エネルギー危機下での欧州株式展望

エネルギー危機下での欧州株式展望

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  欧州株式は、エネルギーとディフェンシブセクターがよく持ち堪えている一方で、一般消費財、不動産、IT関連銘柄は今年、金利上昇とエネルギーコストの高騰により大きな打撃を受けているという形で二極化しています。当社は、株式全体では引き続きディフェンシブな見方をしていますが、本日の株式レポートでは、バランスシートや経営指標が相対的に弱い企業よりも、営業利益への圧力が小さいと思われる株式特性をもつ「クオリティ」銘柄など、当社が好ましいと考えるテーマ銘柄をご紹介します。


投資家は不動産、IT、一般消費財株から逃避

欧州の株式は今年12.1%下落しましたが、景気減速と、歴史的なエネルギー危機が生活費を押し上げていることを考えれば、この水準は十分許容範囲内と言えます。結局、今年がそれほど悪い年とならなかった理由は、エネルギーセクターが今年、35.5%も上昇していることと、欧州株式市場は生活必需品とヘルスケア銘柄に大きく偏っておりこれらも好調だったことにあります。一部の公益企業に対する欧州政府からの救済措置が講じられていますが、そうしたなかでも、公益セクター全体は本来のディフェンシブな特性により持ち堪えています。

今年、真に打撃を受けたのは不動産セクターであり、利回りが急上昇し、住宅ローンのコストが押し上げられました。欧州の不動産セクターは過去5年間で24%下落し、投資家に利益をもたらしていないことは驚くべきことです。今後、インフレ抑制のために金融情勢(貸出状況等)が大幅に厳しくなるなか、同セクターはさらに逆風にさらされることになりそうです。ITセクターは、国債利回りの上昇による金利の影響を受けやすく、また株価下落により従業員のストックオプションの価値が低下し、営業費用が圧迫されています。最後に、一般消費財は先般の株式レポート「消費財株:歴史的なエネルギーコスト高により打撃」で述べましたように、生活費危機の影響を強く受けています。

当社のリサーチレポートを定期的にご覧いただいている皆様は、エネルギーが主にリターンを生み出す商品や、防衛、物流、再生可能エネルギーといった有形資産に関連するテーマに、当社が依然としてポジティブな見方をしていることをご存知でしょう。株式特性からは、様々な業種において、財務力の高い企業のほうが財務力の低い企業ほどには営業利益が圧迫されにくいことから、前者のディフェンシブな特性に注目することを投資家にお勧めしています。iShares Edge MSCI Europe Quality Factor UCITS ETFの上位10銘柄は以下のとおりです。これらの銘柄は投資推奨銘柄というわけではなく、様々な意味での「クオリティ」テーマ銘柄の一部です。クオリティ・ファクターの主なリスク要因のひとつは、これらの銘柄は株式バリュエーションが高いため、平均的な欧州株式よりも若干、金利に敏感であるということです。

ノボ・ノルディスク
ロシュ
ネステ
ASMLホールディング
LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン
ネスレ
リオ・ティント
ユニリーバ
ディアジオ
アリアンツ

最後に、当社の基本シナリオを再び示します。当社は引き続きディフェンシブであり、世界の株式市場は底打ち前にピークから約33%調整されるとみています。この見方は、脱グローバル化により従前よりもインフレが構造的に高進し、賃金上昇と利回り上昇により企業の営業利益が圧迫されるとの想定に基づくものです。

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