日本円:介入警戒か、日銀警戒か- JPY: Intervention alert, or a BOJ alert?

FX 4 minutes to read
チャル・チャナナ

チーフ・インベストメント・ストラテジスト

サマリー:  日本、韓国、米国の当局者による3カ国協議と、米国が介入を容認する可能性を示唆するG7声明を受けて、円に対する介入の脅威が高まっています。日本の当局者が米ドル円の155円のラインを守るために警戒を強めると信じる理由があり、米ドルの上昇ペースの鈍化と来週の日銀会合によって、介入がより効果的になる可能性もあります。


米ドル円が、4月10日に152円の節目を超え、4月15日には154円を突破するなど、日本円については、ここ数週間は介入警戒が続いていました。米経済の底堅さ、根強いインフレ、FRB(連邦準備制度理事会)メンバーによる緩和期待の後退を背景に、米国債利回りは過去最高を更新し、円の重しとなりました。

しかしながら、日本当局は口先介入しかしませんでした。米国債利回りが上昇している環境では、実際の介入は無駄になった可能性があるため、これは完全に理にかなっていました。場当たり的な反応で米ドル円が150円に戻ったかもしれませんが、日米の利回り格差が大きくかつ拡大していることから、その動きはすぐに反転した可能性があります。
しかしながら、介入の脅威が現在高まっており、当局が155円のラインを守ろうとしていると考える理由があります。


1.FRBのタカ派的な政策金利変更は現在終わりに近い可能性

堅調な米経済指標と、FRBメンバーによる金利引き下げ期待の後退は、市場にほぼ織り込まれています。市場はFRBが11月に初めて本格的な利下げを実施すると予想し、年内の利下げ予想は2回を下回っています。ここ数日のドル高への抵抗にはためらいが見られたかもしれませんが、ドル高も今はピークに近づいているようです。

2.他のアジア通貨にも下落圧力

円は対ドルで月初来1.7%安、韓国ウォン (KRW) とインドネシアルピア (IDR) はそれぞれ1.9%安となっています。インドルピー (INR) は水曜日、史上最安値に下落しました。ドル高はアジア通貨にとって逆風となっており、そのため、日韓の財務大臣が協調して3カ国会議で米国と協議することになりました。

3.G7のコメントは国際協調の可能性を示唆

ワシントンでG7が開催されている中で、ジャネット・イエレン米財務長官が日韓当局の為替に対する懸念に留意したという報道がありました。協調介入の余地はまだ小さいかもしれませんが、これらのコメントは、米国当局が日本 (または韓国) からの介入を容認し、為替操作国としてレッテルを貼られるリスクに対処していることを示唆しています。

4.来週の日銀会合

次の日銀会合は4月26日に予定されていますが、植田総裁は円のインフレ期待に与える影響が重要だと述べています。円安はエネルギーの輸入コストを押し上げます。このため、日銀のサプライズ利上げか、少なくとも追加利上げに繋がるタカ派姿勢となる可能性があります。これにより、介入に対する反応が継続しやすくなる可能性があります。
一層の警告はまたしても時間稼ぎかもしれませんが、日本当局が米ドル円の155円のラインを守ろうとしていることは明らかなように思われます。円への介入により、米ドル円が150円を試す展開になるかもしれません。そうなれば、日本株の上昇も止まる可能性があります。



出典:ブルームバーグ

また、
本稿で述べているように、中国当局が21円超えを懸念しているオフショア人民元日本円にも注目です。ネガティブ・キャリーで、高利回り通貨に対して円高ポジションをとるのが困難である場合、トレーダーは金利差がそれほど大きくないスイスフラン日本円を検討することができます。


Summary:  Intervention threat for Japanese yen has stepped up after a trilateral meeting between Japan, South Korea and US officials and a G7 statement suggesting that the US could be tolerant of an intervention. There is reason to believe that Japanese officials could be more vigilant to defend the 155 handle in USDJPY, and a slowing pace of USD gains along with a BOJ meeting next week could also make an intervention more effective.


 Japanese yen has been on intervention alert for some weeks as USDJPY rose above the key 152 level on April 10 and breached 154 on April 15. The resilience in the US economy, sticky inflation and a pushback from Fed members saw US yields rushing to fresh highs, and that weighed on the yen.

However, only verbal intervention came through from Japanese authorities. This made complete sense because an actual intervention could have been futile in the rising US yield environment. While a knee-jerk reaction could have brought USDJPY back towards 150, the wide and increasing yield differential between the US and Japan could have reversed that move quickly.
But there is reason to believe that intervention threat has stepped up now and officials may be looking to defend the 155 handle, because:

1. Hawkish Fed repricing could be close to an end for now

The strong US economic data and the pushback from Fed members on rate cut expectations have largely been priced in by the markets. Market now expects the first full rate cut from the Fed only in November and less than two rate cuts this year. There may have been some hesitancy to fight the strong dollar move as it was playing out in the last few days, but that seems to be nearing a peak for now.

2. Other Asian currencies have come under pressure as well

While JPY is down 1.7% against the USD month-to-date, the Korean won (KRW) and Indonesian rupiah (IDR) are down 1.9% each. The Indian rupee (INR) fell to a record low on Wednesday. The strong US dollar has been a headwind for Asian currencies, and this has led to a coordinated effort from Japanese and Korean finance chiefs to discuss this with the US in a trilateral meeting.

3. G7 comments suggest international coordination may be likely

With the G7 meetings ongoing in Washington, there were reports that US Treasury Secretary Janet Yellen took note of worries from Japanese and Korean officials on FX. While room for a coordinated intervention may still be small, these comments suggest that US authorities may be tolerant of an intervention if one was to come from Japan (or Korea) and risk of getting tagged as a currency manipulator has been addressed.

4. BOJ meeting next week

The next Bank of Japan meeting is scheduled for April 26, and Governor Ueda has said that yen’s impact on inflation expectations will be a key factor. A weak yen pushes up the cost of energy imports. This could mean another surprise rate hike by the BOJ, or at the very least, a hawkish stance to guide for another rate hike. This could make an intervention response more likely to stick.

While the stepped-up warnings may again be about buying time, there seem to be clear indications that Japanese authorities will try to defend the 155 handle in USDJPY. Any yen intervention could bring USDJPY to test 150. Such a move could also pause the rally in Japanese equities.

Also, worth watching CNHJPY where a break above 21 has been a concern for Chinese authorities, as discussed in this article. When a negative carry is prohibitive to position for yen strength against high-yielding currencies, traders can consider at CHFJPY where the interest rate differentials are less stark.
Source: Bloomberg

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。