これは米ドルの崩壊でしょうか、それともヘッドフェイク(相場の騙し)でしょうか?

これは米ドルの崩壊でしょうか、それともヘッドフェイク(相場の騙し)でしょうか?

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ジョン・ハーディ

グローバルマクロ戦略責任者

サマリー:  米ドルは所々で下落していますが、この動きには持続性があるのでしょうか、それとも結局のところ、トレンドフォロアー(相場のトレンドにのった順張り投資家)にとって最新の(本題から目をそらさせるための)偽情報となるのでしょうか?米ドル/日本円(USDJPY)の弱気筋は、少なくとも米国債利回りの反転から新たなサポートを得ています。


金曜日のまとめ:米国の小売売上高の低迷により、米ドル(USD)は再び弱含み
先週水曜日の米国1月のコアCPIの発表を受けて米国10年債利回りが4.60%を超えたことから、週の初めに152.00を下回って取引されていた米ドル/円(USDJPY)が154.80まで押し上げられ、米ドル/円(USDJPY)の弱気筋を動揺させたことからわかるように、先週の米国長期債利回りの大幅な反転上昇は、円(JPY)トレーダー、特に米ドル/円(USDJPY)のトレーダーに混乱を招きました。しかし、木曜日には両方の動きが反転し、金曜日の米国の1月小売売上高の低迷を受けて、米国長期債利回り急上昇の反転がさらにしっかりとした動きとなり、一晩で米ドル/円(USDJPY)は151.48まで下落しました。一方、米ドル(USD)は欧州通貨に対して、また、例えば豪ドル(AUD)に対しても、週を通して安値で取引されていたことから、他の地域では比較的変動は少なくなっていました。

来週:RBA、RBNZ、英国、日本の消費者物価指数
この記事を書いている今夜(18日)は豪中銀(RBA:オーストラリア準備銀行)の会合があり、RBAが今回の景気循環周期で初めて政策金利を引き下げると広く予想されています。RBAとノルウェー中銀(Norges Bank)は、日銀以外の中央銀行の中で、政策金利を据え置いている最後の2行です。今後の予想では、利下げの軌道は浅くゆっくりとしたものになるとみられ、おそらく5月に一度、さらに年末までにもう一度利下げする予定です。RBAは、インフレ率の低下と貿易加重平均の豪ドルが複数年にわたる安値の窮地から逃れたことで、利下げに対して勇気づけられる可能性が高いでしょう。

NZ中銀(RBNZ: ニュージーランド準備銀行)は、オーストラリアよりも多く利上げを行い、現在はより急速に利下げを行っており、ニュージーランドの失業率の上昇と低インフレ率により、さらなる緩和の余地が残されているため、水曜日にはさらに50ベーシスポイントの緩和を実施し、政策金利(オフィシャルキャッシュレート)を3.75%にすると予想されています。

インフレは依然としてチャート上で1日分の驚異的な数字を生み出す可能性があり、その点では、水曜日に英国の1月の消費者物価指数が発表され、金曜日には日本の1月の消費者物価指数が発表されます。

今週は米国のカレンダーが静かで、私はこれまで、トランプ政権の政策と、FRBが独立性を失い、Rabobankのマイケル・エブリイ(Michael Every)氏が米国のグランドマクロ戦略と呼ぶものに包摂される長期的なリスクに注目が集まる今週ほど、FOMCの議事録に関心が薄れたことはありません

米ドルの弱さ - これはブレイクダウン(崩壊)の始まりか?
米ドルは、最も明確には豪ドル/米ドル(AUDUSD)と英ポンド/米ドル(GBPUSD)で局所的に下落がみられ、ユーロ/米ドル(EURUSD)では下落はみられていませんが、たとえ場所によって下落したとしても、ここで米ドルが全面的に(すべての他通貨に対して)ブレイクダウン(崩壊)していると言うのは時期尚早です。また、前回の米ドル高の動きは非常に大きかったため、正式な米ドルの弱気トレンドが確立されるまでには、まだかなりの重労働(困難な局面を乗り越える力)が必要とされるでしょう。米ドル/円(USDJPY)に関しては、先週の(円安の)動きの後、賢明な反転(円高の動き)がみられ、今のところ私は、日本の利回りの上昇と米国債の押し下げがファンダメンタルズに支えられていることから、米ドルに対してはネガティブな見方を安心して表明できます。以下の米ドル/円(USDJPY)チャートまたは論考の内容をご覧ください。

他の通貨に関しては、前回のアップデートで概説したように、ウクライナ戦争後の状況がどのような形をとるにせよ、特にそれがエネルギー価格の低下と組み合わされた場合に、信頼できる防衛力の構築のために資金を供給する必要がでてくると考えられ、大規模な財政拡大が期待されることから、ユーロの長期的な可能性については建設的です。しかし、41日に発表される米国の貿易関係に関する報告書やEUの付加価値税等を相殺するための関税のリスクなどを通じて、短期的なハードルや不確実性がユーロに重くのしかかる可能性がある他、地政学的な懸念やウクライナ戦争の終結の時期や詳細に関する不確実性も懸念されています。テクニカル面では、ユーロ/円(EURUSD)は1.0500-1.0600の領域を上抜けることから始まり、非常に困難な局面を乗り越えなければなりませんが、それでも大局的にみるとまだ完全なトレンド反転を示すものではないでしょう。

チャート:米ドル/円(USDJPY)
米ドル/円(USDJPY)の上昇と反転は、先週の米国債利回りの長期利回りの推移を模倣したものとなりました。米10年物国債利回りの指標はあっという間に4.50%を上回り、4.66%近くまで上昇した後、同様のスピードで急速に後退し、重要な4.50%の水準を下回って週を終えました。一方、日本国債の利回りは今周期で最高値を更新し続けており、キャリートレードのイールドスプレッドの縮小が進んでいます。この傾向は、トランプ政権が財政赤字に対して最初に反芻していたものとは全く異なるアプローチをとると感じられていることから、今後も続く可能性が高いでしょう。ここからは、151.10台前半の局地的な安値に注目しています。理論的には、そこに到達するためには、米国債の長期利回りが局地的な安値を更新する必要がありますが、前回、日米10年債利回りスプレッドが現在の水準にあったとき、米ドル/円(USDJPY)は150をわずかに下回る水準で取引されていたため、148.65付近に注目が集まる可能性があり、米国10年債利回りが4.25%まで低下(例えば、米国の経済指標が軟調になり、米国の財政政策についてのこれまでの軌道が雪だるま式に再評価される状況が考えられます)すれば、140.00に注目が集まる可能性があります。

出所: サクソバンクグループ

主要10通貨と人民元(CNH)のトレンドの展開とその強さを示す新しい表
注:これはFXボードのトレンド・インジケータの新しいバージョンであり、古いものと非常によく似ていますが、近日中に紹介するトレンドシグナリングモデルの入力に一致するように古いバージョンとはわずかに異なる計算パラメータが使われています。また、各通貨の平均ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ:真の変動幅)の測定値とそのヒートマップを上部の表の下に配置しました。

FXボードのトレンド測定値は相対的な尺度を示しており、ボラティリティが調整されています。各通貨について、絶対値2未満の測定値は比較的弱いトレンドであることを示していますが、3を超える測定値はトレンドが非常に強く、6を超える測定値はトレンドが非常に強いことを示しています。

この記事を書いている今週初めの時点では、スウェーデンクローネ(SEK)の強さは主要10通貨のFXトレンドとしては外れ値となっており、米ドル(USD)の弱さはまだそこまで顕著ではありません。

出所:ブルームバーグ、サクソバンクグループ

表:個々の通貨ペアの新しいFXボード・トレンドスコアボード
:前表の集計された通貨毎のトレンド測定値と同様に、個々の通貨ペアのトレンド測定値は、旧バージョンのトレンドスコアボードの計算方法と非常によく似ているものの、新しい計算方法に基づいています。繰り返しになりますが、これらの変更は、FXボードのトレンドを近日公開予定の新しいトレンドシグナリングモデルと同期させるために行われました。最も取引されている主要な通貨ペアは上の方の表にあります。

オーバーでユーロ/米ドル(EURUSD)と米ドル/中国元(USDCNH)に加わり、弱気に転じました。注:米ドル/スイスフラン(USDCHF)は、現在の水準のトレンドが(現在の最後まで維持された場合、弱気に反転する最後の通貨ペアになるでしょう。

出所:ブルームバーグ、サクソバンクグループ

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