株式:バブルの再来か?

株式:バブルの再来か?

Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  市場ダイナミクスが2021年のラリーに呼応するなか、欧州株式と電化テーマの主要トレンドと機会を探ります。


極端なインデックス投資集中で見える砂の城

前回の四半期予想では、AIと肥満治療薬のラリーが金融の流れをものともせず、金利上昇による逆風の影響を弱めていることを説明しました。結果として、当社はテクノロジー株のラリーを支持しました。4月を通して、市場が米国の政策金利の長期的な上昇を織り込んでいたため、正しい判断であるように思われました。5月には市場心理が回復し、Nvidiaの需要見通しによりAIと米国経済の勢いが続くことが市場で確信できたため、これがアニマルスピリットを引き出すこととなりました。

2024年第3四半期に入ると、最近の成長に対する単純な推測やテクノロジーの成長には限界がないという考え、暗号資産やミーム銘柄の投機、強い押し目買いパターン、極端なインデックス投資への集中(上位10銘柄がS&P500指数の35%を占める)、閑散相場の堅固なモメンタムなど、似たようなダイナミクスが現時点のラリーを支えるという、2021年そのままの動きのようになりました。さらに、米国株式市場は現在、2021年と同じ株式バリュエーションレベルに入っており、これはドットコム・バブル期よりも高くなっています。

テーマ別バスケットのうち4つは、過去1年間で50%以上(MSCI ワールド指数の2倍)上昇し、短期的なバブルの兆しを見せています。該当するテーマは、AI/半導体、防衛、原子力、肥満/腫瘍学です。

ECBの利下げ、堅調な経済、インフレのダイナミクス

2024年第3四半期は、6月のECBの利下げの実施と、9月に再利下げが行われるかどうかが注目を集めています。連邦準備理事会(FRB)が9月と11月のどちらに利下げを行うかについても、市場の見方は分かれています。これらを中央銀行がどのように判断をするにしろ、株式と収益の見通しは安定しています。

地域別では、欧州株式は6月のECB利下げと第3四半期の成長率回復を受け、他市場に比べて相対的に高値で見直されると当社は考えており、欧州をオーバーウェイトと予測しています。また、中国が株式市場での信頼を回復するために必要な市場改革を進めているという具体的な証拠を見るまでは、新興国株式に対しネガティブな見方を維持しています。

セクターレベルでは、エネルギー、医療、金融、情報技術についてポジティブです。産業、一般消費財、公益事業、不動産についてはネガティブです。

確信:電化はゲーム・チェンジャーである

10年後に今を振り返ったとき、電化が経済における重大なゲームチェンジャーであったことは明白でしょう。電化は、エネルギー市場、地政学、工業生産に変革をもたらします。この変化から最も恩恵を受けるのは、「世界最大の機械」とも呼ばれる、相互接続された大規模な電力市場を持つ欧州です。これにより、欧州の電力市場は米国の送電網よりも効率的になり、より高度な安定性と多様化が実現します。さらに、これまでのロシアのエネルギーへの依存度が下がるため、ヨーロッパの地政学的な強さが増すことになります。

AIの前は、主に電気自動車(輸送)、データセンター(デジタル化)、石油・ガスボイラーからヒートポンプ(暖房)への転換が電化を牽引していました。AIワークロード需要の爆発的な増加に伴い、AIモデルのトレーニングと実行に関連するデータセンターは、現在電力需要において主にマージナルな牽引役を担っています。1年前、米国内の公益事業会社の多くは成長見込みがほとんどないと予測していましたが、最近の予測では、データセンターからの電力消費量が今後6年半で160%増加するといわれています1。 投資家は、この電化ブームにどう投資するかという選択に迫られています。電力消費の急増に伴い、公益事業は確実に成功すると考える人が多いでしょう。当社は、この賭けはリスクが高いと考え、電力網のインフラを構築している企業に投資することを選好しています。

1AIがデータセンターの電力需要を160%増加させる見通し(ゴールドマン・サックス、2024年5月14日)

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