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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: 欧州の銀行セクターを中心に世界の金融市場が大きく混乱する中、ECBは利上げの手綱を緩めることなく前回会合の公約通りに0.5%のサプライズ利上げに踏み切り、大きなサプライズとなりました。決定直後の市場では、銀行株が一段と下落する中でユーロが売られ、短期筋はECBの決定を過ちとして受け取ったようです。しかし、その後ラガード総裁の記者会見に入ると、不安定な値動きとなりました。
Today's Saxo Market Call podcast
Today's Global Market Quick Take: Europe from the Saxo Strategy Team
トレードの焦点:ECBは計画通りに大幅利上げに動き、ユーロは弱含みの展開に
ECBは公約通りに0.50%の大幅利上げを決定し、中銀預金金利を3.00%に引き上げ、大きなサプライズとなりました。金融市場の混乱を受けて市場では利上げの見送りか0.25%の小幅な利上げ(全体では0.28%程度)を織り込んでいたこともあり、今回の決定は予想を大きく上回るものとなりました。サプライズを誘ったECBの決定自体にとどまらず、直後の市場の反応も興味深い展開となり、クレディスイスがスイス国立銀行から資金支援策を得るとの報道が一時的にセンチメントを下支えしたものの、その後はECBの決定を受けて銀行株に一段と下押し圧力が掛かり、ユーロは下落し金が上昇する一方でリスクセンチメントは後退する流れとなりました。また、ドイツ2年国債の利回りは2.50%を下回る直近の低水準近辺で推移し、ほぼ横這いで取引を終えています。これらの市場の動きからは、インフレ対策を優先して大幅な利上げを断行するECBが、政策を見誤っているとの見方が当初は優勢であったものとみられます。ただ、ラガルド総裁が会合後の記者会見が進行するにつれて、一部の市場の反応はすでに後退しつつあります。
今回の決定を正当化するために、ECBはインフレは「過度に長い期間にわたって、あまりに高すぎる水準にとどまると予想される」と述べた上で「データに依存したアプローチの重要性が増している」とし、利上げのフォワードガイダンスを明示することを避けました。また、声明文の2パラグラフ目では「市場の緊張」について言及し、復元力の高い欧州の銀行システムと「機能性を十分に備えた」ECBの「政策手段」政策を支持しました。また、最新のECBスタッフ見通しは「現在の金融市場の緊張が生じる前に」示されたものであり、「このところの市場の緊張は、インフレと成長に関する基調的な評価において一段の不確実性が存在していることを示している」と指摘しています。
図表:ユーロ/ドル
前述した通り、当初の市場の反応はECBが政策を誤ったとの見方が優勢であったため、ECBの決定直後はユーロ/ドルに幾らか下押し圧力が掛かったものの、ラガルド総裁の記者会見が始まってからは(現在も進行中)不安定な値動きとなっています。来週水曜にはFOMC(本日のECBの決定を受けてFRBの利上げにさほどの影響が生じない可能性がある)を控えており、来週は今後の市場の動向を左右する極めて重要な時期となります。ユーロ/ドルはリスクセンチメントの方向に沿った相場展開が予想されます。なお、米規制当局が規模にかかわらず預金者に対する全額保護(またそれが今後の米銀の監視体制に与える影響)に動く一方で、急激な金融引締めによって多くの銀行が難しい課題に直面していることへの認識が高まる中で、預金者は安全な逃避先やリターンを求め、より利回りの高いMMFや米国債にシフトする可能性があることを踏まえると、特に銀行株の動向は市場が安定を取り戻すのか、あるいは突発的に生じた地殻変動にこのまま振り回され続けるのか判断が待たれる中で、今後のリスクセンチメントを大きく左右するものとみられます。銀行が全体的に「短期の預金で調達して、長期の貸出で運用する」といったモデルに依存したままで資金調達コストが上昇すれば、いずれは信用収縮をもたらすことになりますが、すでにその兆候はクレジットスプレッドの動向に現れており、特にワイド化のペースが加速しつつある欧州の市場には注意が必要です。なお、ユーロ/ドルの動きに戻ると、本日の取引では直近の下値である1.0516は200日移動平均線の1.0325に向けて一段と切り下がる節目となります。一方、再び足場固めやアップサイドを狙う場合は、センチメントが大きく変化し、終値が1.0700を上回る必要があります。
図表:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
ノルウェークローネ(NOK)はリスク回避の流れと原油価格の下落が続く中で最も大きく売られました。このところのユーロの上昇の大半は巻き戻され、今後は金融不安が落ち着きを取り戻すかどうかにかかっています。低金利の円は引き続き安全資産としてのメリットを享受していますが、本日のECB会合後は非常に値動きの荒い展開となっています。
図表:通貨ペア別のスコアボード
ユーロ/ドルの日中の値動きは前述の通りでユーロ/円にも同様の動きが見られるものの、ユーロはドルよりも円に対してより大きく下落(ただし、チャートではここ数か月間にわたって乱高下し易い傾向が見られます)しています。