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Chief Investment Strategist
サマリー: アディタスは、パンデミック初期から最大の競合相手であるナイキを大きくアンダーパフォームし、長らく苦境に立たされてきました。各国のロックダウンにはじまり、その後は生産拠点を巻き込んだサプライチェーンの混乱や新疆綿の使用を巡る中国での不買運動、そして更に追い打ちをかけるように、昨年10月には反ユダヤ的発言をしたYe氏(前カニエ・ウェスト)との長年にわたるパートナーシップを解消するなど、立て続けに困難に見舞われてきました。アディタスは、Yeezy シリーズがその営業利益の大きな部分を占めるビジネスモデルを築いたことによって、事業リスクを大きく拡大することになったのです。本稿では、アディタスの現状を精査し、同社は単にYeezyだけでなく、より深刻な問題を抱えているという点を指摘したいと思います。
2023年通期の絶望的なガイダンスを受けて、株価は12%下落
アディタスは昨日、欧州の株式市場の引け後に2023年通期の営業利益は7億ユーロとなるに通しであると発表し、その主な理由として調査が完了するまでYeezyシリーズの既存在庫の販売を見送るとしました。アディタスは昨年10月22日に、反ユダヤ主義的な発言を繰り返したYe氏とのパートナーシップを解消しました。これは同社の業績に甚大な影響を及ぼしており、今年の売上高は12億ユーロ下振れし、減収率は1桁台後半となる見通しです。
アディタスがYeezy製品の在庫を再利用する代わりにアディタスのブランド名で販売したとすると、在庫分はすべて一括償却されるため営業利益は更に5億ユーロ減少することになります。また、同社は2024年に再び成長軌道に乗せるため、主に事業戦略の見直しに一時費用として2億ユーロを計上する予定であるとしています。
問題はYeezyにあるように見えますが、それはアディタスが抱える問題の一部にすぎません。Yeezy製品の営業利益への影響を除いた場合、同社の営業利益はかろうじて黒字を維持する程度にとどまるでしょう。これは、過年度とは極めて対照的です。問題のひとつは同社の経営陣が特定のパートナシップが営業利益の大方を占めるビジネスモデルを容認してきた結果、事業リスクが拡大したことですが、もうひとつの問題は売上高220億ユーロのうちYeezy分を調整すると殆ど利益が出ないという事実です。私たちはビジネスのもっと深いところに歪が生じているのではないかと考えています。
アディタスの売上高の規模は、ナイキのわずか45%にすぎません。また、長年にわたって事業戦略の見直しを怠ってきたことや山積する課題を前に、同社は対応を急がなくてはなりません。この後れを速やかに取り戻すことが出来なければ、リスクを抱えたまま置き去りにされ、決してナイキに追いつくことは出来なくなるでしょう。