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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: FOMCが無風通過した後に米国債利回りが横ばいであることから、円は堅調に推移しています。ECBも、全世界がトランプ関税の全体像が明らかになるのを待っている中、筋書きを変える可能性は低いと思われます。
FOMCの会合は、米国債利回りと米ドルにほとんど波紋を広げることなく過ぎていきましたが、これは背景にある事情に非常によく適合しています。つまり、市場は、FRBの決定やガイダンスを待っているのではなく、経済指標に関する結果と、それらの結果を牽引するだろう今後の政策の動き、つまりトランプ政権からの政策の動向を見守っているのです。トランプ大統領は今のところ最初に動く人、いわゆるラテン語でPrimus Motor(原動力)であり、 彼の政権の関税強化のスケジュールの明確な概要と、関税が引き上げられるかどうかについてのペース、そして世界の他の地域からのその後の反応が得られるまで、その状態が続くでしょう。関税スケジュールがわかれば、市場の価格がどの辺りにあるかがわかります。一部の商品市場においてニューヨークの銅のプレミアムがロンドンの価格に比べて上昇していることは、関税引き上げが価格に織り込まれてきているのが本当であり、それが特定の市場ですでに具現化していることを示しています。それが通貨やより広範なリスクセンチメントにも当てはまるかどうかはともかくとして、です。ところで、トランプ大統領がカナダとメキシコ、さらにはEUに対する関税に関する以前のコメントに関連して2月1日に言及したことを考えると、週末にはここで市場が神経質になる可能性があります。
トランプ大統領の次の動きが市場の注目を独占する一方で、今週のDeepSeekのニュースにより、主要な市場セクターに何らかの影響が続く可能性があると思わざるを得ません。MicrosoftやMetaなど、今週最初に報告した主要企業は、DeepSeekについてポジティブな響き以上のコメントを出しました。例えば、Microsoft社のCEOは、「Meta社CEOのMark Zackerberg氏は自社のハードウェア・インフラへの設備投資支出を擁護しました。また、我が社Microsoftはクラウドサービスの容量に制約があり、すでにAzureサービスでDeepSeekを顧客に提供しているため、DeepSeekに関するニュースは『すべて良いニュース』です」と述べました。DeepSeekの導入がハイエンドチップハードウェアと関連クラウドサービスの需要を食いつぶすかどうかは、おそらく次の四半期にしかわかりません。(この記事は株式に関するコラムではありませんが、Nvidiaを含む米国のハイテク株が世界市場を支配しているため、この問題はリスクセンチメントにとって重要です。)
そうでなければ、明日には12月のPCEインフレデーターの発表が控えており、その経済指標がどちらかの方向にも大きなサプライズを生み出さない限り、この発表はちょっとした気晴らしとなるでしょう。来週は、通常のISMと金曜日の雇用統計という、より重要な米国の経済指標の発表がありますが、ここでも、大きな方向性のサプライズがあった場合だけ市場の注目を集めるでしょう。より興味深いのは、来週木曜日に行われるイングランド銀行の脇筋的な発表で、市場が英国の成長リスクを織り込んでいる以上に、イングランド銀行はハト派的な姿勢をとることになるかもしれません。ユーロ/ポンド(EURGBP)は、0.8450まで大きく動いた後、ポンドの相対的な強さを幅広く読み、今日は0.8325-50の最終的な実質サポートゾーン付近まで後退しました。
ECBは本日の会合とユーロ圏の窮状
ECBは本日、25ベーシスポイントの利下げを行い、見通しについて多くの不確実性を表明する一方で、おそらく3月の追加利下げを示唆するでしょう(ただし、「事前コミット」はしないと述べ、その後にさらなる不確実性が生じると思われます。)。これは、上記で述べているように、財政支配と米国の先駆者としての地位という新時代において、世界中で繰り返し言われる決まり文句です。クロス通貨ペア(例えば、ユーロ円(EURJPY)、等)では、明日のドイツと月曜日のユーロ圏からの1月の速報インフレ率の発表に若干の焦点が当てられる可能性があります。
チャート:ユーロ/米ドル(EURUSD)
ユーロ/米ドル(EURUSD)は、1.0500+エリアへの挑戦を断固として拒否し、3本のローソク足の宵の明星を形成し、堅固なレジスタンスを設定しましたが、1.0350-1.0325ゾーンを突破できない限り、このユーロ上昇の波の拒否はまだ完全にはされていません。この通貨ペアが今後数週間で安値に挑戦し、パリティに照準を合わせるためには、いくつかの関税に関するニュースが必要となるでしょう。
本日発表されたドイツの第4四半期GDP(前四半期比:-0.2%)は、営業日調整ベースで0.0%ですが、どちらも予想を0.1%下回りました。欧州は悲惨な長期成長見通しに対応しようとしていますが、それがかえって米国に、EU製品の主要な輸出先を脅かす関税強化という障壁を築かせることとなっています。また、ロシアのガスを遮断していることから高コストの再生可能エネルギー源に依存せざるを得ず、エネルギーコストの高騰に苦しんでいます。 また、欧州は、自動車のような伝統的なEUの中核産業において、安価ではあるものの質がますます高くなっている、国家が支援する中国の輸出品と競争していることに気づき始めています。昨日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は、EUの競争力を取り戻す方法についての、元ECB総裁であるマリオ・ドラギ氏の報告書に基づく、多くのアイデアをまとめた26ページの「Competitive Compass」を発表しました。この新しいレポートでは、バイオテクノロジー、宇宙、量子コンピューティング、先端材料技術に関する「行動計画」から、手頃な価格のエネルギーや脱炭素化までについて、今後5年間のあらゆる対策をまとめています。もちろん、これは企業の規制上の負担を軽減しながらのことです。新たな地政学的背景について思慮深いリーダーを務めたRabobankのMichael Everyが LinkedInの投稿で指摘しているように、それはすべて非常にトップダウンな内容です。彼は、「目にするのは、高価で、資金の裏付けがなく、超野心的で、頭字語的な、トップダウンの、PowerPointを使ったプレゼンにより決定の下される(机上の)EU産業政策であり、抜本的な改革と絶え間ない監視を必要とするだろう。政策については、…どういうわけか事務処理を削減し、より活発に常に発展し続けてはいますが、現在、EU各国政府からの賛同はほとんど得られていません。」と述べています。EUのエネルギーコスト上昇についての緊急事態に関しては、今日のFinancial Timesの記事を見ると興味深いです。「EUの議論は、ウクライナ和平協定に関する議論の一部として、結局、ロシア産ガス供給の問題に帰結します」。
表:主要10通貨とCNHのFXボードについての、トレンド展開とその強さ
注:FXボードのトレンド・インジケーターは相対的なスケールのみ表示しており、ボラティリティが調整されています。絶対値 2 未満の値はかなり弱いですが、3 を超える値は非常に強く、6 を超える値は非常に強いことを示しています。
米国債利回りが後退する中で円高が進んでいるのは、現在、最も興味深い動きです。他通貨と比べて一番の円の強さが続くためには、米国10年債利回りが4.50%まで低下する必要があります。その他、豪ドルは今週初めの軟調なCPIを受けて下落しましたが、トランプ大統領の関税強化政策がどのような形になるのかが明らかになってしまえば、中国通貨がどこに向かっているのかがわからない状況でこの動きに歯止めをかけるのは難しいでしょう。
表:個々の通貨ペアのFXボード・トレンドスコアボード
ATR(Average True Range、真の変動幅平均)の測定値には濃い青色が多く、非常に静かな市場を表していますが、中国元(CNY)の方向性をめぐる不確実性により、通貨の多くについて、中国元の強さ等のバロメーターが係留(アンカリング)している、アンチポディアン(対蹠地の)・クロスの状態にあります。ユーロ/ドル(EURUSD)、ドル/円(USDJPY)、ポンド/ドル(GBPUSD)などの主要な米ドル・クロス通貨ペアでは、ATRの測定値は「Warm(黄色の)」ゾーンにあります。注:ユーロ/ポンド(EURGBP)は、ここで強い上昇線(ラリー・バー)上に位置できなければ、弱気トレンドに傾いていくでしょう。