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チーフ・マクロ・ストラテジスト
サマリー: 米ドルは今朝になって再び足場を固める前に、局地的に上値を試す展開となりました。一部の市場参加者は、来週火曜の米CPIと水曜のFOMC会合が予想外の結果に終わるまで、米ドルに対して強気なスタンスで臨んでいるようです。今後注目されるポイントは、FRBのドット・プロットが市場予想を上回る可能性が高まりつつある点です。来週木曜には、G10主要4か国で中央銀行の金融政策決定会合が開かれます。
Today's Saxo Market Call podcast.
Today's Market Quick Take from the Saxo Strategy Team
フォーカス: ドット・プロットが市場予想を上回った場合の反応は?
直近のレポートで述べたとおり、過去数週間で徐々に浸透してきたFRBのタカ派シナリオは、FRBがインフレの鎮静化に向けて「あらゆる手段を講ずる構えである」ことを主張すればするほど、FRBはそれを文字通り実現するであろうという前提を市場は目先の金融政策に織り込むという、皮肉な結果をもたらしています。インフレスワップレートは、カーブのすべての年限で2.5%を下回っており、利回りはロングエンドを中心に2年以上の年限で低下しています。足元の状況は、今後は米国の財政状況が安定的に維持される公算が高いことを示しているようです。皮肉にも、米国が期待どおりソフトランディングに成功し、経済が再び過熱するような状況となれば、来年はFRBにとって政策の舵取りがこれまで以上に難しい年となるでしょう。また、そこで中国が冬を終えて大規模な財政刺激策に動くという大きなリスクも考えられます。ただ、今後のインフレの動向を見極めるには、数か月あるいは数四半期分のデータが必要となります。
目先の動きとして注目すべき3つのポイントは、1)今後18カ月~2年間にFRBが実施する金融政策を市場がどのように織り込んでいるのか、2)来週水曜にFRBはどのような経済見通しと金利見通し(ドットプロット)を提示するのか、また、3)市場がFRBの予想に左右されずに、今後の経済動向を見極めることができるかどうか、ということです。市場は、来年の3月または5月のFOMCで政策金利が5.0%手前でピークに達するとのシナリオを想定しています。また、市場はFRBが来年末までに利下げサイクルを開始し、2023年12月のFOMCで0.5%の利下げに踏み切った後、2024年まで利下げペースを加速すると予想しています。当然ながら、FRBの金融政策に対する市場の期待は、予想というよりも「可能性」、あるいは「リスクヘッジ」として捉えられるべきですが、少なくとも市場にとって何がサプライズとなり得るかを把握する目安となります。長期金利に対する市場予想は足元で4.5%を下回る水準に下方シフトしているものの、おそらく市場はドット・プロットに示される来年末の金利見通しが5%を上回ってくると予想しているのではないかと当社は考えます。2024年のドット・プロットが9月のように大きく拡散(レンジの下限2.62%、上限4.62%、中央値は3.75%)した場合、あまり重要な予測とはならないでしょう。
もし市場が「来年はFRBが公言しているほど引締めに動く必要はなく、財政状況は安定的に維持される」との見方をこのまま維持するならば、米ドルは目先でもう一段下落すると予想されます。当面はFRBの利上げサイクルが近い将来終わるというシナリオを裏付ける指標や、リスクセンチメントの悪化のみが、ドルをサポートする要因となり得るでしょう。
為替チャート:ユーロ/ノルウェークローネ(EUR/NOK)
クローネは2020年初頭のパンデミック時に一時的な急伸を遂げた局面以来のレンジに向けて、徐々に切り上げています。ノルウェー中央銀行は、来週木曜の会合で政策金利を再び0.25ポイント引き上げ2.75%とする見通しです。同行は各国中銀のうち最も早い段階で利上げに踏み切ったものの、最も緩やかなペースで引締めを継続しているだけでなく、利上げ終了時期が近付いている兆候も見受けられます。また、本日公表されたノルウェーのコアCPIは予想を下回る結果(前年比6.0%の予想に対して同5.7%)となり、こうした見方が一層強まる要因となりました。ノルウェー銀は今回の会合の後にすでに利上げを停止する、あるいは来年1月19日の会合で「最後の」の追加利上げ(0.25ポイント)を実施する可能性を示唆するでしょうか?欧州経済の弱い経済見通しや原油価格の下落は、ノルウェークローネにとって明らかに重しとなっており、今後、市場のストレスやリスク回避姿勢が著しく強まることがない限り、クローネは足元で割安な水準に近づきつつあると判断できます。ただし、ECBは来週木曜の会合で0.5ポイントの追加利上げを決定する見通しであり、欧州諸国とノルウェーの国債利回り格差は、これまでにないほど縮小している点には留意すべきです。例えば、ノルウェー5年国債利回りは、ドイツ5年国債をかろうじて100bps上回って推移しています。ただ、EUR/NOKのアップサイドは利回りの相対的なパフォーマンスに対する見通しよりも、原油価格の下落など、より一般的なマイナス要因に左右される可能性が高いため、こうした利回り格差が急速に収れんする可能性は極めて低いでしょう。
図表1:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
カナダ中央銀行は今週の会合で追加の利上げについては不確実であると言及し、カナダドル高誘導に失敗しました。また、ノルウェークローネと同様に原油価格の急落も同通貨の足かせとなりました。来週は火曜に米CPI(直近のいくつかの指標で大きく変動)と翌日水曜にFOMC会合を控えており、ドルの強さが試される週となります。
図表2:通貨ペア別のスコアボード
最後に、豪ドル/NZドル(AUD/NZD)は長期的に下落基調をたどった後、今週になって双方向の動きがいくつか見受けられました。この通貨ペアは、来春中国が景気刺激策を出動した場合や、足元で上値抵抗線突破を試す展開が続いている銅価格が大幅な上昇に向かった場合には、向こう一年間にわたって魅力的な投資機会を提供するでしょう。
経済指標カレンダー
12月9日(金)