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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: パウエルFRB議長は、本日の利上げで慎重なスタンスを示すか、利上げを見送ることで極めて慎重な見方を示すかという対応不可能な課題に直面しているだけでなく、フォワードガイダンスを巡ってさらに困難な課題を抱えています。そのため、本日のFOMCの決定とガイダンスに対する市場の反応は、一筋縄ではいかないかもしれません。その他、今朝の英国消費者物価指数(CPI)では、明日のイングランド銀行(BOE)の利上げがほぼ確実であると市場は判断しています。
Today's Saxo Market Call podcast
Today's Global Market Quick Take: Europe from the Saxo Strategy Team
トレードの焦点: FRBはフォワードガイダンスという無理難題に直面:明日のBOEを前に、英国CPIを受けて英ポンドが上昇
ここ数日の間に市場のボラティリティはかなり落ち着き、市場は今日のFOMCでFRBが25bpの利上げ(欧州では今朝の時点で21bpsの利上げを予想)を行う確率がかなり高いと予想しています。その結果、金利は4.75-5.00%で推移する見通しであり、次の会合かそれ以降の会合でさらに利上げする確率はわずかとなり、その後第4四半期までに緩和を開始することになると予想しているようです。FRBの利上げに対する「予想」は、ここ数週間、投資家やトレーダーが銀行危機の混乱から逃れるために、特に国債カーブの短期ゾーンを中心に米国債市場が大きく買われたことに大きく影響されるからです。
では、FRBはどうするのでしょうか?ダドリー前NY連銀総裁でさえ、Bloombergの記事で良い選択肢が思いつかず、FRBが利上げに失敗すれば、何か深刻な問題があると市場がおびえる一方で、「銀行不安」が悪化すれば、利上げを急ぎすぎたという政策の誤りを悪化させるというリスクを指摘しています。同様に重要なのは、FRBの決定直後とその後の数日間で、市場がどのような反応を示すかということです。先週のECB理事会では、中央銀行の動きに対して市場がいかに速やかに考えを変えることができるかが示されました。いずれにせよ、以下のEURUSDの図表が示すように、FRBのガイダンスに基づくイールドスプレッドへの影響を考慮するよりも、多くの指標のセンチメントの動向に注目すべきであると考えます。
また、最近のレポートで述べたように、銀行にとっての根本的な課題は、銀行の安定性に対する懸念から預金者が逃げ出すことよりも、貯蓄に対してより高いリターンを求め、国債など銀行の外に資金を保管する可能性があるということです。今日のSaxo Market Callのポッドキャストでは、米国の商業銀行の預金残高が全体的に減少しており、これはまったく前例がない現象であることを指摘しています。もはや伝統的な中央銀行の政策では対処できない問題となっています。
図表:EURUSD
今夜のFOMCをきっかけにユーロがどのような動きを見せるかは、FRBの金融政策に関する発言よりも、FRBの決定やガイダンスに対するリスクセンチメントの反応に相関する可能性が高いでしょう。現在の2年国債利回りのスプレッドを、銀行危機で市場に混乱が生じた前日の3月8日の水準と比較してみると、ユーロに35bp程度有利な水準となっており、欧州市場ではFRBの利上げについてより低い予想が織り込まれています。これまで市場の混乱期には、相対的にユーロが有利になることが多かったものの、市場が混乱している限り投資家は安全な逃避先(最近では米ドル、特に日本円)を見つけざるを得ません。以下のEURUSDの図表では、1.1000の手前の最終的な上値抵抗線1.0800-50に注目し、今日のFOMC後にさらなる市場の混乱が発生し、米ドルが安全な避難場所として機能する場合、弱気シナリオに反転(1.0700を大きく下回る水準)すると考えています。
その他には、2月の英国消費者物価指数(CPI)の総合指数は前月比1.1%、前年比10.4%と、1月の予想値0.6%、9.9%、10.1%から急上昇し、コア指数も6.2%と1月の予想値5.7%、5.8%と比べ驚異的な伸びとなり、市場のサプライズを誘いました。このため、BOEは前回の会合後に明らかに利上げを休止する口実を探していたものの、市場は明日のBOEの利上げをほぼ100%の確率で予想しています。また、3月1日のベイリー総裁の「BOEは利上げサイクルの終わりに来ている可能性がある」というコメントや2月の会合での「今年末までに4%以下、2年後に総合CPIを1%にする」という非常に積極的なディスインフレ予測を忘れるべきではありません。ポンドは、昨日、特にユーロに対して大きく下落しましたが、今日は反転し、米ドルに対して直近高値を更新しています。
図表:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
ドル円は再び下落に転じていますが、今夜のFOMCの反応関数が不透明であることから、グリーンバックがどちらかの方向に「確認」のシグナルを出すには、おそらく金曜日の取引終了まで時間が必要です。今日の英国CPI(および昨日の弱含み)の後、G10のトレンドリストのトップにポンドがあるのは目新しい変化です。
図表:通貨ペア別のスコアボード
FOMCの発表に備えてほぼ全ての通貨ペアが米ドルに対して下落に転じています。明日のBOEの会合を前に、ポンドはほぼすべてのペアでプラスに転じていますが、本日の強いインフレ指標はBOEを困惑させるものとなりました。