トランプ大統領の関税が米ドルと日本円の強さをもたらす

トランプ大統領の関税が米ドルと日本円の強さをもたらす

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ジョン・ハーディ

チーフ・マクロ・ストラテジスト

サマリー:  米ドルは、今週末に発表されたトランプ大統領の新たな関税を背景に、堅調な動きをみせています。関税が今夜発効した場合、その後の反応はあるのでしょうか?その他の地域では、円の強さが米ドルの強さを上回っており、日本円は他通貨とは違った土俵にいるようです。


米国のトランプ大統領は、週末に、以前から脅していた関税強化措置を実行しましたが、恐れられていた関税引き上げのスケジュールは、今夜のアメリカ東部時間の真夜中過ぎ(つまり、明日の朝0501GMT)まで発効しません。トランプ大統領は、今日、カナダとメキシコの指導者と電話会談を行うと誓ったことで、国外追放者を乗せた飛行機の受け入れをめぐるコロンビアとの最近の対決のように、トランプが関税を厳しい交渉戦術として利用し、最後の瞬間に引き下がるのではないかという希望を抱いている人もいるかもしれません。この希望が、例えば、米ドル/メキシコペソ(USDMXN)が金曜日の終値よりも1.7%高いだけで取引されていると私が考えることができる唯一の理由です。もしトランプ政権が25%の関税を堅持し、それを維持すれば、メキシコは醜い不況に陥り、米ドル/メキシコペソ(USDMXN)はさらに大幅に上昇して取引される可能性が高いです。メキシコは、輸出がメキシコ経済の約36%を占め、そのうち77%が米国向けであるため、米国の輸出需要に非常に敏感です。カナダは、輸出がGDP33%を占め、そのうちの75%近くが米国向けであり、米国の関税措置により影響を受けるリスクはメキシコに比べてわずかに少ないだけです。カナダは、トランプ政権がカナダ製品に対する関税を進める場合、米国の輸入品に対して1,000億米ドル以上の偶発的な関税を課すことで対応しました。トランプは、カナダが報復すれば、関税を2倍にすると述べました。

今後24時間以内の重要な試金石は、関税が実際に発効した場合に、市場が現在の各国の関税措置のスケジュールを適切に価格に織り込んだかどうかです。

その他、米ドルの強さはほぼ均等で、豪ドル/米ドル(AUDUSD)とユーロ/米ドル(EURUSD)も一巡りして新安値を更新しましたが、ユーロ/米ドル(EURUSD)はアジア時間序盤に1.0150を下回る急騰に見舞われました。しかし、これは定着せず、市場はトランプ大統領がEUに対する関税措置に関する計画案が形作られるのを待っているため、値動きは主に1.0225-50+の範囲にとどまっています。トランプ大統領が先週末、時間の尺度が未知だとするなら「(いつかは)必ず起こる」と宣言したことを考えると、これらは近日発表され明らかになるだろうと考えられます。EU製品に対して25%近い関税が課せられると、ユーロ/米ドル(EURUSD)は、パリティ(直先スプレッドが金利差と一致した平衡価格)に挑戦する可能性があり、その後、下振れするでしょう。

他にここで議論する必要がある2つの主要な米ドル通貨ペアは、米ドル/日本円(USDJPY)と米ドル/中国元(USDCNH)です。日本円については、日本円が世界的なリスクセンチメントと負の相関で取引され、今日の欧州時間初めまでに米ドルの強さを上回ったため、日本円のキャリーアングル(円高傾向からの円キャリー取引の巻き戻し具合)が今のところ最優先の要因であるように思われます。しかし、トランプの関税バズーカが最終的に日本の進む道を指し示すとすれば、今のところ、そこから期待される効果の方が日本経済に与えると考えられるリスクを上回っているようにみえます。ユーロ/円(EURJPY)については、動きがないようです。

表: 米ドル/カナダドル(USDCAD)
米ドル/カナダドル(USDCAD)は、先週金曜日の取引終了までにトランプ大統領の関税リスクをより真剣に織り込み始め、週末の関税発表後に上昇しました。現在の1%未満の動き(金曜日の引けから現在の1.4675水準にかけて)は、トランプ大統領のカナダに対する25%の関税がカナダの経済成長に対する致命的な脅威であることを考えると、控えめにみえます。ちなみに、1.4670-90の水準は、2003年以降に2回しか到達しなかった領域だったので、一晩のうちに20年ぶりの高値で取引されたといえます。この通貨ペアは、今夜0501グリニッジ標準時(GMT)に関税が発効した場合、さらに上昇するのでしょうか?

出所:サクソバンクグループ

米国債利回りの動向
その他の地域では、米国債利回りの反応パターンが興味深い動きとなっています。関税の引き上げによる短期的なインフレリスクから(高くとどまる)市場価格がFRBの利下げの可能性を低下させる中、イールドカーブの短期金利側は底堅く推移し、超長期金利側ではほとんど動きがないか、おそらく成長への影響を懸念したためでしょう、低下さえしています。長期金利のボラティリティが無くなっているのは、長期国債がリスク資産の弱さを相殺するほどの安全な資金の逃避先とはなっていないことを示唆しています。

今後については、スコット・ベッセント(Scott Bessent)米財務長官が水曜日に最新の四半期償還計画を発表する予定です。この内容をみれば、米財務省が直近四半期のイエレン(Yellen)前財務長官の下で行ったよりも多くの長期債を発行するかどうかが明らかになる可能性があり、注目したいところです。以前、ベッセント(Bessent)氏は、昨年11月の大統領選挙までに生じる可能性のある米国の長期利回りと住宅ローン金利への影響を避けたいために、イエレン(Yellen)前財務長官が1年未満の期間の米国債を大量に発行したことを強く批判していました。

表: 主要10通貨と人民元(CNH)関する、トレンド展開とその強さ

:このFX ボードのトレンド・インジケーターは相対的な尺度のみを表示しており、ボラティリティが調整されています。絶対値 2 未満の値はかなり弱いですが、3 を超える値は非常に強く、6 を超える値は非常に強いことを示しています。

ここから、トランプ大統領が関税を堅持し、関税がしばらく続くとすれば、クロス円の下押し圧力は続く可能性が高く、米ドルは円を除くほぼすべてのものに対して堅調に推移する可能性が高いです。中国が(現在、米ドル/人民元7.375水準で設定されているとみられる)人民元通貨価値の切り下げに対して引き続き抵抗すれば、ボラティリティは抑制されるでしょうが、もし中国が単純に金利を変動させるとすれば、ボラティリティは劇的に拡大するでしょう。ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)紙は、「事情に詳しい」人々の言葉を引用して、中国が競争上の優位性を得るために人民元の切り下げはしないという誓約を新たにするだろうという記事を掲載しました。

ここで、英ポンド(GBP)について疑問が投げかけてみましょう。英国に対する愛着と、英国が米国との間で顕著な貿易黒字がないことから、トランプ大統領が英国に何らかの依怙贔屓的態度を示すことができるのかということです。これは、私のともすれば弱気な英ポンド(GBP)の見通しを曇らせます。

出所:ブルームバーグ、サクソバンクグループ

表: 個々の通貨ペアのFXボード・トレンドスコアボード
米国通貨ペアにとって重要なのは、アジア取引時間中の積極的な上昇の後に、この米ドルの上昇が維持されるかどうかです。 つまり、トランプ大統領が突然関税強化措置について引き下がった場合、逆転のストーリーを作り出すのは技術的に容易だということです。その他の地域では、ユーロ/スイスフラン(EURCHF)が、先週末以降、EU諸国に対する米国の関税引き上げの脅威とEUの利回りの崩壊を受けて、徐々に下落していることに注意してください。原油価格の急騰があり、ユーロ/ノルウェー・クローネ(EURNOK)に関しては、何かを低下させようとする力が働いているようです。(ノルウェーでは、与党連合が分裂し、中道右派がより保守的で(個人の自由と経済的な自由の双方を重視する)リバタリアン的な、今、獲得票を伸ばしてきているプログレス(Progress)党との連立で、次の選挙に勝つ可能性が高いため、エネルギーに関する経済的に打撃を与えるEUルールを採用する可能性が今は低く、同通貨ペアはこういった興味深い内部政治力学にも影響を受ける可能性があります)。 これについては、近日中にもっと詳しくご紹介します。

出所:ブルームバーグ、サクソバンクグループ

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