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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: 先週のFOMC声明は市場にハト派的な印象を与えましたが、その後ECBとBoEが予想に反してタカ派姿勢を軟化したことをきっかけに、米ドルは切り返しつつあります。しかし、ドルの上昇の背景には、各国中銀の政策スタンスというよりも米国、そして世界経済が“ソフトランディング”ではなく、“ランディングしない”シナリオを辿るとの懸念が高まっていることが、より大きく影響している可能性があります。こうしたシナリオは、今後かなり長期にわたって米ドルの上昇を下支えする要因となり得るかもしれません。また、日銀次期総裁に理論上タカ派寄りの植田氏が就任した場合の日本円へのインパクトを相殺する可能性も考えられます。
Today's Saxo Market Call podcast
Today's Market Quick Take from the Saxo Strategy Team
トレードの焦点:米国債利回りは一段の上昇、“ランディングしない”シナリオが強まれば米ドル高が進む見通しは一層強まる;日銀次期総裁人事で円高進行も、目先は下押し圧力が強まる公算が大きい
米国債利回りはすべての年限で引き続き上昇基調を辿っており、昨日の米30年国債入札がここ1年間で最も不調に終わったことで足元一段の上昇に向かっています。10年国債の利回りは、昨年末に付けたピボットポイント(3.90%)には及ばないものの、3.70%を上回って推移しており、過去5週間のピークを更新しています。また、利上げの最終到達点となるターミナルレート(今年夏までに5.15%を上回る可能性を織り込む)も現サイクルで最も高い水準に向けて切り上がっています。ただ、利回りはここ数日上昇基調を辿っているものの、特に大きな出来事や循環的な要因は見当たりません:市場は、単に政策金利が年央に向けて徐々に切り上がることを織り込んだ上で、FRBが利下げに踏み切るタイミングを早ければ年末、あるいはより可能性の高い選択肢として来年にわずかにずれ込むと予想しているようです。これは、ユーロドル金利先物の2023年12月物と2024年12月物の利回りスプレッドを見た場合に、2024年12月物が2023年12月物に比べて145 bps低く、1か月前とほとんど変化していないことからも明らかです。今後数日あるいは数週間以内に “ランディングしない”シナリオがカーブの年限の短い部分に織り込まれ、トレンドに変化がもたらされるかが注目されます。
経済が再び加速し、米国の労働市場はこれまでにないほど逼迫しています。また、一連の経済指標でも改めて経済の底堅さが確認(すでに米国の住宅建設市場は回復しつつある)され、インフレ率や賃金が春までに低下する見込みはありません。こうした中で、FRBは今年後半までに政策金利を5.25~5.50%、またはそれを25~50bps上回る水準に切り上げる公算が大きいと考えられます。経済指標が力強さを増す中、市場はFRBが利下げに転じるタイミングを後ろ倒しするだけでなく、足元の著しい逆イールドの妥当性を見直す必要に迫られることになるでしょう。その結果、例えば10年物国債の利回りと2年物国債の利回り格差が縮小し、2年物国債の利回りが上昇したとしても将来的な景気回復を織り込んでベア・スティープニングするかもしれません。この場合、インフレ鈍化によるソフトランディングが視野から外れることで金融環境は過剰にタイト化し、世界的なセンチメント悪化をもたらすでしょう。また、ドルは再び大きく戻りを試す展開が予想されます。いずれにせよ、今後の利回りと経済指標の動向がカギを握っています。なお、火曜日公表予定の米1月消費者物価指数(CPI)がサプライズとなる可能性はそれほど重要ではないと考えます。なぜならば、計算方法の改定によって予想を上振れする可能性があるためです。市場が“ランディングしない”シナリオに対して懸念を強めているか否かを確認する上で最も有効な方法は、米1月CPIがやや鈍化した場合に、米国債市場が反応するかどうかを見極めることです。
図表:USD/JPY
足元でドル/円のボラティリティは高まっており、方向感を見出しづらい相場となりました。まず、岸田首相が4月上旬に退任予定の黒田日銀総裁の後任として、これまで有力候補に上がっていなかった植田和男氏を起用する方針であることを受け、今朝の欧州市場でボラティリティが高まりました。多くの市場関係者は植田氏過去の発言から何らかの手掛かりを得ようとしていますが、植田氏が学者で元日銀理事として経験豊富でバランスの取れた人材であること以外に決定的な判断材料は乏しいようです。そのため、ハト派として知られる雨宮氏が政府の打診を辞退したことが一時的に円相場を押し上げたものの、今後の政策の方向性を推し量ることはかなり難しいとみられます。それと同時に、前述の米国債利回りの上昇(“ランディングしない”シナリオでは、日銀は日本円をサポートするために大規模な政策修正を余儀なくされます)に加えて、プーチンが石油生産を日量50万バレル削減するという好戦的な決定に踏み切るなど、日本円にとって極めてネガティブな逆風となる環境が整いつつあります。日本円の投資家にとっては、今のところ不確実性が高まっていますが、ドル/円に関しては、米国債の利回りが上昇基調を辿る限り、ここからの上昇余地はある程度限定的であるとみています。
オーストラリア準備銀行(RBA)がインフレ率と賃金上昇を見込んで利上げに動いたにもかかわらず、豪ドルは堅調さに欠ける展開となりました。RBAは夜間にインフレ予想を大幅に上方修正し、今年6月末時点の刈り込み平均値(trimmed mean)を前回の5.5%から6.25%に引き上げましたが、その後は年末に向けて4.25%に低下するとし、賃金は4.25%でピークに達するとの見通しを示しました。これを受けて豪州の短期債の利回りは急激に上昇しました。ただ残念なことにリスクセンチメントは足元で悪化しており、主要な工業用コモディティのサポートも見られない中で、豪ドルが他の主要通貨に対して選好される動きはみられません。
図表:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
スウェーデンクローナ(SEK)のモメンタムを急速に回復しています。足元のリスクオフの流れと少しずれが生じているものの、スウェーデン国立銀行は昨日の会合で為替市場の投機的な動きに配慮したこともあり、SEKは今後も着実に上昇基調を辿る可能性が高まっています。一方、ノルウェークローナ(NOK)はここ最近の原油価格の上昇や今朝方公表された1月CPI(コアCPIは予想の前年同期比6.0% に対して同6.4% 、12月も5.8%に改定)を受けて弱含んで推移した後、幾分サポートを見出しているようです。米ドルがNOKに対して一段の上昇を遂げるには、本格的な上昇トレンドに転換する必要があります。
図表:通貨ペア別のスコアボード
ユーロ/ポンドは下押し圧力を受けており、0.8800を下回って取引を終える必要はあるものの、それを境にこれまでの上値抵抗線を試す動きが反転する兆しも見受けられます。昨日のスウェーデン国立銀行の会合を踏まえると、ユーロ/SEKは一定の範囲で下落トレンドに入る可能性も視野に入ってきました。ドル/人民元は足元の水準で本日の取引を終えれば、ここ10週間ぶりに堅調地合いが期待できます。日銀の新総裁人事を受けて、日本円のクロスレートは弱含んで推移する見通しです。
経済指標カレンダー(2023年2月10日)