中国への投資:経済的困難の中で第1四半期を乗り切る

中国への投資:経済的困難の中で第1四半期を乗り切る

レドモンド・ウォン

マーケット・ストラテジスト(Saxo Group)

サマリー:  2023年第4四半期に開催された中国の政治会議では、景気対策を優先させなければという切迫感が欠けていました。戦略の方向性は2024年第1四半期の3中全会しだいです。テクノロジー、先進的な製造業、エネルギー、グリーン・メタルは、課題や不確実性を伴うものの中期的成長に向けた豊かな基盤を提供することができます。


第1四半期を読み解く:最近の政治会議からの知見

中央金融工作会議(CFWC)、政治局会議、中央経済工作会議(CEWC)が2023年第4四半期に開催され、中国の今後の政策見通しを垣間見ることができました。

特に、CFWCの公式声明はデレバレッジ(債務削減)の議論を避け、不動産セクター内のリスクに対処しています。もっとも、中国共産党中央委員会発行の雑誌「求是」の記事は柔軟性を欠き、習主席が同会議で金融システムの改革にあたってマルクス主義的政治経済理論を堅持するよう指示したことを強調しています。興味深いことに、この記事は「リスク」という言葉を23回も使用しながら、不動産セクターのリスクや地方政府の債務問題を解決することにまったく言及していません。包括的なテーマとして強調されたのは、金融システムに対する党の支配でした。

その後のCEWCで、習主席は「安定を確保しつつ進歩を追求すること」と「質の高い発展」を優先するとしました。これらの言葉は実質的に経済成長を軽視することを意味します。2024年の優先課題とされた9項目の中では、「技術革新による新産業・新ビジネスモデルの開発」が最も優先されています。これらの優先事項には景気対策の切迫感が欠けています。CEWCは、直前の政治局会議の声明と同様に、短期的な成長刺激策は横に置いて、安定的金融政策を伴う財政政策・産業政策の強化を示唆しました。

中国の成長低下を回避するには、生産性の向上や企業の景況感の回復などが不可欠です。また、不動産部門の債務を再編し、プロジェクトを引き継ぐ必要があります。2024年第1四半期は今後の行方を占う非常に重要な期間となります。3中全会後には、中国の経済政策と戦略的方向性をより明確に理解できるようになると考えられます。今のところ、マクロ経済の見通しは一定程度の不確実性を伴っています。

予測より準備を

今は、謙虚で用心深く、市場環境の変化に応じて柔軟であるときです。私たちは、ジョン・バカンの古典小説のようにカーテンの架空の隙間から未来を見ることはできません。だからといって、マクロ的環境を無視してよいとか、その時点の市場の風向きに流されてよいということではありません。オークツリー・キャピタル・マネジメントの創設者であるハワード・マークス氏は次のように強調しています。「予測することはできないが準備することはできる。景気、クレジット、センチメントのサイクルを認識することは投資に役立つ」。

豊かな大地に種をまく

  1. テクノロジーと先進的な製造業: 3中全会で劇的な変化がない限り、生産性向上と技術の自立は中国の長期開発戦略の構造的な2大テーマであり続けます。景気変動があっても、これらのテーマがしぼむ可能性は少ないとみられます。具体的な製品を生産する「テクノロジーと先進的な製造業」の企業は、有利な産業政策の恩恵にあずかる傾向にあります。例えば、Xiaomi、Zhejiang Sanhua Intelligent Controls、Luxshare Precision、Shenzhen Inovanceおよび上記の業界に特化したETFなどが挙げられます。

  2. エネルギーとグリーン・メタル: エネルギー安全保障やグリーン・トランスフォーメーション、食料安全保障は、政策支援を受け続けるとみられる持続的テーマです。CNOOC、PetroChina、Zijin Mining、Ganfeng Lithiumなどの企業がこれらのテーマに適しています。

  3. インターネットと一般消費財・サービス: 上記のカテゴリー1と2は、長期的トレンドに加わり産業政策の追い風に乗るための種を徐々にまいていく上での基盤となりますが、他方、取引機会はインターネット株や一般消費財・サービス株で生じる可能性があります。この選択肢は、中国経済の景気回復の勢いを注視しているより機敏なトレーダーに向いています。あるいは、これらの銘柄は、3中全会と両会(全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議の年次総会の総称)の開催を見込んで第1四半期中に結果を予想し、それに基づいて売買するために活用できます。

注:企業への言及は説明とインスピレーションのみを目的としており、投資の助言を目的とするものではありません。

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