為替アップデート:市場はドットチャートの上方修正を受け流すか?

為替アップデート:市場はドットチャートの上方修正を受け流すか?

FX
ジョン・ハーディ

チーフ・マクロ・ストラテジスト

サマリー:  米ドルは今朝になって再び足場を固める前に、局地的に上値を試す展開となりました。一部の市場参加者は、来週火曜の米CPIと水曜のFOMC会合が予想外の結果に終わるまで、米ドルに対して強気なスタンスで臨んでいるようです。今後注目されるポイントは、FRBのドット・プロットが市場予想を上回る可能性が高まりつつある点です。来週木曜には、G10主要4か国で中央銀行の金融政策決定会合が開かれます。


Today's Saxo Market Call podcast.
Today's Market Quick Take from the Saxo Strategy Team

フォーカス: ドット・プロットが市場予想を上回った場合の反応は?

直近のレポートで述べたとおり、過去数週間で徐々に浸透してきたFRBのタカ派シナリオは、FRBがインフレの鎮静化に向けて「あらゆる手段を講ずる構えである」ことを主張すればするほど、FRBはそれを文字通り実現するであろうという前提を市場は目先の金融政策に織り込むという、皮肉な結果をもたらしています。インフレスワップレートは、カーブのすべての年限で2.5%を下回っており、利回りはロングエンドを中心に2年以上の年限で低下しています。足元の状況は、今後は米国の財政状況が安定的に維持される公算が高いことを示しているようです。皮肉にも、米国が期待どおりソフトランディングに成功し、経済が再び過熱するような状況となれば、来年はFRBにとって政策の舵取りがこれまで以上に難しい年となるでしょう。また、そこで中国が冬を終えて大規模な財政刺激策に動くという大きなリスクも考えられます。ただ、今後のインフレの動向を見極めるには、数か月あるいは数四半期分のデータが必要となります。 

目先の動きとして注目すべき3つのポイントは、1)今後18カ月~2年間にFRBが実施する金融政策を市場がどのように織り込んでいるのか、2)来週水曜にFRBはどのような経済見通しと金利見通し(ドットプロット)を提示するのか、また、3)市場がFRBの予想に左右されずに、今後の経済動向を見極めることができるかどうか、ということです。市場は、来年の3月または5月のFOMCで政策金利が5.0%手前でピークに達するとのシナリオを想定しています。また、市場はFRBが来年末までに利下げサイクルを開始し、2023年12月のFOMCで0.5%の利下げに踏み切った後、2024年まで利下げペースを加速すると予想しています。当然ながら、FRBの金融政策に対する市場の期待は、予想というよりも「可能性」、あるいは「リスクヘッジ」として捉えられるべきですが、少なくとも市場にとって何がサプライズとなり得るかを把握する目安となります。長期金利に対する市場予想は足元で4.5%を下回る水準に下方シフトしているものの、おそらく市場はドット・プロットに示される来年末の金利見通しが5%を上回ってくると予想しているのではないかと当社は考えます。2024年のドット・プロットが9月のように大きく拡散(レンジの下限2.62%、上限4.62%、中央値は3.75%)した場合、あまり重要な予測とはならないでしょう。

もし市場が「来年はFRBが公言しているほど引締めに動く必要はなく、財政状況は安定的に維持される」との見方をこのまま維持するならば、米ドルは目先でもう一段下落すると予想されます。当面はFRBの利上げサイクルが近い将来終わるというシナリオを裏付ける指標や、リスクセンチメントの悪化のみが、ドルをサポートする要因となり得るでしょう。 

為替チャート:ユーロ/ノルウェークローネ(EUR/NOK)
クローネは2020年初頭のパンデミック時に一時的な急伸を遂げた局面以来のレンジに向けて、徐々に切り上げています。ノルウェー中央銀行は、来週木曜の会合で政策金利を再び0.25ポイント引き上げ2.75%とする見通しです。同行は各国中銀のうち最も早い段階で利上げに踏み切ったものの、最も緩やかなペースで引締めを継続しているだけでなく、利上げ終了時期が近付いている兆候も見受けられます。また、本日公表されたノルウェーのコアCPIは予想を下回る結果(前年比6.0%の予想に対して同5.7%)となり、こうした見方が一層強まる要因となりました。ノルウェー銀は今回の会合の後にすでに利上げを停止する、あるいは来年1月19日の会合で「最後の」の追加利上げ(0.25ポイント)を実施する可能性を示唆するでしょうか?欧州経済の弱い経済見通しや原油価格の下落は、ノルウェークローネにとって明らかに重しとなっており、今後、市場のストレスやリスク回避姿勢が著しく強まることがない限り、クローネは足元で割安な水準に近づきつつあると判断できます。ただし、ECBは来週木曜の会合で0.5ポイントの追加利上げを決定する見通しであり、欧州諸国とノルウェーの国債利回り格差は、これまでにないほど縮小している点には留意すべきです。例えば、ノルウェー5年国債利回りは、ドイツ5年国債をかろうじて100bps上回って推移しています。ただ、EUR/NOKのアップサイドは利回りの相対的なパフォーマンスに対する見通しよりも、原油価格の下落など、より一般的なマイナス要因に左右される可能性が高いため、こうした利回り格差が急速に収れんする可能性は極めて低いでしょう。 

Source: Saxo Group

図表1:G10通貨と人民元の強弱およびトレンドの変化
カナダ中央銀行は今週の会合で追加の利上げについては不確実であると言及し、カナダドル高誘導に失敗しました。また、ノルウェークローネと同様に原油価格の急落も同通貨の足かせとなりました。来週は火曜に米CPI(直近のいくつかの指標で大きく変動)と翌日水曜にFOMC会合を控えており、ドルの強さが試される週となります。

Source: Bloomberg and Saxo Group

図表2:通貨ペア別のスコアボード
最後に、豪ドル/NZドル(AUD/NZD)は長期的に下落基調をたどった後、今週になって双方向の動きがいくつか見受けられました。この通貨ペアは、来春中国が景気刺激策を出動した場合や、足元で上値抵抗線突破を試す展開が続いている銅価格が大幅な上昇に向かった場合には、向こう一年間にわたって魅力的な投資機会を提供するでしょう。

Source: Bloomberg and Saxo Group

経済指標カレンダー
12月9日(金)

  • 13:30 (UST)米11月卸売物価指数(PPI)
  • 15:00 (UST) 米12月ミシガン大学消費者信頼感指数

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。