近年、投資家の間で米国の
小型株への注目が高まっています。小型株は、大型株や中型株に比べてリスクは高いものの、大きなリターンが得られる可能性を秘めています。
本記事では小型株の特徴や投資のメリットとリスク、具体例を紹介した上で、その投資方法について解説します。
小型株とは?
まずは小型株の特徴と、中型株、大型株との違いについて見ていきましょう。
小型株の特徴
小型株とは、日本でもアメリカでも「時価総額が比較的小さい企業の株式」を指します。時価総額とは「株価 × 発行済株式数」で算出される、企業の市場価値を表す指標です。例えば日本トップクラスの三菱UFJフィナンシャル・グループの時価総額は23兆円、トヨタ自動車は46兆円を超えます(2025年1月27日時点)。
また、流動性も小型株を特徴づける重要な要素です。流動性とは株式の取引のしやすさを指し、売買が容易な銘柄は「流動性が高い」と言われます。小型株は、時価総額が小さいだけでなく流動性が低い傾向にあります。
米国小型株の特徴と中・大型株との違い
では、アメリカにおいて「時価総額が比較的小さい企業」とはどのぐらいの規模を指すのかというと、一般的に約2億5000万ドルから20億ドルの間となります。
小型株、中型株、大型株を比較すると、以下の通りです。
- 小型株:時価総額が約2億5000万ドルから20億ドルの間
- 中型株:時価総額が約20億ドルから100億ドルの間
- 大型株:時価総額が約100億ドル以上
米国小型株に投資するメリット
割安な投資機会
小型株は機関投資家の参入やアナリストの調査範囲も限られているため、市場で適正に評価されていないことが多々あります。そのため、徹底したリサーチを行うことで、市場がその潜在的な価値を認識する前の「掘り出し物」を見つけることができます。
成長性
小型株は成長中の企業を含むため、拡大の余地が大きいのが特徴です。これにより、企業が成長するにつれて将来的な利益を享受できる可能性が高まります。特に、大型株はすでに成熟しているのに対し、小型株は順調な成長軌道に乗ることで株価が2倍や3倍になる可能性も秘めています。
最先端分野への早期投資
小型株は新興産業やニッチな市場で活躍する企業が多く、最新技術や市場のトレンドに迅速に対応できる柔軟性を持っています。再生可能エネルギーや
フィンテック※といった最先端分野に早期から投資するチャンスを提供してくれるのが、小型株の大きな魅力です。
※
フィンテックとは:「金融(Finance)」と「技術(Technology)」を組み合わせた言葉で、金融サービスにテクノロジーを活用した新しいサービスやビジネスを指す。例としてはスマホでの送金や決済、AIを活用した融資、ロボアドバイザーによる資産運用、暗号資産取引など。
分散効果
投資のポートフォリオに小型株を組み入れることで、分散効果が高まります。小型株は大型株とは異なる分野で事業を展開している場合が多く、伝統的なポートフォリオでは不足しがちな産業をカバーすることが可能です。また、小型株のパフォーマンスは大型株と相関性が低いため、全体的なリスクの軽減にも役立ちます。
米国小型株に投資するリスク
価格変動性の高さ
小型株は、価格の上下が激しくなる傾向があります。そのため安定性を重視する投資家にとってはリスクが高く、不況時は特に不安定になります。
流動性の低さ
小型株は取引量が少なく、売買が困難な場合があります。この流動性の低さは、市場が不安定な時期に株価のさらなる変動を引き起こす可能性があり、迅速な取引が難しくなることがあります。
限られた資本調達能力
小規模な企業は大企業に比べて資金調達が難しい場合が多いため、特に経済状況が悪化した際、事業運営や拡大に必要な資本を確保できないリスクがあります。
失敗のリスク
小規模な企業は成長初期段階のため、大企業に比べ事業失敗のリスクは大きいといえます。実績不足や資本の限界から破産や業績不振に陥る可能性があるため、小型株は投資資金を失うリスクも伴います。
米国小型株の例
ここでは、特に注目の米国小型株10個を挙げます。AIなどの最新技術を活用している企業や、専門性や独自性を武器にしている企業、そして市場の変化に柔軟に対応している企業が見られます。
サーブ・ロボティクス
サーブ・ロボティクス(Serve Robotics)は自動運転配達ロボットの製造を手がけており、2023年に株式市場へ参入した新興企業です。同社のロボットはUber Eatsやセブンイレブンなどのパートナーと連携し、すでに何万件もの配達実績があります。
セーバー
Sabre(セーバー)は旅行業界向けの技術ソリューションを提供する企業で、航空会社やホテル向けのシステムを運営しています。最近ではサウジアラビアの航空会社であるSaudiaや中国の航空会社である海南航空との提携を発表し、グローバルな流通能力を強化しています。2025年に年間72%の成長を予測しており、投資家にとって注目の企業です。
ペブルブルック・ホテル・トラスト
ペブルブルック・ホテル・トラスト(Pebblebrook Hotel Trust)は高級ホテルやリゾート施設を所有する不動産投資信託(REIT)です。REIT株式アナリストのケビン・ブラウン氏は、同社の独立系ホテルやブティックホテルの独自性が競争優位性を保っていると評価しています。
ハロザイム・セラピューティクス
ハロザイム・セラピューティクス(Halozyme Therapeutics)は、ドラッグデリバリー技術を手掛けるバイオテクノロジー企業です。現在、主力製品である「ENHANZE」がロシュ・ダイアグノスティックスのがん治療薬「Tecentriq SC」やジョンソン&ジョンソンの「Darzalex FASPRO」、ロシュの「Herceptin Hylecta」を含む7つの医薬品に採用されています。今後、同技術を活用する薬剤の増加が期待され、売上の拡大が見込まれます。
ファストリー
ファストリー(Fastly Inc.)はクラウドインフラを提供する企業です。株式アナリストのマシュー・ドルジン氏は、同社の収益と利益率の改善が注目に値すると述べており、長期的な成長が期待されています。
ヘイン・セレスティアル・グループ
ヘイン・セレスティアル・グループ(Hain Celestial Group Inc. )はオーガニックやナチュラル製品の製造・販売を行っている企業です。株式アナリストのエリン・ラッシュ氏は、同社が最近行ったポートフォリオの簡素化や利益率の拡大が成功の鍵であると述べています。
バーテックス A
バーテックス A(VERX A)は税務コンプライアンス分野で40年以上の実績を持つ企業です。同社のソリューションは、売上税、付加価値税、通信サービス税など幅広い税務分野をカバーしており、小売や電気通信、出版など多様な業界に提供されています。特に、「フォーチュン500」企業の約60%が同社の顧客であり、グローバルで195ヵ国に対応しています。また、2024年1月にはIDCから顧客満足賞を受賞し、税務コンプライアンス分野でのリーダーとしての地位を確立しています。
イノデータ
イノデータ(Innodata)は1988年に設立されましたが、従来のITサービスからデータマイニング※や人工知能に事業をシフトし、大きな成長を遂げています。AI分野での継続的な拡大が期待される企業です。
※データマイニングとは:膨大なデータを統計学やAIなどの手法を活用して解析し、有益な知見やパターンを導き出す技術のこと。
マーキュリー・フィンテック・ホールディングス
マーキュリー・フィンテック・ホールディングス(Mercurity Fintech Holdings)は、暗号資産業界向けのビジネスコンサルティングやコンピューティングサービスを提供しています。同社は暗号資産分野のインフラ企業として、初期段階の成長を遂げている段階です。今後の成長可能性が投資家に注目されています。
ナチュラル・グローサーズ・バイ・ビタミン・コテージ
ナチュラル・グローサーズ(Natural Grocers by Vitamin Cottage Inc.)は、健康食品と栄養補助食品を取り扱う企業です。全米で170店舗以上を展開し、現在も新たな市場に進出中です。既存店の売上高も好調で、健康志向とコスト意識の高まりを背景として、今後も注目される企業の一つです。
米国の小型株に投資する方法
小型株に投資する方法は主に2つあります。一つは、高い潜在価値を持つ個別の株式を選んで投資する方法、もう一つは上場投資信託(ETF)を通じて業界全体に投資する方法です。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
個別株を購入する方法
まず一つ目として個別の株に直接投資する方法がありますが、単一の銘柄に投資することは高いリスクを伴います。小型株はアナリストによる調査範囲が限られており、企業情報が得にくい場合があります。そのため投資にあたっては投資家自身で独自に調査を行わなければならず、企業の価値や成長可能性を誤って判断するリスクが高くなります。
さらに、小型株は企業規模が小さく資金力も限られているため、値動きが激しくリスクが高くなりやすいといえます。
これらのリスクを考慮すると、個別の小型株への投資は、より経験豊富な投資家に向いているでしょう。
小型株に重点を置いた米国の ETFを購入する方法
上記では個別の小型株に直接投資する方法について触れましたが、初心者にとってより適した方法は、ETF(上場投資信託)を利用することです。
ETFとは投資信託の一種であり、上場している金融商品を指します。専門のファンドマネージャーがその運用を行うため、初心者でも比較的安心して投資を行うことができます。
ETFを利用すると複数の小型株や業界に分散投資でき、価格変動が大きいとされる小型株のリスクを抑えつつ、これらの株が持つ高いリターンの可能性を享受できます。
まとめ
アメリカの小型株は成長性の高さが魅力ですが、一方で価格の変動が大きく、流動性が低いといったリスクも伴います。そのため、投資する際には慎重な判断が欠かせません。
特に個別の小型株に直接投資する場合は、これらのリスクを受けやすくなります。そのため初心者の方には、
ETF(上場投資信託)を活用して分散投資を行うことでリスクを軽減する方法がおすすめです。