米国の利下げサイクルが始まった

米国の利下げサイクルが始まった

四半期見通し 4 minutes to read
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

脆弱性の兆候がわずかにあるが、パニックはない

7月から8月初旬にかけて、日銀の金融政策転換により円キャリー・トレードが終焉を迎え、株式、特にテクノロジー株が下落したことは、市場の脆弱性を示す小さな兆候でした。米国の労働市場やインフレに関するマクロ指標が低調だったことも相まって、市場はFRBの政策軌道に対するスタンスを変え始め、2025年夏までの積極的な利下げサイクルを織り込みました。ボラティリティはしばらく急上昇しましたが、その後再び通常のレベルまで落ち着きました。おそらく、より大きなローテーションが動き出した場合に何が起こるかを示す兆候だったのかもしれません。

3四半期の金融市場は小規模な波乱に見舞われましたが、主要資産クラス間の乖離の度合いを示す当社の乱気流指数は依然として低水準にあります。この程度の市場の落ち着きが持続すれば、リスク資産の見通しは明るくなることを示唆しています。

2025年に景気後退は起こるか否か

4四半期の金融市場は、FRBの利下げサイクルや米大統領選などの重要イベントに注目するでしょう。両イベントとも重要ですが、中期的に株式市場にとって本当に重要なのは、2025年に経済が景気後退に陥るのかどうかという点です。以下に挙げる要因に基づけば、来年にかけて景気後退が始まる確率はまだ低いものの、無視できないレベルであり、我々はその可能性を25%と見ています。しかし、金利上昇による遅行的な影響は依然として景気後退の方程式における大きな未知の変数であるため、25%という確率は通常より高い可能性を反映しています。

  • 米国のリアルタイム指標は、実質GDP成長率2%前後のトレンド成長を示唆
  • 経済活動に比べて金融環境は引き続き緩和
  • テクノロジーおよび医療の設備投資ブームは継続
  • 株式は史上最高値、高利回り債の資金調達ストレスは最小
  • 高頻度指標である米国の求人倍率は5月以降安定
  • 米国の名目GDPは最新データで前年比5.9%
  • 欧州のリアルタイム指標は引き続き低迷を示唆
  • 賃金の伸びは米欧ともに高水準を維持

経済に弱さが散見されるものの、全体的な評価としては、経済は減速しているものの、まだ景気後退には陥っておらず、投資ポートフォリオをディフェンシブ・セクターに大幅にシフトするのは時期尚早と考えます

4四半期は利下げサイクルと米国選挙がマクロ経済を支配 

4四半期は、米国の利下げサイクルのペース、および115日の米大統領選挙をめぐる議論に支配されるでしょう。2000年と2007年の2回の利下げサイクルにより、今回の利下げサイクルも景気後退の始まりとなるだろうという見方が投資家の間で強まりました。直近の歴史だけでなく、多くのことを参考にすることが重要です。たしかに、今後12カ月間のFF金利の現在の水準は、景気後退に対応した過去の利下げサイクルと概ね一致していますが、インフレ率を調整すれば、現在の設定は、インフレ圧力の低下を反映して単に水準を引き下げたものに近いと言えます。次に、過去の利下げサイクルは、1973年、2000年、2007年の利下げサイクルを除けば、ほとんどが株式市場にプラスの影響を与えてきました。利下げは投資家にとって重要なシグナルですが、FRBが政策金利を引き下げるなか、投資家は前向きな姿勢を維持し、ポートフォリオに適切な要素が含まれているかどうかを再考すべきだと我々は考えます。

今年の米国選挙はおそらく現代で最も重要な選挙となるでしょう。米国の政治的分裂がピークに達するなか、選挙結果は経済と金融市場の両方に影響を与えるでしょう。より可能性の高いシナリオとしては、ハリス氏が勝利して膠着状態になる、つまりハリス氏が大統領になるが、上院の支配権を欠いた状態となる場合が、おそらく経済活動にとって最悪です。米国議会が膠着状態となり、向こう数年間は大統領令以外の法案を可決することが困難になるため、財政刺激策がマイナスに転じる可能性が高いからです。もう一つのシナリオは、共和党が上下両院を制し、トランプ氏が圧勝するというものです。このシナリオは、ヨーロッパの防衛産業には非常に大きなプラスの影響を与えるでしょうが、トランプ氏の掲げる高関税政策により、テクノロジーや新興市場にはマイナスの影響を与える可能性が高いでしょう。

トランプ氏が大統領選に勝利し、共和党が上院を制するが下院は制せないという、トランプ政権下での膠着シナリオも考えられます。このシナリオでは、膠着状態と財政刺激策の減少だけでなく、新たな高関税も発生することになります。


投資配分

投資家の投資配分は、個人のリスク選好やリターン目標によってそれぞれ異なります。人間のバイアスを排除するためには、統計に基づいて資産配分の全体像を把握するのが常に重要です。現在の体制は第3四半期と似ており、混乱指数は落ち着いており、インフレ率は依然としてFRBの目標である2%を上回っています。2007年以降の類似する体制に基づき、主要な資産クラス全体の年率リターンを計算することができます。これにより、投資家は、同様の期間におけるさまざまな資産クラスのパフォーマンスを予測できます。


口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。