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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: トランプ政権のホワイトハウスは、見出しや大統領令を次々と発表していますが、市場の中心的な問題である「来るべき関税があるとすれば、どのような形になるのか」には答えていません。
トランプ新政権が発足して4日が経ちましたが、今週のトランプ・ホワイトハウスからの大統領令が大量に発表されたにもかかわらず、市場ではそれらを鵜吞みにする動きはほとんどありません。確かに、トランプ大統領から関税に関するコメントは絶え間なく寄せられていますが、具体的な政策ガイダンスはありませんでした。今週の最新のコメントは、火曜日に中国がカナダとメキシコを経由して米国にフェンタニルを送っているという告発に対して、中国に対して10%の関税を課すと脅したことでした。トランプ大統領はまた、「欧州連合は我々にとって非常に、非常に悪い、、、だから、彼らは関税を受けることになる」と、ヨーロッパに対する非難を繰り返しました。昨日遅くには、彼はロシアを標的にしましたが、興味深いことに、(アメリカ‐ロシア間の直接貿易以来、ロシアと取引をする国々を標的にしながら)ロシアの間接的なアプローチについても言及しました。反応は最小限にとどまっており、米ドル/ロシアルーブル(USDRUB)は数ヶ月ぶりの安値付近でも推移しています。それでも、以下で説明するように関税が課せられる可能性があります。今のところ、市場は様子見モードにあるように見えます。
チャート:ユーロ/米ドル
昨日は、12月30日の高値1.0458を突破しなかったものの、1.0437のローカルレジスタンス(局部抵抗線)で、ユーロ/米ドル(EURUSD)にとってかなり重要な戦術的な領域に小競り合いが見られました。これは、チャートを1.0600レベルまで開くための重要な領域です。このような動きとなるには、市場において、トランプ大統領の関税計画に関するより確固たる知識について基本的な支持が得られること、もしくは2017年にあったようにトランプ氏が交渉の道を進み、問題を地平線の向こうに先送りすることにしたという発表のあることが必要になる可能性が高いです。トランプ氏の就任演説前の月曜日に出た(トランプ大統領が連邦政府機関に対して、すぐに関税を課すのではなく、中国や他の国に対する調査を開始するよう命じたという)WSJの記事を背景に、それまでの投げが投げを呼ぶ大幅な下げが巻き戻しとなりましたが、1.0350-25を下回る動きはこの直近の活発な急騰の失敗を示しており、弱気派はまだ活気を取り戻すことができていません。
今後の数日間と来週に向けた3つの重要な質問:
日銀:日銀の利上げやガイダンスよりも米国の利回りが重要なのか?
日本銀行が今夜25ベーシスポイントの利上げを実施するだろうと95%の確率で予想されており、市場は約25ベーシスポイントの引き締めを織り込みつつあります。12月初旬から世界の利回りが特に欧州で(債券市場での先行行動と比較して)大幅に上昇したため、この利上げに対する期待の高まりは、一貫して円を支えることはできませんでした。つまり、日銀による引き締めが期待される一方で、ECBは緩和路線を続けており、今年のECBの大幅な緩和が織り込まれているため、2年物ユーロ債と日本国債の利回りスプレッドは12月の安値よりもはるかに広がっているのです。私は、ECBが現在織り込まれているよりもさらに利下げを行う可能性があると考えています(今年度、100ベーシスポイント弱の緩和に対して、150ベーシスポイント程度の利下げの予想)。そして、2025年は、市場が予想するよりもディスインフレが進む可能性があります。戦術的には、円はどちらの方向にも向かうことができますが、今年後半には持続的な強さを確かなものにするとみています。
しかし、最終的には、米国の長期金利が円の見通しを支配しているように思われるため、米ドル/円(USDJPY)に上限を設けて大幅に下げるには、米国10年物国債のベンチマークが主要な4.50%の水準を大幅に下回る必要があり、リスク選好にも痛みを感じる可能性があります。ところで、最近の米ドル/円(USDJPY)の158.00を超える値動きは、特に米国債のボラティリティを考えると、少し怪しいように見えました。つまり、日本の財務省が介入しているのではないかと推測します。
関税引き上げが近づいていますが、市場は自己満足しすぎているでしょうか。
私たちは皆、トランプ関税が広範囲に課されるのか、それとも対象が絞られるのか(あるいはその両方、例えば、特定の製品カテゴリーや国を特に高い関税の対象とするのか)、そして事前に決められたスケジュールで着実に引き上げられるのか、その全体像が形作られるのを待っています。トランプの就任演説の数時間前に発表されたWSJの記事は、政権が決断を下す前に連邦機関が調査する間、私たちにはいくらかの時間の余裕があることを示唆していた。政権が決断を下す前の連邦機関の調査には理論的には数カ月かかる可能性があり、その後、トランプ政権が対象国と交渉する間、さらに数カ月かかる可能性があります。これは基本的に、トランプ大統領が中国と取引について交渉することが明らかになった2017年にとられた作戦です。2022年初頭に合意されたその取引の「フェーズ1」では、結局中国が、中国側の約束を果たすことはなく、パンデミックの発生により行き届かなかったとして帳消しにしました。控えめな結果しかもたらさず、取引の積み替えなどを手段とした多くの合意内容の不履行しかもたらさなかったことを考えると、トランプ大統領がこの歴史を繰り返す忍耐力を持っている可能性は極めて低いと考えられます。
米国大統領の2期目は、レガシーを築くことがすべてであり、大統領の任期は毎回、2年後の中間選挙で避けられない、チクタクと秒を刻む時計の音(限られた時間枠の中でいかに創造性を発揮するか)について心配することです。したがって、遅かれ早かれ行動することは、レガシーの構築を開始し、うまくいけば(政権の視点から)関税を課すことによる市場の混乱の反対側に活動の陣地を置き、中間選挙で共和党が優位に立つためのチャネルを強化するのに役立ちます。したがって、連邦政府機関が報告書を出すのには数週間かかるかもしれませんが、トランプ大統領のチームはすでに念入りに計画を練っている可能性が高く、特に今回は、望ましい行動の変化を詳しく説明し、関税の対象国が遵守しない場合にはますます厳しくなる関税スケジュールで脅すという、トランプ大統領のスタイルの特徴に沿った形をとるのではないかと思われます。トランプ大統領は早ければ2月1日にも動くことができるでしょう。はい、おそらくですが、彼は動くでしょう。彼はただで対外歳入庁(External Revenue Service)を創設したわけではありません。
リスクセンチメントは、表面的に見えるよりも神経質なのでしょうか?
表面的には、リスクについての投資家センチメントとしては現状に満足しているように見えます。ちょうど昨日は、Netflixの素晴らしい収益と、Softbank、Oracle、OpenAIによるAIインフラ投資の大騒ぎである「スターゲイト」計画の発表があり、さまざまなAI株を盛り上げています。しかし、以前の売りからの株価の急激な回復にも関わらず、神経質になる理由はたくさんあります。まず、上述したように、トランプの関税には既知の未知数があります。しかし、例えば、VIXが低く推移しているにも関わらず、市場がとても神経質な状態となっている兆候が見られます。その1つがCBOEのスキュー指数で、市場参加者がディープなアウト・オブ・ザ・マネーとなっているプット・オプションに支払っているプレミアムの金額を測定しています。昨日の最近のスキュー指数の数字が、市場の神経質な状態を物語っています。明らかに、これは部分的にはトランプの関税を恐れて保険を買う動きを意味していますが、神経質な市場を示唆しています。ちなみに、過去の著しく高いスキュー指数の値は、1か月の市場リターンの低迷と相関していませんでした。
関税の発表で広範なリスクオフが見受けられるとすれば、私は利回りが低下し、米ドルと円がアウトパフォームする一方で、ユーロは低迷し、カナダドルとメキシコペソも同様の状況になると予想しています。豪ドルが弱含みの通貨に加わるかどうかは、中国が米ドル/人民元(USDCNH)の「上限」である7.375の水準を試すことを許すかどうかにかかっています。
月曜日には、また来週一週間について見てみましょう。来週は、FOMCのようなイベントが予定されています。この財政政策優位の時代にはこれらのイベントはトランプ大統領の動向に関するニュースの影に隠れていますが、来週はイベントリスクの高い一週間となっています。
表:主要10か国通貨(G10)と人民元(CNH)についてのトレンドの進展とその強さ
注記:FXボードのトレンドインジケーターは相対的なスケールのみ表示しており、ボラティリティが調整されています。絶対値 2 未満の値はかなり弱いですが、3 を超える値は非常に強く、6 を超える値は非常に強いです。
FXボードは、日本円が強含んだ後、切り返して再度弱含んでおり、ここでは市場がいかに優柔不断に見えるかを示しており、直近で米ドルは逆トレンドの下落に見舞われています。ポンドの弱さだけが、全体的な金の強さ以外に広く目立っています。
表:個々の通貨ペアのFXボード・トレンドスコアボード
個々の通貨ペアでは、多くの場所で非常に低い真の値幅の平均(ATR、アベレージ・トゥルー・レンジ)となっており、かなり凍り付いたような実現ボラティリティの水準となっていますが、ユーロ/米ドル(EUR/USD)と英ポンド/米ドル(GBP/USD)のATRはかなり高い(薄いオレンジ色の影)一方で、JPYのボラティリティははるかに高い水準から緩和されていることに注意してください。ユーロ/米ドル(EUR/USD)の上昇トレンドは、上記のように実際には確認されていません。