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Chief Investment Strategist
サマリー: 米大手銀JPモルガンチェースとウェルズ・ファーゴは13日、他行に先駆けて第4四半期の業績を公表しました。いずれも純金利収入見通しの悪化や貸倒引当金が予想以上に膨らんだことが市場のサプライズを誘い、S&P 500指数は一時前日比1%安と大きく下落しました。来週以降に本格化する米企業決算の初日は、株式のポジションを積み増したいと考えている投資家にとって、明らかに期待外れの内容となりました。来週の消費財最大手のP&G、ストリーミング大手Netflix、金属切削工具メーカーSandvikの決算が注目されます。
米銀4Q決算は振るわず
JPモルガン・チェースが13日発表した2022年第4四半期決算は、売上高356億ドル(予想:342億)、調整後1株利益3.57ドル(予想:3.10ドル)と、収益および利益段階でいずれも予想を上回ったものの、純金利収入見通しは730億ドルと予想(744億ドル)に届かなかったほか、貸倒引当金が23億ドルと予想(21億ドル)以上に膨らむなど、市場のサプライズを誘う内容となりました。これに対し、ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)景気の先行き不透明感は依然根強く、同行のマクロ経済見通しをやや下方修正したと説明しました。同日決算を公表したウェルズ・ファーゴは経常収益が予想を下回ったほか、貸倒引当金が予想の8.60億ドルに対して9.57億ドルと大きく積み上がったことがネガティブサプライズとなりました。マイク・サントマッシモ最高財務責任者(CFO)は、「さらなる景気後退に備えている」とコメントしています。ポジティブな動きとしては、同行がこれまで控えていた自社株買いを2023年第1四半期に再開します。13日に公表されたその他米銀の決算を受けて、S&P 500指数は一時、前日比1%安となる3,965近辺で取引されました。
第4四半期決算では利益率の悪化が課題に
米国では13日に第4四半期決算発表がスタートし、来週以降に本格化します。企業の利益率の悪化は前四半期の焦点となりましたが、第4四半期にも間違いなく重要なテーマとなるでしょう。コモディティ価格の高騰が鎮静化する中、各社のCEOは賃金上昇による利益率の悪化という課題に頭を悩ませています。個人消費支出が頭打ちとなる中、企業がコストの上昇をフルに価格転嫁する対応はすでに限界に達しています。その結果、企業は営業利益を犠牲にせざるを得ない状況に直面しています。これは、先月テスラが世界的な値下げに踏み切り、販売価格を5%~20%引き下げる決断を下したことなどからも明らかです。企業の粗利率は25%を下回ると、利益を圧迫し始めます。しかし、アナリスト予想によると今年テスラの純利益は前年同期比24%増となる見通しであり、同社の現状をまだ十分織り込んでいないようです。
株式市場の動きを見ると、S&P500指数の12ヶ月先予想EPS直近ピークから4%の低下にとどまっています。これは、市場ではリセッションを織り込むよりも、FRBが0.25%ポイントの利上げを2回だけ実施した後に金融引締めを一時停止し、米経済はソフトランディングするとのシナリオが優勢となっていることを示していると言えるでしょう。実際、アナリストは、S&P500種指数構成企業の12カ月先予想1株利益(EPS)は10%上昇すると予想していますが、予想のピーク水準からに4%の低下にとどまっています。ただ、市場のシナリオは極めて非現実的であり、2023年はネガティブサプライズが続く可能性が高いと当社は考えます。
来週は、消費財最大手のP&G、ストリーミング大手Netflix、金属切削工具メーカーSandvikなど、最も注目される決算が控えています。
19日のP&Gの決算は、市場の取引が開始する前に公表される予定です。アナリスト予想では売上高が前年同期比1.1%減、EPSが同4%減の1.59ドル、営業利益率は前四半期比で低下する見通しとなっており、個人消費支出がインフレ上昇によって頭打ちとなっている現状を反映しているようです。一方、中国の経済再開は同社の株価にアップサイドを提供する材料となっています。
19日の引け後にはNetflixの決算も公表されます。アナリストは前年同期比1.7%の増収となる一方、EPSは同67%減の0.51ドルを予想しており、ストリーミングサービスの需要は引き続きパンデミック後の反動減という逆風に晒されていると判断しているようです。今後は、新規ユーザーの伸びに加えて、新たな広告事業の展開や最新のコンテンツ拡充による既存ユーザーの確保への取り組みが注目されます。
また、スウェーデンを拠点とする金属加工工具・鉱山・岩盤掘削装置メーカーのSandvikは20日の取引開始前に決算を公表する予定です。アナリスト予想によると、売上高は前年同期比4.6%増、EPSは同11.5%増の3.51クローネとなる見通しです。コモディティのスーパーサイクルは依然として世界の金属・工業セクターの設備投資増強の強い追い風となっており、Sandvikなどのサプライヤはその恩恵を享受していることから、当社は同社に対してポジティブな見通しを維持しています。