市場の現況
ナスダック100(USNAS100.I)、S&P500(US500.I)指数は5日続落
米国債利回りが上昇し、第3四半期決算と木曜日(10月13日)の消費者物価指数がリスクオフ心理に拍車をかけ、米国株はそれまでの上昇が帳消しになりました。S&P500は、ハイテク関連株がさらに売られて5日続落し、0.65%安で終わりました。ナスダック100は1.2%下落しました。S&P 500種構成銘柄のうち、最も下落したのはカジノ&ゲーミングと半導体で、それぞれ4.7%、4.3%下落し、2日連続で下落幅が拡大しました。一方、投資家は引き続きディフェンシブセクターを買い増ししています。食品小売と医薬品セクターが、2日連続が買われ、典型的なリスクオフの様相を呈しています。
注目の米国企業ニュース・動き
ゼネラル・モーターズ(GM)は来年後半から、独自の太陽光発電による蓄電システムを提供し、テスラ(TSLA)の太陽光発電「パワーウォール」事業に対抗する計画です。テスラ株は2.9%下落したが、GMはほぼ横ばいで取引を終えました。また、米労働省が労働者を従業員と独立請負業者のどちらに分類するかの判断基準を微調整することを提案したことで、ウーバー(UBER)とリフト(LYFT)がそれぞれ10%と12%急落し、話題となりました。アムジェン(AMGN:xnas)は、同社の肥満治療薬の可能性を根拠とした、アナリストによる投資判断の引き上げを受けて、5.7%上昇しました。チップメーカーのKLA (KLAC: xnas)は、韓国のSKハイニックスの中国事業を含む中国拠点顧客への販売を水曜日(10月12日)から停止すると発表し、6.2%下落しました。
米国債利回り (TLT:xnas, IEF:xnas, SHY:xnas) は、長期側利回りが上昇し、波乱含みで取引終了
アジア時間に4%に達した米10年債利回りは、ニューヨーク時間半ばに3.87%まで下落した後、7bp高の3.95%でこの日の取引を終了しました。 ベイリー英中銀総裁は、緊急措置である国債買い入れ策の延長を求める声に対し、10月14日までの期限で終了するとの前日発言を繰り返したことが、午後の利回り上昇の引き金となりました。 ベイリー総裁は、ワシントンで開催された国際金融協会(IIF)年次総会で、英国の年金基金に対し、ポジションを清算するにはあと3日しか残されていないと警告したことを明らかにしました。さらに、午後に行われた米国債3年物の入札結果が不調であったため、水曜日と木曜日に行われる10年物と30年物の入札を前にポジションを調整するトレーダーも見られました。2年債利回りは4.31%と変わらずにこの日を終え、2-10年債カーブは-36とベアスティープ化しました。
中国のCSI300(03188:xhkg)が安定推移した一方、香港のハンセン(HSIU2)は下落
上海と深圳の取引所では、発電やリチウムメーカーの株価が上昇し、株価は昨日の終値とほぼ変わらず安定した取引となっています。CATLは第3四半期の純利益が前年同期比169-200%増の88-98億元と事前発表し、6%上昇、リチウム関連の株価上昇をけん引しました。恵州億緯鋰能股分有限公司(EVEエナジー)(300014:xsec)は6.2%高、広州天賜高新材料(002709:xsec)は10%高となりました。中国核能電力(チャイナ・ナショナル・ニュークリア・パワー)(601985:xssc)は年初来9か月の発電量が前年同期比7.2%増となったと発表し、7.3%上昇しました。一方、香港のハンセン指数は続落し、金融、中国ネット企業、EVメーカー、中国不動産開発会社などが重石となり、2.2%下落しました。 上海などの大都市でパンデミック対策が強化され、また人民日報が2日続けて「ゼロコロナ」政策を堅持するとの社説を掲載したことにより、一部のアナリストや投資家が抱いていた経済活動再開の期待が打ち砕かれました。航空株は1.4%から9.1%の下落、マカオのカジノ株は3%から5%超の下落となりました。中国のインターネット関連銘柄で空売りが増えたとされ、アリババ(09988:xhkg)、テンセント(00700:xhkg)、ジェイコム(09618:xhkg)、美団(03690:xhkg)、ビリビリ(09626:xhkg)が3%から9%を超える下げとなりました。ハンセン指数では、中国の不動産開発会社、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)(02007:xhkg)と龍湖集団(ロンフォー・グループ・ホールディングス)(00960:xhkg)がこの日、最も大きく下げました。
豪州のASX200(ASXSP200.1)は0.3%下落(先物)、クイーンズランド銀行、肥料会社、原油価格に注目
ASX200は週初から1.7%下落しており、最も下落したのはテクノロジーセクターでした。最も上昇したのは生活必需品、素材、資本財で、供給懸念から肥料と農業株が最も上昇しています。クイーンズランド銀行(BOQ)は、通期のキャッシュ利益が5%減少し、銀行の収益指標である預貸金利ざやは1.74%に低下しました。住宅ローンの伸びは7%増でした。また同グループは1300万ドルの減損損失の計上を発表しました。とはいえ、BOQおよびその他の地方銀行は、大手4行と比較すると、高い前年比貸出伸び率を維持しています。その他、米ドルが再び騰勢を強めた後、原油価格が88ドルまで下落したことから、本日は石油株が注目されます。また、さらなる売りが予想される金関連銘柄も注視する必要があります。また、アフリカの鉄鉱石港でストライキが発生したことを受け、鉄鉱石企業も注目です。
円は前回の介入水準超え、英ポンド/米ドルは1.10を割り込み
アジア時間開始後、ベイリー英中銀総裁が介入停止を警告し(下記参照)、オーバーナイトで米国債利回りが急上昇したため、ドル円は146円を超えて上昇する場面がありました。ベイリー総裁の発言が発表されたのは英国債市場の取引時間外でしたが、米国債はそれに反応したため、円も反応することが予想されます。日本円は何週間も介入水準を下回っていますが、安全資産としてのドルの買いが続き、ドルと米国債利回りが再び急上昇するといった場面で、圧力にさらされ続けるでしょう。一方、ユーロ/円は、9月の介入時の144円に対して142円以下、豪ドル/円は前回の97円台に対して92円以下と、依然として低い水準で推移しています。ベイリー総裁の発言に対する反応は、10月に入って初めて1.10を割り込んだポンドにも見られました。
原油(CLX2・LCOZ2)約3%下落
原油相場は、ニューヨーク取引時間終盤にかけてドルが一段と上昇したことや、今週末から始まる中国共産党大会を前に、中国が新たなロックダウンを実施するとの報道があったことから、火曜日(10月11日)に下落しました。WTI原油先物は1バレル90ドルを割り込み、ブレント原油先物は月曜日(10月10日)に98ドルを上回る水準に達した後、94ドルを割り込んでいます。しかし、プーチンがウクライナへのさらなるミサイル攻撃を警告するなど、地政学的緊張は高まっています。一方、先週発表されたOPECプラスの減産を受けて、米国とサウジアラビアの緊張も引き続き注視すべき重要なポイントとなっています。
注目すべき材料
イングランド銀行のベイリー総裁、介入は金曜日に終了すると警告
イングランド銀行のベイリー総裁は、中央銀行が予定通り今週末に介入を停止するため、投資家に対して維持できないポジションを清算するよう「3日間」の期限を与えました。英国の金融不安を鎮めるため、イングランド銀行が買い入れを延長するのではないかという期待もありましたが、ベイリー総裁はそれについては譲りませんでした。これは、QT(量的引き締め)が予定通り今月末に開始される可能性を示唆するものでもあります。今のところ、英国資産に明るい兆しはほとんど見られません。
メスター・クリーブランド連銀総裁はタカ派を維持、FOMC議事要旨発表予定
ロレッタ・メスター・クリーブランド連銀総裁(2022年投票権者)は、インフレ抑制に関してFRBの政策にはまだ進展が見られず、金融政策を一段と抑制的なものにする必要があり、引き締めが弱すぎるリスクの方が大きいというタカ派的発言を繰り返しました。メスター総裁はFRBが2023年に利下げに転じるとは予想していません。これまで述べてきたように、同氏は「現時点では、引き締めが小さすぎることがより大きなリスクだ」とも発言しています。9月21日開催のFOMC議事要旨が本日発表されますが、引き続きタカ派的なシグナルを発信することになりそうです。
9月の中国人民元建て融資残高、前年比11.2%増で予想上回る
中国は昨夕、9月の与信統計を発表しました。9月の新規融資総額は3兆5300億元で、予想の2兆7500億元(ブルームバーグ調査)、8月の2兆4300億元、2021年9月の2兆9030億元を大幅に上回りました。これにより、融資総額の伸び率は前年同月比10.6%となり、8月の同10.5%を上回りました。 人民元建て新規融資は2兆4700億元となり、予想の1兆8000億元、8月の1兆2500億元を上回りました。 企業向け融資が8,750億元から9月に1兆9,100億元へと加速し、融資全体の伸びを押し上げました。 9月の人民元建て融資残高は前年同月比11.2%増となりました。規制当局がインフラプロジェクト、製造業、不動産業への融資を銀行に促すよう指示、窓口指導を行ったことも、法人向け融資が予想を上回る伸びを見せた要因となっています。
IMFによる世界経済成長への警告
ジェイミー・ダイモン氏(JPモルガン・チェースCEO)と、ポール・チューダー・ジョーンズ氏(チューダー・インベストメントCEO)による景気後退の警告の後、今度はIMFが、ほとんどの国の家計と企業が「荒波」に直面し、「最悪の状況はこれからである」として、世界経済が来年には後退に転じるリスクが高まっていると発表しました。IMFは、世界経済の成長率は2021年の6.0%から2023年には2.7%に減速し、2001年以来最も弱い成長率となるとしています。IMFはまた、金融市場における急速かつ無秩序な価格決定のリスクが高まり、そのリスクは現状の脆弱性と流動性不足によって悪化すると警告しています。
中国は中国共産党大会後「ゼロコロナ」政策堅持を示唆
人民日報は今週3日連続で、中国当局が「ゼロコロナ」政策を堅持するとし、その政策を安易に緩めることはないと論説で指摘しました。パンデミック対策が緩和されれば多数の感染者や死亡者が発生し、医療制度が崩壊するため、「ゼロコロナ政策」の堅持が、重要な国民の生命と健康を守る最善の方法であると論じています。今回の一連の記事は、来週の中国共産党の全国大会後にパンデミック対策が緩和されるのではないかという憶測を払拭するためのものであるとみられます。一方、国慶節(建国記念日)の連休で多くの人が国内を旅行した後、新型コロナ感染者が2,000人を超えて再び増加しています。上海や深圳などの大都市では、パンデミック対策が強化されました。
ロシアとの新たな緊張関係とハリケーン「イアン」の余波による肥料供給のリスク
ロシアとウクライナの間に新たな緊張が生じる中、肥料メーカーにおける供給懸念が再び高まっています。これを受けて、リン酸塩/肥料に関連するアジア太平洋地域の株式は、昨日上昇しました。ASXで今週、最も高いパフォーマンスを示しているニューファーム (NUF) や オリカ (ORI) など、このセクターの銘柄を本日も注目する価値があるかもしれません。ハリケーン「イアン」がフロリダを襲い、10億スタック以上のリン酸肥料が影響を受け、リン酸肥料採掘産業の供給はすでに危機に瀕しています。また、ロシアは窒素系肥料の世界最大の供給国ですが、ウクライナに対する攻撃を開始した後、禁輸措置により供給が縮小しています。おそらく市場はさらなる展開がありうると考えているでしょうし、同セクターがどのような展開を見せるのか、注目する必要があります。
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