマンス。この日、予想を上回る米国のインフレ指標が発表されたことがFRBの積極的な利上げ策のきっかけになり、それとともに景気後退懸念が高まりました。注:EUのTTF(Title Transfer Facility)と米国のガスが大幅な外れ値となっています。欧州でロシアからの供給の懸念による正反対の影響が続いていることと、最近のテキサス州フリーポートLNGの輸出ターミナルの爆発後、米国からの輸出の減少が長引いていることが背景にあります。
最近、数社のエネルギー生産企業によって、将来の需要が予測不可能であることが明らかにされましたが、これらの企業は現在、政府から批判を受けています。特にバイデン政権は、秋の中間選挙を前に、燃料価格の記録的な高騰の中で、支持を獲得しようと躍起になっています。大半のエネルギー生産企業は、石油の生産・精製設備の拡大に向けて設備投資を増やしていない理由として、電気自動車の販売増により今後数年間でガソリンの市場シェアは低下する見通しであり、新規の長期掘削・精製プロジェクトの魅力が低下していることを挙げています。
6月10日に予想を上回る米国のインフレ指標が発表され、その結果、数十年ぶりとなる75ベーシスポイントの利上げが実施されたことをきっかけに、6月には実際に様々な市場で急転換が見られました。今後、数回の追加利上げが予定されており、市場では、世界各国の中央銀行が利上げを続けることへの懸念が高まり始めています。このような状況は、インフレが抑制されるか、何かが崩壊するまで続く見通しです。後者は、経済が圧力に耐え切れず、結果として景気後退に陥るリスクを指します。今のところ、インフレの少なくとも一要素、すなわちコモディティ価格上昇による投入コストの上昇は後退し始めています。
6月13日からの週には、FRBのパウエル議長が米上院での証言で、急な利上げが米国の景気後退を招く可能性がある一方、経済のソフトランディングは「非常に困難」だと認めたことを受けて、債券利回りが急落し、景気後退への注目が高まりました。それに続いて、米国と欧州から低調な経済データが相次ぎ、製造業とサービス業の活動が冷え込んでいることが示されました。欧州では、Gazpromがドイツへの供給を削減したことを受けてガス・電力コストが急上昇し、急激な景気減速のリスクが高まる中、ドイツの2年債利回りが2008年以来最も大幅に低下しました。
世界的な経済成長への懸念を受けて、13日からの週には、Bloomberg Commodity Indexは、穀物を筆頭に全てのセクターが下落し、4ヶ月ぶりの安値を付けました。同指数は、6月9日に記録的な高値に達した後、約12%下落しましたが、前年比ではまだ21%上昇しています。原油・燃料製品がこの上昇分の大半を占めています。上の表にあるように、この日以降、全てのセクターが弱含みとなりましたが、EUの天然ガスだけは、今後数ヶ月間の供給不足のリスクが相場の支えとなっています。
世界各国の中央銀行による積極的な利上げが最終的には経済成長に打撃を与え、エネルギーから工業用金属まで主要コモディティの需要の足かせになるとの懸念が高まったことを受けて、原油価格は10日間で高値から安値まで15%近く下落した後、24日には安定化する兆しを示しました。原油および燃料油は、需給逼迫の兆候が続いているにもかかわらず、値下がりしています。燃料油は、需要が和らいでいたら低下していたはずの製油所の利益率が過去最高に近い水準に達していることで注目されます。短期的には、景気後退へのヘッジとして先物やその他の金融商品を介して「紙」の石油を売るマクロ経済重視のトレーダーと、供給不足による価格の下支えが続く現物市場との間で争いが生じる見込みです。
世界的に景気後退懸念が強まり、中国のロックダウンにより世界最大の工業用金属消費国の成長と需要が打撃を受けていることを背景に、銅価格の週足は一年間で最も大幅な下落に向かいました。Bloomberg Industrial Metal Indexが年間で6%下落したのに対し、銅は現在15%下落しています。この下落の約半分がここ一週間に起こったもので、そのきっかけは、FRBのパウエル議長がインフレ抑制に取り組む姿勢を改めて示し、ハードランディングのリスクが高まったことでした。さらに、チリを拠点とする大手鉱山会社のCodelcoは、ストライキを終わらせることで労働者と合意に達しました。このストライキは供給減少による価格上昇を招く可能性がありました。
銅や工業用金属について我々が長らく維持してきた強気の見方は変わっていません。しかし、景気後退懸念が急速に高まっていることや、中国で新型コロナとの戦いが長期化していることから、バランスのとれた市場、そして最終的に供給不足の市場へと向かう必然的な動きは遅れる可能性があります。さらに、ロンドンや上海の取引所が監視している倉庫の在庫水準と価格急落との間には乖離が続いています。ここ一週間に、四大金属の在庫は合計で前年比60%減の110万トンと、過去最低を更新しました。
銅価格は2021年初頭から支持ラインとなっていた1ポンド3.95ドルを割り込んでおり、次は2020年から2022年までの上昇分の半値押しとなる1ポンド3.50ドルが支持ラインになる可能性があります。
貴金属類:急速な利上げの見通しは景気後退懸念により相殺され、 金価格は1,780ドル~1,880ドルの幅広いレンジ内で推移しています。最悪のシナリオではスタグフレーションのリスクがありますが、歴史的にはスタグフレーションは金価格にはプラス材料となってきました。しかし、工業用金属が急落したことや、株式市場でリスク選好が多少回復したことに伴い、銀価格が下落するなど、マイナス要因が米国債利回りとドル安によるプラスの影響を上回り、金価格は24日、週間で下落して終えました。
金について我々が長らく維持してきた強気の見方は、ここ数週間の動きにより一段と強まっています。経済成長率が鈍化し、インフレが高止まりする中、2022年後半には金価格が過去最高値を更新する可能性があるという見方を維持しています。とはいえ、再び投資家の注目を集めるには、ひとまず銀やプラチナなどの準工業用金属の動きが落ち着きを取り戻す必要があります。