NvidiaのガイダンスはAIブームの継続を裏付け

NvidiaのガイダンスはAIブームの継続を裏付け

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  昨夜、第1四半期決算を発表したNvidiaの第2四半期(5-7月期)の売上高見通しは110億ドルと、予想の72億ドルを大幅に上回りました。これを受けて、同社の株価は時間外取引で27%上昇しています。第2四半期のガイダンスは、最も強気な予想さえも上回るサプライズとなり、ChatGPTやBardをはじめとするチャットボットの商業的成功でAI競争が加速する中、AI半導体の需要が驚異的なペースで拡大している現状を浮き彫りにするものとなりました。Nvidiaの成長性に対する極めて強い市場の期待感は、そのバリュエーションに明確に反映されており、収益性で比較するとS&P500種株価指数の構成銘柄で首位に立っています。


※本レポートは自動翻訳を一部修正したものです。原文と和訳に齟齬がある場合は原文が優先されます。

主なポイント:

  • 予想を大幅に上回る売上高見通しを発表したNvidiaの株価は時間外取引で27%上昇しており、AI関連銘柄のブームを引き起こすきっかけとなっている。

  • 売上高見通しに基づくバリュエーションで判断すると、NvidiaはS&P500種株価指数の構成銘柄で首位に位置付けられる。しかし、同社の売上目標が未達に終わった場合、これは投資家にとって最大のリスクとなる。また、過去の例は企業がこうした見通しを達成することが困難なことを示している。

  • Nvidia社には大きなビジネスチャンスが待ち受ける一方、同社の事業は主に以下3つのリスクを伴っている;1)米中間の緊張による半導体サプライチェーンの混乱、2)半導体製造に不可欠な化学物質PFASの段階的廃止、3)発電や送電網の障害。

AI開発向けGPUに押し寄せる需要の波

Nvidiaのように時価総額が1兆ドルに迫る企業が決算を発表し、業績への期待感から昨夜ほど市場が大きく反応したケースは、これまで見たことがないと断言できます。Nvidiaは今年2月下旬に行った投資家向けのコンファレンスで、2024年度第1四半期(2-4月期)の売上高は65億ドルに上る見通しであると発表しました。しかし、同社が昨晩発表した決算で売上高の実績は72億ドルに達し、ChatGPTやそれに続くGoogleのBardを巡る熱狂によってAI半導体の需要に予想外の変化が急速なペースで生じていることが浮き彫りになりました。

わずか2ヶ月の間で売上高が10%以上も予想を上振れたこともありますが、Nvidiaの第2四半期の売上高見通しは予想の72億ドルに対して110億プラスマイナス2%(下図:水色線)と、極めて強気なガイダンスを示しました。これによってNvidiaの売上高は7月末までに過去最高水準を更新することになります。アナリストは明らかに本源的な需要を把握しておらず、収益実現のドライバーとなる要因に基づいて同社の収益を的確に予想できるモデルを誰も持ち合わせていないことが分かります。また、Nvidiaの株価はすでに高い期待感を織り込んできましたが(109%上昇)、時間外取引で27%上昇しており、同社の決算は投資家にとっても大きなサプライズとなりました。
Nvidia share price | Source: Saxo

Nvidiaは10年に一度しか出現しない突出した企業となるか?

Nvidiaのジェンスン最高経営責任者(CEO)は「AI半導体の本源的な需要はまだ初期の段階にあり、ここから10年サイクルが始まる」と述べました。こうした発言は決して偽りではありませんが、AIバブルが生じている可能性があり、NvidiaなどのAI関連銘柄がその一部であることを十分に理解していないことを示しています。また、このようなコメントによって多くの個人投資家がすでに過熱気味のAI関連銘柄に吸い寄せられ、一層バブルを醸成することになります。この問題が10年後にどうなっているのかは、誰にもわかりません。AI半導体のアウトプットには極端なばらつきがあり、そのためNvidiaの適正株価を導くことはほとんど不可能です。また、ミスプライスが生じる可能性が高く、バブルにつながりかねません。

Nvidiaの企業価値は、すでに12ヶ月先の売上高見通しの上方修正を織り込む水準に上昇しており、決算発表後のバリュエーションに変化はありません。12ヶ月先のEV/売上高倍率は、10年前の1.1倍から22.3倍となり、同社の力強い成長性や営業利益率の改善を反映しています。しかし、それよりも重要なことは、投資家が事実や予想に基づいてAI技術が無限の可能性を秘めているかのような期待を将来に織り込んでいることです。現在、NvidiaはS&P500種株価指数の構成銘柄の中で12ヶ月先のEV/売上高倍率が最も高い銘柄となっています。

12ヶ月先のEV/売上高倍率は、バックテストで最も有益な定量的要因のひとつであり、Qレシオが非常に高いという特性を持ちます。これは、最上位と最下位の十分位数に入る銘柄群のリターンの格差が大きいことを意味します。つまり、EV/売上高倍率が最も高い銘柄は、EV/売上高倍率が最も低い銘柄を大きくアンダーパフォームする傾向にあります。当然ながらこのような現象はあくまでも統計に基づくものであり、常に「外れ値」が生じます。例えばAmazonも20年近くその「外れ値」の一つでした。そのためNvidiaも統計上の傾向に逆らった外れ値となる可能性もあるでしょう。しかしAmazonとNvidiaの重要な違いは、Amazonは小規模なベンチャー企業としてスタートを切った後、大きな成長を遂げたという点です。一方、Nvidiaは時価総額が1兆ドルに迫る企業としてスタートしています。

AIがもたらす投資機会およびリスク

Nvidiaは今年2月の投資家向けプレゼンテーションで、同社の事業機会は売上高にして約1兆ドルに上るとの見通しを示しています。この数字が、半導体関連の市場全体の売上高を示しているのか、またはNvidiaの将来的な市場シェアに基づくものなのかは、明らかではありません。しかし、同社のスライドは、Nvidiaが予想する市場規模を把握し、今後の見通しを立てる上で有益です。参考までに、今年、世界経済の規模は米ドルに換算(現在の為替レート)して約106兆ドルに達すると予想されています。

しかし、AIがもたらす投資機会はリスクを伴うものであり、アナリストにはそれらのリスクを指摘する義務があります。先日発行した「半導体セクターを待ち受ける事業機会とリスク」では、主に2つの重要なリスクについて指摘しましたが、ここではもう1つのリスクを追加したいと思います。以下は、NvidiaとAI・半導体のテーマ全体における3つの重・要なリスクとなります;

  1. 米中間の緊張の高まりによって米国の対中半導体輸出規制が一段とエスカレートし、半導体のグローバルサプライチェーンに深刻なダメージを与える可能性がある。NvidiaのジェンスンCEOも昨日の決算発表前に行ったフィナンシャルタイムズのインタビューでこうしたリスクを指摘している。

  2. PFAS化学物質は、半導体をはじめとする幅広い民生用アプリケーションの製造に必要不可欠である一方、人間の間で癌や他の深刻な病気を引き起こすことが判明しており、3Mは2025年末までにPFASの生産を終了し、EUは13年間の移行期間を設けた規制措置を発表した。PFASの安価で確実な代替品が存在しないため、半導体の生産コストは今後さらに上昇する可能性がある。

  3. 電気自動車、ガスボイラーに代わるヒートポンプ式暖房、データセンター等が需要を牽引し、電力消費量は今後急速に増加する見通しである。こうした中でAIが爆発的に普及すれば、電力需要はさらに拡大し、電力生産と送電網の整備・拡張が追いつかなくなる可能性があり、半導体・AIセクターの事業に物理的な弊害が生じるリスクがある。
Slide from Nvidia investor presentation February 2023 | Source: Nvidia

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