マーケットインサイト:米国中間選挙を控えドルは下落

株式
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APAC Research

サマリー:  月曜日(11月7日)は、中国の国境再開報道が明確にならないまま、株式はパウエル議長発言後の安値からの反発が続きました。米国債の利回りは上昇しましたが、マクロ要因よりも企業決算が重視され、ドルは2日連続で下落しました。アジアの経済指標では、中国の輸出入の伸びがマイナスに転じ、オーストラリアの消費者信頼感指数も最低水準に低下するなど、いくつかの警戒される兆候が見られました。米国では中間選挙を控えており、共和党が圧勝した場合はさらにドル安が進む可能性があります。前日にはウォルト・ディズニーの決算が注目されます。


市場の現況

ナスダック100(USNAS100.I)とS&P500(US500.I)は上昇、ハイテクとエネルギーが上昇を牽引

米中間選挙を控え、株式市場のセンチメントはリスクオンの基調を維持しています。S&P500とナスダックはともに約1%上昇しました。 コミュニティサービス、エネルギー、ITが上昇を牽引し、S&P500では公益事業が最大の下げ幅となりました。企業関連では、メタ(META:xnas)が人員削減計画を発表した後、6.5%上昇しました。世界的なヘルスケア企業ヴィアトリス(VTRS:xnas)は、オイスターポイント(OYST:xnas)の買収に合意し、13%急騰しました。配車サービスを手掛ける米リフト (LYFT:xnas) は、乗客数が予想を下回ったことから、時間外取引で15%急落しました。テスラ(TSLA:xnas)は5%下落し、この日のベンチマーク指数の最大の重石となりました。

米国債 (TLT:xnas, IEF:xnas, SHY:xnas)利回りは入札を控えて上昇

火曜日(11月8日)から木曜日(11月10日)にかけて、3年債、10年債、30年債の合計960億米ドルの償還分の入札が行われるため、国債のイールドカーブは全年限で約6bp上昇しました。2年物英国債利回りが16bp上昇したことも、米国債への圧迫要因となっています。投資家は、火曜日(11月8日)の米国中間選挙と水曜日(11月9日)の消費者物価指数に注目しています。

香港ハンセン(HSIX2)中国CSI300(03188:xhkg)は中国の国境再開期待で続伸

香港の株式は、中国・国家疾病管理予防局が週末、ゼロコロナ政策堅持の方針は揺るがないと発言したとの報道を受け、肩透かしを食らった格好となりました。投資家は、保健当局が地方政府は合理的な根拠なく政策緩和を実施すべきではなく、人民の生活と経済活動が正常に維持されるようにしなければならないと付け加えたことに注目しました。一方、アナリストは、大規模なスポーツイベントの再開、PCR検査の要件緩和、国際線の増便、国際線の運航停止措置解除、中国本土に住む外国人に対するビオンテック社製ワクチンの認可など、今後数か月で徐々に再開されると予想する要因をレポートに挙げています。ハンセン指数は2日続伸し、2.7%上昇して引けました。香港証券取引所(00388:xhkg)が5.4%上昇、HSBC(00005:xhkg)が3.7%上昇、友邦保険控股(AIA)(01299:xhkg)が3.3%上昇と、金融株がアウトパフォームし、また一部の一線都市での予想を上回る住宅販売データを受けて中国の不動産株が急騰しました。ハンセン指数では、中国不動産開発大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン)(02007:xhkg)が11%上昇し、上昇率トップとなりました。アップル(AAPL:xnas)がiPhoneの生産を縮小したものの、中国の光学機器メーカー、舜宇光学科技(サニーオプチカル・テクノロジー)(02382:xhkg)は11%上昇しました。MMG(01208:xhkg)はペルーの同社銅鉱山への地元住民による妨害が解除されたことを受け、16%急伸しました。紫金鉱業集団(02899:xhkg)は招金鉱業(01818:xhkg)の株式20%を取得すると発表して10.3%上昇し、招金鉱業は9.7%上昇しました。 中国の10月貿易統計は予想より弱い結果となりましたが、月曜日(11月7日)の市場にはあまり影響を与えませんでした。

為替:10年債利回りの上昇にもかかわらずドルの下落幅は拡大

米10年債利回りは4.20%を上回り、先週のパウエル議長発言後の高水準まで上昇しましたが、ドルは2日連続で下落し1週間ぶりの安値をつけました。ドルは、カナダドルを除くすべてのG10通貨に対して幅広く下落しました。英ポンドが上昇し、英ポンド/米ドルは1.1500を上回り、ユーロ/英ポンドも0.8700まで下降しました。ユーロはドル安の恩恵を受け、ラガルド総裁がインフレ率を2%に戻す必要があるとの発言を繰り返したに過ぎなかったものの、ユーロ/米ドルは0.9900の安値からパリティを上回る上昇を見せました。米国中間選挙は為替にさらなる変動リスクをもたらす要因ですが、共和党が完勝した場合、政権が財政出動を行う余地が限られるとの見通しから利回りが急落し、ドルにとってマイナスとなります。

原油(CLX2 & LCOZ2)、ドル安にもかかわらず下落

原油相場は、目先の供給制約が続く中で、中国のゼロコロナ政策緩和への期待が薄れ、引き続き下落が抑えられた状態で推移している。OPECは、前回の総会で日量200万バレルの生産枠削減で合意し、減産に着手しています。また、市場は12月5日に制裁が発動される前に、欧州のロシア産原油の輸入期限を迎えています。このため燃料在庫は逼迫しており、ブレント原油先物は依然として1バレル100ドルを下回り、WTI先物も91ドル以上で推移しています。一方、米国の天然ガス先物は、西部と北東部の寒波懸念で急騰しました。天然ガス先物12月限は、1MMBtuあたり7.22ドルと12.8%も上昇し、その後上昇幅を縮小しました。

銅(HGZ2)は先週の上昇幅を縮小

銅は、金曜日(11月4日)に中国の国境再開への楽観的な見方から3.70ドル以上まで急騰した後、3.60ドルまで反落しました。中国が厳格なゼロコロナ規制を堅持するとの報道があり、銅の上昇分は幾分相殺されました。また、中国の銅鉱石の輸入が減少し、全体の輸入も2年以上ぶりに予想外に減少するなど、弱い経済データも心理的な重石となりました。金 (XAUUSD) は米ドルの下落にもかかわらず堅調に推移していますが、短期的な下落トレンドが反転したとみるには時期尚早かもしれません。

注目すべき材料

米国中間選挙に伴う市場のボラティリティの上昇

識者によれば、共和党が下院を制する公算が非常に大きく、民主党が上院でやや優位を維持して終わるかどうかの公算は、微妙な状況にあるようです。共和党が両院を制しても、バイデン米大統領に拒否権があるため、直ちに影響はありませんが、民主党が予想以上に強く、下院での議席数を維持し、上院の過半数を大きく上回ったとすれば、ゲームチェンジャーとなり、今後2年間は、予想された政権のレームダック化ではなく米国の政策ダイナミズムがより強くなる可能性があります。2016年にトランプ氏が勝利して以来、世論調査会社が選挙結果の正確な指標を集めるのに苦労しているため、不確実性が高いと思われます。

中国の10月貿易統計は期待外れ

中国の10月の輸出(米ドルベース)は前年同月比0.3%減となり、ブルームバーグの調査で予想された4.5%の伸びや9月の5.7%を大きく下回る結果となりました。輸出の伸びは2020年5月以来の低水準であり、世界経済減速に伴う輸出減速への転換点となる可能性があります。インフレ調整後の輸出価格では、中国の輸出の減少幅は実質的にさらに大きくなります。米ドルベースの輸入は前年同期比0.7%減(コンセンサス0.0%、9月:0.3%増)となりました。

日銀、金融緩和政策を確認するも将来の出口戦略には言及せず

日本銀行は本日、9月の金融政策決定会合の議事要旨を公表し、金融緩和政策のスタンスを大筋で再確認しました。しかし、一部の委員からは、サービス価格に上昇の兆しが見られるため、消費者物価がかなり高い水準で推移する可能性があるとし、「物価が予想を上回って大きく上振れする可能性を排除できない」と、やや異なる意見も出されました。それでも、日本が物価目標を達成するためには、賃金の持続的上昇を伴うことが基本であるとして、金融政策に直ちに手を加える必要はないとの意見で一致しました。重要なのは、委員の一人から、日銀は超低金利からの脱却が金融市場に与える影響を引き続き検討する必要があるとした、出口戦略についての言及があったことです。

オーストラリアの景況感・消費者信頼感が大きく低下

オーストラリアの消費者信頼感指数は過去2年半で最低の水準に落ち込み、企業景況感指数も金利上昇とインフレ率の急上昇から経済の先行きに対する警戒感が高まり、低下しました。ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)が発表した企業景況感指数は9月の5から0に、ウエストパック消費者信頼感指数は11月に前回の83.7から78に低下しました。このことは、今後の消費動向にもマイナスの影響を与え、消費者物価指数(CPI)が引き続き高水準であるにもかかわらず、オーストラリア準備銀行(RBA)の利上げに対する警戒感が高まる可能性を示唆しています。

ウォルト・ディズニーの決算発表予定

ウォルト・ディズニーの決算発表が火曜日(11月8日)に予定されています。アナリストは、第4四半期(9月30日終了)の売上高は前年同月比15%増と予想していますが、EBITDAは第3四半期の38.6億ドルから30億ドルに減少し、利益圧力が続いていることが明らかになるとみられます。

メタがレイオフ、アップルがiPhoneの減産を発表

iPhoneに対する需要が減少しており、消費者がインフレ圧力にさらされ、携帯電話の買い替えを先延ばししている可能性があるため、アップルはiPhoneの目標生産台数を300万台削減すると発表しています。アップルは最近、ハードウェア事業の低迷を補うため、一部のサービスを値上げしています。一方、マーク・ザッカーバーグ氏は、メタがメタバース事業に多額の資金を費やしていることに対する投資家の懸念に耳を貸さないというイメージを強めており、第3四半期決算発表後、投資家はメタに不信感を募らせています。ウォールストリート・ジャーナルによると、メタは数千人の従業員のレイオフを開始すると見られており、結局のところメタは耳を傾けたのかもしれません。当社の株式ストラテジスト、ピーター・ガンリューのレポートはこちらからご覧ください。

 

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