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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: 18日に終わった政策会合で日銀が追加の政策修正を見送ったことを受け、外国為替市場では日本円が全面安の展開となりました。どうやら黒田総裁は緩和政策からの出口に向かっている方向性を示しつつも、大きな追加政策修正を行うことなく4月の退任を迎えることになりそうです。日銀の決定を受けて円は大きく売られたものの、ソフトランディングを見越して世界の債券市場で利回りが低下する中、足元の円安はそれほど長く続かない可能性があります。その他の動きとして、潤沢な流動性を背景に米ドルが弱含みで推移しています。
Today's Saxo Market Call podcast.
Today's Market Quick Take from the Saxo Strategy Team
日銀は政策修正を見送り - 円売り加速も、米ドルは流動性拡大で弱含む
日銀は利上げ転換に向けた新たな政策修正行わずに終わっただけでなく、日銀への担保の差し入れと引き換えに、銀行に貸付期間10年の融資を提供する資金供給策の拡充を決定しました。また、来週は5年国債の入札を実施します。黒田総裁は記者会見で消費者物価指数(CPI)は年末までに2%を割り込む見通しであり、インフレ達成が実現されたと宣言するのは時期尚早であるとの見方を示し、物価目標達成へのコミットメントを頑なに堅持する姿勢を強調しました。夜間取引の動きを見ても明らかな通り、市場は日銀が長期金利の許容変動幅を拡大し、タカ派的なガイダンスを示すリスクを少なからず織り込んでいたとみられ、期近のオプションのプレミアムは過去数年間で最も高い水準に上昇するなど、日銀の政策据え置きで警戒感が後退する中、巻き戻しの動きが急速に強まりました。
しかし、急速な円売りがその後数時間で失速したことの方が、むしろ興味深い動きであったと言えます。金融政策を巡るサプライズは、必ずしも夜間取引で新たな円売り優勢のトレンドを醸成するほどのインパクトを持たない可能性があることに留意すべきでしょう。そのひとつ目の理由は、世界的な債券利回りの低下はすでに円相場のサポート要因となっており、インフレ加速に対する警戒感の高まりによって各国の利回りが上昇に転じない限り、新たな円売りの波は生じにくいと考えられることです。日銀はこうした世界的な流れに大きく後れを取っているとみられます。二つ目に、黒田総裁が4月に退任し、次期総裁が向こう数週間で任命されることも、円を下支えする要因となっていると考えられます。3つ目に、今後も米国の経済指標が悪化を続け、米10年国債利回りが現サイクルのボトムに達するような局面では、日本円が全面高に転じる可能性があります。いずれにせよ、経済指標の悪化による先行き懸念の高まりは、急激なクロス円の上昇につながるでしょう(詳細は後述します)。
図表: 米ドル/円
日銀の政策修正見送りを受けて米ドル/円は急騰したものの、欧州外為市場の正午までにはその大半が巻き戻されました。前述した黒田総裁の頑な政策スタンスをよそに、足元の環境は引き続き日本円を下支えする展開となっています。加えて、米財務省がFRBの量的引締めを上回るペースで政府預金残高圧縮を進める中での流動性の拡大を背景に、米ドルが総じて弱含んで推移したことも円売り加速に歯止めが掛かる要因となりました。また、先日FRBが公表した週次ベースの準備預金額が2500億ドル近く拡大する一方、レポファシリティーはほぼ同じ規模で減少しています。
米ドルは昨日に続き弱含みで推移しており、前述の米ドルの流動性と相まって、日銀による巨額の流動性供給は、引き続き米ドルの弱気筋にとって追い風となるでしょう。一方、今朝になりECB政策委員会メンバーのビレロイ氏が昨日午後に広がった「一部の政策当局者の間で2月の理事会で0.5%の利上げを行い、その後の会合では利上げ幅を0.25%に縮小するシナリオを支持する動きが広がっている」との報道を否定したことで、ユーロ/米ドルは大きく反発しました。
ポンドは英12月雇用統計が労働市場の底堅さと賃金加速の傾向を示した(季節要因の影響を精査する必要があるため、1月と2月のデータで動向をさらに確認する必要あり)ことで勢いよく上昇し、その後も特に今朝公表された英12月消費者物価指数(CPI)が予想よりやや上振れる内容となり、ポンド高は一段と加速しています。この中、ユーロ/ポンドは急落し、英国の経済指標の堅調さを維持すれば、今後は0.8550に向けて下値を模索する展開が予想されます。また、ポンド/米ドルは足元で1.2385の高値圏で取引されており、12月に付けた直近高値の1.2446も視野に入ってきました。
金属が新たな上昇局面を迎えていることや、足元のドル安を鑑みると豪ドル/米ドルは、足元で0.7000を上抜けしづらいように見えますが、今夜の豪雇用統計の発表を控えて様子見姿勢となっている可能性があります。来週は、豪第4四半期のCPIが公表されます。
明日はノルウェー銀行の金融政策決定会合が行われる予定ですが、再び0.25%の利上げを行うか否かは、見方はほぼ半々のようです。ノルウェーの短期国債の利回り上昇は急速に鈍化し、昨年8月以来の低水準を付けており、今回あるいは次回会合で利上げがあったとしてもそれが最後となり、中銀はハト派のガイダンスを示す可能性が高いことを示唆しています。ノルウェー国債の利回りの低下とは別に、クローネはリスクセンチメントの改善や原油生産の拡大に下支えされ、直近のレンジを上振れて推移しており、売り買いが拮抗しています。
図表:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
米ドルは、主要通貨の中で最も下落基調を辿っており、下値を探る展開となっています。人民元の変動が目立つのは興味深く、以前ほど密接ではないにしても再び米ドルに相関する傾向に戻っている可能性も考えられます。日本円が再び下落トレンド入りするか否かの判断を下すには時期尚早であり、まずは今週末まで相場の動きを確認する必要があるでしょう。
図表:通貨ペア別のスコアボード
ユーロ/ポンドはしばらく膠着状態を続けた後、足元で大きく売られています。足元の水準を割り込むならば、直近の上昇基調は反転するでしょう。ユーロ/フランは直近の上昇分を一気に巻き戻す展開となりまししたが、今後も足元のトレンドが継続するか否かを見極めるには、明日の展開を待つべきでしょう。
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