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シニア債券ストラテジスト
2024年の最終四半期を迎えるにあたり、債券市場はさまざまな機会とリスクを抱えています。中央銀行、特に米国と欧州の中央銀行は緩やかな利下げを続け、2025年後半までには金利環境がより正常化すると予想されます。しかし、インフレと財政赤字が長引くと長期利回りは高止まりし、債券市場が複雑化します。投資家は引き続き、ディフェンシブ・バッファーを構築し、健全な債権を優先し、金融政策や財政状況の潜在的な変化に機敏に対応することに注力すべきです。
米国経済は堅調な個人消費に牽引され、6月時点の年率換算成長率は3.1%と引き続き底堅さを見せています。しかし、労働市場が冷え込み、雇用の伸びが鈍化するにつれ、景気減速の兆候が現れ始めています。GDP成長率は2024年には2.4%、2025年にはさらに1.7%まで鈍化すると予測されています。インフレ率は2022年のピークからは落ち着いたものの、依然として望ましい水準を上回っており、FRBは利下げ軌道について慎重な姿勢を維持するでしょう。
欧州では景気回復が予想以上に遅れていますが、失業率の低さと実質賃金の上昇が引き続き景気を支えています。ECBは段階的な利下げ姿勢を維持し、2025年9月までに預金金利を2.5%に引き下げることを目指すとみられます。
先進国市場全体の金利は、インフレ抑制に向けた中央銀行の慎重な取り組みに後押しされ、高めの均衡で安定しています。米国ではインフレは緩和していますが、依然として高い水準です。FRBはすでに50ベーシスポイント(bps)の利下げを実施しており、9月の会合でも、今後のデータ次第で年内にあと2回、25bpsの引き下げを行うと予想していました。利下げは2025年まで続く可能性があり、FF金利は3.5%まで低下する可能性があります。しかし、コア・インフレ率は依然として高止まりしており、景気後退にならない限り、FRBはインフレ圧力の再燃を避けるために引き締め姿勢を維持する可能性が高いです。そのため、FRBの長期中立金利予測は2018年9月以来の高水準である現在の2.9%まで上昇しています。これは中期的には米国の長期国債利回りの上昇を意味するでしょう。
欧州では経済成長が予想を下回っていますが、失業率の低さと実質賃金の上昇が引き続きGDPの緩やかな拡大を支えています。ECBは四半期ごとに25bpsずつ段階的に金利を引き下げ、2025年後半までに預金金利を2%まで引き下げる可能性があると予想されます。欧州のイールドカーブもスティープ化する可能性が高いのですが、米国債の動向に影響されて長期利回りは高止まりする可能性があります。
米国では、FRBが利下げを進めるなか、イールドカーブが徐々に正常化しつつあります。しかし、財政赤字と2025年の景気再加速の可能性に関する継続的な懸念により、長期利回りは上昇圧力に直面する可能性があります。9月FOMCのマクロ経済見通しでは、今後3年間の実質GDP成長率は2%、インフレ率は2%に戻ると予想されており、10年物米国債利回りの公正価値は4%前後になるはずです。長期利回りは、米大統領選で明確な方向性が示されるか、経済情勢がより急速に悪化するまで、レンジ相場が続くでしょう。
欧州のイールドカーブも同様の軌道をたどり、長期利回りは高止まりすると予想されます。特に、ドイツ10年債は2.5%前後の新たな取引レンジを見つけるために上昇する可能性があります。イタリア国債とドイツ国債のスプレッドは、ECBがバランスシートを正常化するにつれて若干拡大する可能性がありますが、イタリア国債はより高い利回りを求める投資家を引きつけるため、今年最後の四半期を通じて200bpsを大きく下回る水準で推移すると予想しています。
2024年第4四半期に向けて、債券投資家は2022年、2023年と同様、インフレと金融政策の潜在的サプライズに対するバッファーを構築することに集中すべきです。市場は積極的な利下げサイクルを予想していますが、中央銀行はこうした予想から外れる可能性があります。イールドカーブの短中期セグメントでポジションを取れば、投資家は金利低下の恩恵を受けながら、長期のボラティリティへのエクスポージャーを減らすことができます。
特に不安定な環境では、信用選択が重要になります。特にジャンク債分野では、当面のキャッシュフローを必要とせず、債務の満期をうまく延長している企業は、景気減速に直面しても耐性を持ちながら魅力的な利回りを提供できる立場にあります。投資適格債にもチャンスはありますが、これらの債券は一般にデュレーションが長く、ベンチマークに対するイールドプレミアムはわずかです。
現在の環境は、新興国債券、特に実質金利が高く、インフレを警戒するインセンティブが強い国々にとって特に好ましい状況です。こうした状況により、新興市場国政府は金利を引き下げる柔軟性を確保でき、債券評価額が高まる可能性があります。しかし、慎重なアプローチを採用し、積極的な利下げを避けることで、これらの国々はドルやユーロに対する通貨の安定性を維持し、通貨下落のリスクを軽減することができます。
ラテンアメリカでは、中央銀行がすでに大幅な金利引き下げを実施しており、一部の投資機会が制限されています。しかし、メキシコは際立っており、インフレ率が5%近いにもかかわらず、第3四半期末時点で、金利は10%を超える高止まりとなっています。このため、メキシコ中央銀行にはインフレに対するバッファーを維持しつつ、慎重に金利を引き下げる余地があります。
アジアの見通しは、より明るいものです。各国の中央銀行はより慎重な姿勢をとっており、インドネシアなどの国は最近4月に利上げを行い、それ以降は金利を据え置いています。インドネシアとマレーシアはいずれも魅力的なケースです。ヘッドライン・インフレ率とコア・インフレ率が2%前後まで低下している一方で、金利が高止まりしているため、将来的な利下げ余地があります。