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Chief Investment Strategist
サマリー: 欧州の経済成長率は5月に大きく減速し、エコノミストの間では世界経済がマイナス成長に陥るとの懸念がすでに高まっています。なお、好調が続くサイバーセキュリティ業界大手のCrowdstrikeは、昨日の決算で売上高(前年同期比35%増)と純利益の通期見通しを上方修正しましたが、同社の株価は7%下落しました。本稿では、その他にも来週公表予定の企業決算に注目し、水曜(7日)に公表されるフランスの中堅半導体メーカーSoitecの業績について取り上げます。
欧米諸国の実質GDPがマイナス成長に転じる可能性が高まる中、株式市場のリスクは上昇しています。欧州の株式市場のポジティブな点を挙げるとすれば、米国の株式市場に比べてバリュエーションがはるかに適正な水準にあることです。なお、最近のAIブームを背景とする米国株式のバリュエーション面でのリスクについては、昨日のレポートをご参照ください。
サイバーセキュリティは、株式バスケットの中で最も好調なパフォーマンスを上げているテーマのひとつとなっています。その背景には、すでに高い水準にあったサイバーセキュリティソリューションの需要が、ロシアのウクライナ侵攻によって一段と拡大したことがあります。同セクターの高い成長可能性は、サイバーセキュリティ関連銘柄に対する投資家の期待を大きく押し上げており、予想を上回る業績を発表する企業が相次ぐ中、今後の成長性に対する期待感は一層高まっています。昨日公表されたサイバーセキュリティ大手Crowdstrikeの決算は予想を上回り、同社は売上高とEPSの通期ガイダンスを上方修正しました。同社は今年度の通期売上高の伸びが35%に上ると予想しています。通常、このような決算を受けて株価は上昇しますが、同社の株価は今日の取引で7%下落しています。
これは、企業が堅調な業績を発表した場合でも、投資家の過度な期待感が重しとなり、株価が下落するリスクがあることを意味します。しかし、長期投資家は、こうした値動きを単なるノイズとして捉え、受け流すことが重要となります。サイバーセキュリティ関連銘柄の長期的な成長シナリオを重視し、あくまでも将来的な業績拡大を見据えたスタンスで短期的な動きに惑わされるべきではありません。
AIブームは今年の株式市場の大きなテーマとなっており、Nvidiaの極めて強気な売上高見通しを受けて市場では過熱感が高まっています。米国に拠点を置くAI関連企業の多くは、AIブームの恩恵を享受していますが、その追い風を受けている欧州企業はごく一部に限られています。オランダの半導体大手ASMLもその限られた銘柄の一つで、AI半導体市場の拡大に伴いEUV露光装置の需要増が期待される中、同社の株価は上昇しています。
しかし、AIに関連する巨大テック企業に埋もれている銘柄も存在し、水曜に決算を発表する仏中堅半導体メーカーSoitecもそのうちの一つです。同社はフランスに本社を置く半導体企業で、時価総額は46億ユーロ、過年度の売上高は前年同期比48%増の8億6300万ユーロに上ります。同社は2,000人の従業員を擁し、そのうち20%が研究開発部門に配属されています。Soitecの株価は年初から15%下落しており、米国の半導体企業の株価とは全く異なるトレンドを示しています。
アナリスト予想では2026年3月期の売上高は19億ユーロ、EBITDAは営業利益率の拡大が寄与することで現在の2億7600万ユーロから7億3100万ユーロに増加する見通しであるほか、目標株価は足元の130ユーロに対して189ユーロ(45%の上昇余地)と、同社に対して極めてポジティブな見方を示しています。Soitecは、半導体製造に使用されるウエハーの高精度な積層を可能にする基板製造技術で特許を取得しています。また、同社のスマートカット技術は、軽イオン照射とウェーハボンディングの両方を使用して、基板上の薄い単結晶層を特定し、別の基板に移すという極小メスのような機能を備えています。
来週の決算スケジュール: