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Chief Investment Strategist
サマリー: ナスダック100指数は、2023年7月24日の取引開始前に、同指数内のウェイト(構成比率)上位5銘柄への過度な集中に対処するため、特別リバランス(資産配分の調整)を実施します。この特別リバランスにより、ナスダック100指数に連動する米国および欧州に上場する24のETFも取引総額にして約96億ドルのリバランスが必要となります。しかし、この特別リバランスによっても、ETFの原資産である株式の本質的価値は変わらず、また、当社の推定によれば、理論上、指数とETFのリバランスが株価に大きな影響を与える可能性は低いようです。
先週金曜日(2023年7月7日)、米ナスダック証券取引所は、2023年7月24日(月)の取引開始前にナスダック100指数の特別リバランスを実施すると発表しました。その目的は、ウェイトの再分配により指数内の過度な集中を緩和することであり、特別リバランスによる構成銘柄の削除や追加は発生しません。ナスダックは今回の決定に際して、ナスダック100指数算出の方法論を記した文書を提示しています。そこには4ページにわたって、個別銘柄ウェイトが4.5%を超え、上位5銘柄の合計ウェイトが40%を超える場合、四半期ごとのウェイト調整でその5銘柄の合計ウェイトを40%に下げると明記されています。また、年次ウェイト調整では、合計ウェイトは38.5%に設定されています。
特別リバランスは 2023年7月3日現在の発行済み株式に基づいて行われ、指数構成銘柄の発表とウェイトの変更に関する試算の公表は 2023年7月14日(金)に行われます。従って、市場参加者には新たな目標ウェイトに対応するために5取引日の猶予があることになります。
株式分割や配当と同様、指数のリバランスによって、株式の基本的な価値が変わることはありません。従って、ナスダック100指数のテクノロジー株上位5銘柄が今回の発表によって下落したことは、理にかなわない現象です。基本的な価値が変化していない以上、理論的には、特別リバランスを控えた先走った売りは買いによって相殺されるはずです。このように明白な事実はあるものの、ナスダック100指数に連動するパッシブETFによる強制的な売りが市場を動かす可能性があるとの主張には一理あります。
下の表は、2023年7月3日現在のナスダック100指数におけるウェイト上位8銘柄を示しており、上位5銘柄はMicrosoft、Apple、Nvidia、AmazonそしてTeslaです。これら5銘柄の2023年7月3日時点の指数に占めるウェイトは合計で43.55%であり、四半期ごとのリバランスの規定に違反していました。
ナスダック100指数に連動する米国と西欧に上場するETFの運用資産総額は2,710億ドルで、最大のファンドであるInvesco QQQ Trust Series 1 ETF (QQQ:ナスダック証券取引所)の運用資産は2,020億ドルに達します。下表が示すように、新たな目標ウェイトにおいて、上位5銘柄のウェイトが40%に制限されると仮定すると、ナスダック100指数に連動する24のETFのリバランス額は96億ドルと推定されます。過去20日間の1日平均売買代金に基づき、また、5日間の取引で円滑なリバランスが行われると仮定すれば、これらのETFによる売却が出来高に占める割合は、最大がMicrosoftで6.67%、最小がTeslaで0.5%と予想されます。
取引コストを見積もるためのベンチマーク・モデルを使用すると、5取引日にわたってMicrosoftのリバランスを行った場合、ナスダック100に連動する最大ETFであるInvesco QQQ Trust Series 1 ETFの取引コストは約33ベーシス・ポイントとなり、これに指数ウエイトを掛けるとそのコストは約3.5ベーシス・ポイントとなることがわかります。さらに、AmazonとTeslaのリバランスは、これらのETFにとっては何でもないことでしょう。全体として、特別リバランスによる影響は限定的と予想されます。