為替アップデート:日銀のYCC修正ショックで円急騰 為替アップデート:日銀のYCC修正ショックで円急騰 為替アップデート:日銀のYCC修正ショックで円急騰

為替アップデート:日銀のYCC修正ショックで円急騰

FX
ジョン・ハーディ

FX戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  日銀は、イールドカーブ・コントロール政策(YCC)を一部修正し、10年国債利回りの許容上限を0.25%から0.5%に引き上げる決定を下し、世界の金融市場に衝撃を与えました。その他の中央銀行が引き締め政策のペースを減速しつつある中での日銀のサプライズ決定に円は総じて上昇し、各国の国債利回りは急伸しました。円にはまだ上昇余地があるものの、世界の債券市場の利回りが再び最近の下降トレンドに戻らない限り、足元の円高は間もなく頭打ちとなる可能性があります。


Today's Saxo Market Call podcast.
Today's Market Quick Take from the Saxo Strategy Team

トレードの焦点:日銀のサプライズで円は一段の上昇に向かう。年初の量的引締め(QT)開始を前にポンド安に注目

日銀は長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げ、市場のサプライズを誘いました。会合後の記者会見で黒田総裁は、これは「利上げではなく、YCC政策からの脱却や見直しを検討するには時期尚早だ」とコメントし、市場のショックを和らげるよう努めましたが、あまり効果はなかったようです。最近になって各国中銀が引き締めのペースをやや減速していることや、2024年第1四半期までにFRBの政策金利がドットプロットを下回るとの期待が高まっていただけに、今回の決定はより大きなサプライズとなりました。どうやら市場は黒田総裁があらゆる面で金融緩和政策を堅持し、来年4月の任期満了まで現行の政策に変更はないと確信していたようです。ただ、円が対米ドルでの直近安値から12%以上上昇したことや、コモディティ価格が大幅に下落している状況に照らせば、さらなる円高進行を回避するためにも、黒田総裁が現体制下で追加の政策調整を行う可能性は極めて低いと考えられます。そのため、円が一度リセットした後に上昇基調を維持できるか否かは、世界の債券市場の利回りの方向性に大きく左右されるものと予想されます。

市場は来年FRBの利上げがピーク達し、第4四半期までに利下げに転じるとの楽観的なシナリオを支持しているように見受けられます。ただ、米国の経済指標で景気の底堅さやインフレ圧力の継続が確認できれば、米国債の利回り(特にドル/円相場の重要な指標となる米国の長期債利回り)が足元、あるいはそれよりも高い水準で維持されることとなり、円高進行にもほどなく歯止めが掛かるでしょう。日米の10年債の利回り格差を見ると、ドル/円が135円付近で取引され、FRBが初めて0.75ポイントの利上げを行った今年6月中旬に、現サイクルのピークとなる325bpに達しています。これを踏まえると、足元のドル/円の水準はある意味「適正」な水準にあると判断できます。おそらくドル/円が130円まで切り下げるには、市場の期待どおりに日銀が来年4月以降にYCCから脱却するか、少なくとも追加の政策調整を行う必要があるでしょう。またそれだけでなく、例えば日銀の政策金利が+0.25%のプラスに転換する兆しや、FRBの政策金利に対する市場予想や米10年債利回りが足元、あるいはそれを下回る水準に低下することが必要となるかもしれません。もし米国債の利回りが足元の水準から下げ渋るようであれば、近いうちドル/円相場にふた通りの方向性が生じる可能性があると考えます。

メディアの見出しは今のところ日本円を大きく取り上げていますが、以下のGBPJPYチャートで示されているように、ポンド安にも注目する価値があります(本日EUR/GBPは時折高値を試しており、円高だけに注目すべきではありません)。

為替チャート:GBP/JPY
日銀が10年国債の利回り変動幅の上限を引き上げるという予想外の決定を下したため、円は急伸しました。これは、一見すると利回り上昇という明白な理由によって日本円に有利に働くとみられますが、皮肉なことに日銀はYCC政策に沿った利回りを維持するためにあらゆる手段を講じて国債を購入する必要に迫られてきました。今年に入り、利回りをコントロールするために量的金融緩和(QE) を実施したこともあり、日銀のバランスシートの拡大は加速しており、円安を悪化させる要因となりました。こうしたなか、今回のYCC修正は明らかに日銀への圧力を軽減することを意図したものと言えるでしょう。その他にも、最近、イングランド銀行が来年1月9日に開始する量的引き締め(QT)計画に英国債の購入を追加決定したことは、興味深いことです。これは実質的に金融引締め政策であり、理論的にはポンドの支援材料となりますが、同国の対外債務が膨れ上がっていることを踏まえると、英国は国債の需給悪化に対して最も敏感な国の一つとなっていると言えます。これは、新政権の緊縮財政策によって以前ほど喫緊の課題ではなくなりましたが、英長期債のイールドカーブが他の年限に比べてより大きく上昇する場合は、英国債の信用低下を示唆し、トラス前首相の「ミニ予算」が引き起こした一連の騒動ほどではないにせよ、GBP/JPYと日本国債と英国債の利回り格差が大きく拡大する可能性があり、英ポンドが再び圧力にさらされるサインに警戒すべきでしょう。先週のECBのタカ派的発言を受けてポンドは0.8700を上回る水準を付けましたが、今後の重要なバロメーターとしてEUR/GBPの動きが注目されます。また、GBP/JPYの158-160円も注目すべきエリアです。

Source: Saxo Group

図表:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
足元で円は急騰しましたが、局所的な動きからトレンドへと転換するのでしょうか?豪ドルは、ハト派的なオーストラリア準備銀行(RBA)や中国関連のリスクでこのところ下げに転じていますが、後者については、中国の感染状況が2020年初頭に各国に押し寄せたものと同様のパターンを辿っていることが確認できれば、旧正月(1月23日)以降に急速に同国を巡る懸念は払しょくされるかもしれません。カナダドルは戻りを試す展開となっていますが、トレンドを転換するには課題がまだ残されています。

Source: Bloomberg and Saxo Group

図表:通貨ペア別のスコアボード
日本円との通貨ペアは足元で全てマイナスに反転しているものの、このトレンドが数日以上継続するためには、各国の債券利回りの動向に何らか変化が生じる必要がありそうです。その他では、夜間取引でボラティリティが上昇した後、AUD/USD の動きに傾きが見られることは興味深い点です。このペアは、USD/CAD と共に、米ドル/G10通貨ペアで唯一米ドルに有利なトレンドとなっているため、マイナスに反転するかが注目されます。

Source: Bloomberg and Saxo Group

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。