為替アップデート:英ポンド高の終焉、ユーロもそれに続くのか?

為替アップデート:英ポンド高の終焉、ユーロもそれに続くのか?

FX
ジョン・ハーディ

チーフ・マクロ・ストラテジスト

サマリー:  本日(7月19日)午前に発表された英国の6月消費者物価指数(CPI)は予想を下回り、その結果、英国債利回りは急落しました。これは、年初来の英ポンド高の終了を示唆している可能性があります。その他では、中国人民元の軟調が豪ドルとニュージーランド・ドルの重荷となりました。一方、欧州中央銀行(ECB)がタカ派的なスタンスから脱却しつつあり、欧州の利回りが低下していることから、ユーロ高が緩和される可能性があります。


主なポイント

  • 本日午前に発表された英6月CPIを受けて、年初来の英ポンド高が終わりを迎えそうだ。
  • ECBがタカ派スタンスから脱却し、EU諸国債券利回りが低下するにつれ、軟化に転じる次の主要通貨はユーロとなる可能性がある。
  • 軟調な中国人民元が豪ドルとニュージーランド・ドルの重荷となっている。

英国の6月CPIが予想を下回ったため、英ポンドは大きく値を下げました。注目されたコアCPIは6.9%と予想の7.1%を下回り、5月の7.1%からも低下しました。総合CPIは7.9%と予想の8.1%を下回り、5月の8.7%から低下し、前月比はわずか0.1%(予想0.4%)でした。コアCPIは4月と5月に2カ月続けて、数十年ぶりの高水準を記録し、市場を動揺させ、ひいてはイングランド銀行(BOE)が年内に政策金利をそれまでの予想を大幅に上回る6.00%に引き上げるとの観測が高まりました。今日のインフレ指標発表後、英2年債利回りは2週間弱前の高値5.56%から20ベーシスポイント(bps)以上下落し、4.9%台で取引されています。これは、市場が織り込んでいる追加引き締め幅がわずか90bpsであり、これまでの150bpsから大幅に縮小したことを示します。この急転換は、今年後半にCPIが急低下するというBOEの希望・期待によっても後押しされました。8月の金融政策委員会での利上げ幅について、ここ数週間は50bpsとの見通しが優勢でしたが、現在は25bpsと50bpsの可能性が半々となっています。インフレ指標の軟化が続けば、BOEはここからの利上げをできる限り小幅なものとするでしょう。

この6月CPIは、今年前半を特徴づけた英ポンド高の終焉を告げている可能性があります。後述するユーロ英ポンドの上昇は、より広範な通貨に対する英ポンドの動きを見る上で参考になります。

図表:ユーロ英ポンド
ユーロ英ポンドは、今朝の英国CPIの発表を受けて上昇し、0.8520を下回る直近の安値からの本格的な反発を示しました。大局的に見ると、このチャートは長期のレンジ取引を示していますが、この大幅な上昇が今日の終値まで維持されれば、今後数週間でレンジの高値である0.8900超に向けた短期的な動きがあると考えることができます。しかし、ECBが利上げ観測を後退させるような協調的な姿勢を示せば、この先の動きは鈍くなる可能性があります(詳細は後述)。

出所:ブルームバーグ

ユーロ高、人民元安、円安がECBのハト派転換を促す?
アジア通貨の重心は中国人民元にあります。同通貨は最近の米ドル安基調の影響をあまり受けず、金曜日の安値7.12から本日の欧州時間の取引では7.22まで反発しました。一方、ユーロ中国人民元は今年に入ってからほぼ垂直の動きを示し、年初は7.25近辺で推移していたものが、現在は8.10を超える水準で取引されています。背景にあるのは、中国には十分な景気刺激策を講じるつもりはないのではとの懸念です。

この顕著な中国人民元安が、今年に入ってからのユーロ円の乱高下とともに、ECBがタカ派色を弱める要因となったことを考慮する必要があります。従来からのタカ派として知られるクラース・クノットECB理事は昨日、ここからさらに2回の利上げを行うとの考えに反対する意見を述べました。ユーロ高は、世界市場における欧州の輸出競争力を低下させます。ユーロ高の勢いはここから衰えていくのでしょうか。 ドイツの2年債利回りは本日一時的に3.00%を割り込みましたが、ECBの政策決定待ちである今、ユーロ円とユーロ米ドルに大きな動きはありません。欧州は低成長と通貨高を容認できないため、この点には注意が必要です。来週木曜日のECB政策理事会は、通貨とECBの政策との関連性についてメッセージを伝える場となりそうですが、想定される25bpsを超える追加利上げが示唆されることはなさそうです。(ユーロ円とユーロ人民元が来週の木曜日までに高値を更新すれば、ECBは利上げの一時停止というショックを与える可能性がないとも言えません。)

その他、人民元の安値基調により、クロスレートにおいて、豪ドルとニュージーランド・ドルが値を崩しています。ニュージーランド・ドル米ドルが大きく下げた場合、この通貨ペアは完全な弱気反転の危機に瀕し、豪ドル米ドルも同様の状況にあります。これらの通貨ペアで米ドル高傾向が一層強まれば、米ドル安シナリオのほころびがさらに大きくなるでしょう。

図表: G10通貨と中国人民元のトレンド
米ドル安シナリオは足元で急速に崩れつつあるものの、反転をうかがうほどの強さを示しておらず、その傾向は特にG3通貨に対して顕著です。人民元の弱さが米ドルの弱さを上回っていることに注意が必要です。英ポンドの急落は、これまでの幅広い通貨に対する上昇トレンドを中和するには至っていません。上述したように、ユーロ高が緩和されるのであれば、北欧通貨の反発は長くは続かない可能性があります。

出所:ブルームバーグおよびサクソグループ

各通貨ペアのトレンドとスコアボード
豪ドル・ニュージーランドドルのトレンドは依然として流動的であり、米ドル人民元がプラス圏に反転する気配があるため、これを確認するために、今後数日の豪ドル米ドルとニュージーランドドル米ドルの動きを注視します。米ドル・スイスフランの動きは行き過ぎに見えますが、反発する兆しはありません。

出所:ブルームバーグおよびサクソバンクグループ
今後注目の経済イベント(すべてグリニッジ標準時)
  • 12:30 – 米国6月住宅着工件数および住宅建設許可件数
  • 14:30 – 米国エネルギー省発表の週間クルード原油および製品在庫
  • 17:00 – 米20年国債入札
  • 23:50 – 日本6月貿易収支
  • 01:15 – 中国金融政策
  • 01:30 – オーストラリア第2四半期NAB(ナショナル・オーストラリア銀行)企業景況感
  • 01:30 – オーストラリア雇用統計

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